第210話 ステータス (叶・桜)

「この世界に来たばかりで悪いが、とりあえず、僕の馬車に乗ってくれ。話は中でする」



 2人は何やら華美に着飾った、偉そうな男に馬車に乗らされた。

 叶は、一切周囲の情報が無い現状で、この男の話を断る理由がなく、また、抵抗したとしても屈強な男達に囲まれているため無意味だと悟った。

 


「…少し待っててください」

「よかろう」



 叶は桜に耳打ちをする。

 桜は泣くのを止め、その耳打ちに集中した。



「(誰か来たみたい。ついて来いって言ってるよ)」

「(えっ…大丈夫なの?)」

「(わからない、でも、今の俺達には何も手元に情報が無いんだ。むこうは何か知ってるみたいだし…)」

「(……まぁ、どうせ私には何も見えないから、叶に判断を任せるしかないよ)」

「(ん、わかった。……何かあったら、俺を置いてでもいいから、桜は逃げてね?)」



 桜がその返事をする前に、叶は桜から顔を離した。

 叶は偉そうな男に返答をする。



「……応訊いておきますが…変なことはしませんよね?」

「ああ、せぬさ。それどころかもてなしてやる」


 

 男が話している間に、叶はジッと顔色を伺った。

 嘘は言っていないっぽいけれど、まだ信用は出来ないと、叶は判断し、もしもの時に桜だけでもいつでも逃げられるような方法を考えつつ、その男に向かって頷いた。



「わかりました。ついて行きましょう」

「助かる。では、乗ってくれ」

 


 叶はその男に言われるがまま、桜の手を引きながら馬車の中に乗った。

 馬車の中は見た目の数十倍も広かく、叶はひどく驚いた。桜も聴覚のみから得られる情報により、空間に違和感があることを察していた。

 それがエンチャントによるマジックルームだということは、叶達は当然知らない。



「じゃあ…そうだな。そこのソファにでも腰掛けてくれ」



 男が指を指した先には赤くてところどころ金色で装飾が施されている高級そうなソファがあった。

 2人はそのソファに座った。それを確認した男も、対面になるように座る。



「まずは自己紹介だな。僕はユグドラシル神樹国国王のローキス・セッグライという。そなたらの名前は………あぁ、ステータスは確認したか?」

「ステータス……?」

「…え?」



 2人は、ローキスと名乗る男から発せられた、普段はゲームやラノベやアニメでしか聞かないような単語に耳を疑わせた。



「なに…やはり知らないか。ステータスとはだな____」



 ローキスがそう言いかけた時である、桜は突然に声を上げた。



「えっ…えっ!? 何これ?」

「どうしたんだっ!? 桜っ! っ…て、うわっ! なんだこれ…」



 叶にも、それは現れた。

 それは、頭の中に直接送られてくる、この世界の神だという者からのメッセージ。

 そのメッセージはこの世界のことや叶と桜の現状とこの世界についての説明をし、ステータスを頭の中で考えることを促した。



「どうした、何かあったのか?」



 ローキスは、叶に特に心配そうにはせずに、そう、問う。



「…何か突然、頭の中に文字が浮かんできて…」

「何を驚いている? アナズムでは普通のことだ。お前らの世界では無いのか?」



 その言葉は、何を当たり前のことを言っている、こんなこともできないのかと、少しバカにするような口調で言ったように桜は思えた。



「叶にも来たんだね…見てみようよ、ステータス」

「そうするしか無いみたいだね。ローキスさん。少し、このステータスを見る時間をもらっても良いですか?」

「…良いぞ」



 2人は、ステータスを頭の中で考えた。



--------------------------------------------


-ステータス-


name:カナタ


EXP:0


HP :10/10

MP :10/10


A(攻撃力):5

C(器用度):5

D(防御力):5

W(魔法力):5

S(素早さ):5


STP:500



-スキル-


SK1)


[E(X):火術]Lv - [E(X):水術]Lv -

[E(X):風術]Lv - [E(X):土術]Lv -

[E(X):念術]Lv - [E(X):癒術]Lv -

[E(X):強化術]Lv - [E(X):弱化術]Lv -


SK2)


[剣技★]Lv - [体技★]Lv -

[槍技★]Lv - [弓技★]Lv -

[スパーシ・オペラティオン★★★★★]Lv-


SKP:500


称号: [ノーレッジ][異世界からの招来者]

印: -


--------------------------------------------

--------------------------------------------


-ステータス-


name:サクラ


EXP:0


HP :10/10

MP :10/10


A(攻撃力):5

C(器用度):5

D(防御力):5

W(魔法力):5

S(素早さ):5


STP:500



-スキル-


SK1)


[E(X):火術]Lv - [E(X):水術]Lv -

[E(X):風術]Lv - [E(X):土術]Lv -

[E(X):念術]Lv - [E(X):癒術]Lv -

[E(X):強化術]Lv - [E(X):弱化術]Lv -


SK2)


[剣技★]Lv - [体技★]Lv -

[槍技★]Lv - [弓技★]Lv -

[エブリングリーメ★★★★★]Lv-


SKP:500


称号: [ノーレッジ][異世界からの招来者]

印: -


--------------------------------------------



 頭の中に浮かび上がった、まるでゲームのような表示に2人は驚きを隠せなかった。

 さらに、その後再度、神を名乗る者からメッセージが届き、ステータスの仕組みを詳しく知ることとなった。


 また、最初に送られてきた文字群で特別な力をもらっていることを思い出した2人は、星が五つあるSK2と称号を詳しく調べようとしたが、ルーキスによってそれは遮られてしまった。



「そろそろ見終わっただろう。で、お前らの名前は?」



 叶はルーキスの方をジッと見て、桜はルーキスの声がする方向を見て自分の名前を答えた。



「俺はカナタです」

「わ…私は、サクラです」

「そうか、カナタとサクラか。記憶しておこう……で…だ、色々と説明する事がある。移動しながら話すぞ」



 ローキスがそう言った後、馬車は動き出した。

 カナタとサクラは無意識に、互いに身を寄せ合っている。


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