第213話 カルアちゃんの訪問 1日目 前編

「おっ…お邪魔します!」



 カルアちゃんが俺の家にやってきた。

 思えば家に自分から誰かを招いたのは初めてなんだよね。

 取材も家の事に関してはNGにしてたし。



「とりあえずあがって、カルアちゃん!」

「はっ…はい!」



 ミカのすすめるままに、カルアちゃんは靴を脱いでこの屋敷に上がり込んだ。

 キョロキョロとそこらへんを見回している。



「すごく…広いですね…」

「そりゃあね、この家自体がマジックルームだからね」

「お掃除とかは、やっぱりエンチャントで?」

「そうだよ」



 俺とミカはカルアちゃんに、家の中を紹介して回った。

 と言ってもこの屋敷、役割を持っている部屋よりも空き部屋の方が多いんだけどね。

 収納とか要らないし。



「このお部屋はなんですか?」



 カルアちゃんは、映像室…映画館に興味を持ったようだ。



「ここはね、映像室だよ」

「映像…室? 映像ってなんですか?」

「うーんとね、動く絵の事かな」

「そうなんですね……興味があります」

「まぁ、近い内になんか見ようか。まだ案内する場所はあるからね」

「はいっ!」



 その次に俺達が向かったのは大浴場だった。



「ここは…お風呂ですか」

「そうだよー! 夜になったら入ろうね」

「はいっ」



 そして最後に俺とミカの愛の巣…じゃなくて、スイートルーム…でもなくて、同居部屋に辿り着いた。



「ここが、ボクとミカが普段二人で過ごしている部屋だよ。今日からカルアちゃんが泊まる部屋でもある! 客間とどっちが良い?」

「こちらでお願いします。やっぱりアリムちゃんとミカちゃんと居たいですから」

 


 そっかー、ふふふ。

 カルアちゃんは俺とミカの部屋に入るなり、やはりというべきか、ローズ同様に大量の薔薇に注目した。



「わぁ! 赤い薔薇が沢山! これ、どうしたのですか?」

「えへへ、アリムが私にくれたんだよー」

「わぁっ! 本当にアリムちゃんとミカちゃんは仲が良いですね! うふふふふ」



 カルアちゃんは今、俺らのキスシーンを見た時と同じ顔をしている。

 本当、お姫様がどうしてこんな顔できるんだか…不思議な位スゴイ顔なんだよね。



「そ…それはともかく、そろそろお昼だよね! 何か食べようよ」

「そうね、カルアちゃんは何が食べたいの?」

「私は…うーんと…おまかせしますわ」



 お任せされた……。というわけで、ビーフシチューを作って食べた。

 無論、俺が作った。

 ご飯を食べ終わった後は勿論遊ぶんだよ。



「ごちそうさま! アリム、今日も美味しかったよ! ね、ところでカルアちゃん午後は何したい?」

「そうですね……あの映像室がやっぱり気になります!」

「そうか、じゃあ映像室に行こうか」



 そんなカルアちゃんの要望により、俺らは映像室へと向かった。

 さて…映像としては何を見せるべきかな?

 本当の人間がでてくるドラマとか実写映画はダメだよね。

 だとすると、アニメか…?

 でもアニメも何が良いんだろうか。やっぱり地球の感覚が残ってるやつはダメだよね……。

 うーん、難しいなぁ…。


 あんまり良い考えが思い浮かばないから、ちょっとミカに相談してみる。



【見せる映像…何が良いかな?】

【なんでも良いんじゃないの? とりあえず、魔物の動物ビデオらへんにすれば】

【あぁ、それだ!】


 

 というわけで、カルアちゃんを席に着かせてアニマルビデオをスクリーンに流した。

 と、言ってもやっぱり地球にいる動物じゃダメ。

 だから今、即興で自動で撮影・編集をしてくれるアイテムを作り出して、それでリアルタイムで魔物を撮りながらそれを映してるんだ。

 それをみて、カルアちゃんははしゃいでいる。



「すごいです! すごく細かい写実が動いてます! これが映像というものなのですね?」

「うん、そーだよ!」

「あっ! みてください、オドド鳥がオドオドしてますよ! 可愛いですね」

「そうだね、流石、魔物の中で一番、人間から人気がある魔物だね」



 やっぱり、俺の作ったアイテムはすごいね。えへへ、自画自賛だけど。

 映像に自動でそのシーンに合う音楽を作り出してくれるアイテムも作ったんだけど、これは良かった。

 黒平犬数匹が1匹のヨクナイタチを捕食するために森の中を追いかけ回るシーンだとかには緊張感を醸し出す音楽とか…偶然撮れたスライムの繁殖、もとい分裂シーンには分裂が成功した時の喜びの音楽だとかね。


 お陰でカルアちゃんは映像にだいぶ見入ってくれた。

 大体、1時間半それをみせた。



「すごいです! 本の挿絵だけじゃわからないことが沢山見れました!」

「でしょ! 確かに魔物図鑑の挿絵の写実はリアルだけど、動きはしないもんね」



 ふふ、大分満足してくれたみたいだね。

 さて…次は何で楽しませてあげようかな?

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