第194話 1ヶ月半
パレードが終わってから1ヶ月と半月。
とにかく忙しかった。俺もミカも。
毎日毎日、どこかしらの出版社から取材を受け、写実を描かれる日々。
記者からインタビューされ、それに答えるのが基本。
よく俺とミカ、二人でインタビューされたものだ。そこで訊かれるものの一部に俺達の出生などがあった。
記憶喪失…と、答えるとアリムファンクラブの人達とかの中に、この世に無いはずの俺の故郷を探そうとする人がいるだろうから、そういう、俺らの過去に関する質問には、うまいことはぐらかせた……はず。
時には、武器の作成の依頼をされる事もあった。
主に、SSランカーや、Sランカーから。
とりあえず、人に売る武器は全部、自分の手で作ったよ。武器の作成に関しては有り余っている、魔物から手に入れた素材の在庫を消費することができるから、なかなか良かったよ。
さらに、商人組会との取引や商品開発の協力もあった。
あとあれだ、ついに『アリムちゃんを愛でる会』……いや、今は改名していて『ジ・アースの2人を愛でる会』か。
彼らから直接依頼がきた。
確か…握手会とサイン会だっけ。それと俺とミカの写実集のための撮影とかね。
写実集のための撮影は、正直なところ危なかった。
AプランとBプランを選ばされてさ、Aプランが普通の格好をしてるのね。問題はBプランでね。
内容は………ちょっと言えない。
3000万ベル払うって言われたけど断ったね。
いやー、怖いわ。
何が怖いって、俺とミカはこの世界で12歳なんだよ?
この世界でも子供だよ。その子供に対する内容じゃないんだよ、Bプラン。背筋がゾワッとしたよ。
だから流石にそのBプランの提案をした人には怒ったね。
そういえば、周りの会員達も怒ってた。
どうやら、俺とミカの扱いは至極丁寧にしなければいけないと、会の決まりにあるらしい。
あとで聞いた話だと、Bプランの人は脱会させられたんだって。これで安心……かな?
そういえば、俺と直接の関わりがない人はみんな、今のところ、俺が魔法で作ったアイテムは用が済めば消えるのだと思ってくれてるからか、レジェンドポーションの個人的所有のための大量生産とかはなかった。
それは良いことだ。正直、戦争じゃあ誰も死んでほしくなくてレジェンドポーションやアムリタをばら撒いたけれど、これ、地球での価値で言えば、どデカイダイヤモンドとかをばら撒いてるようなもんだし…。
…そうそう! 国王様から渡された報酬は、全額受け取ったものの、ほとんど手をつけていないんだ。なぜなら、使う場面がないから。
本当に何に使おうか?
金は天下のまわりもの。使わなきゃ、この国の経済とか滞ったりしてしまうだろう。けど、使う場面が無いんだよなぁ………。
仮に、ミカとのデートで外に食べに行くとしても一回で多くて数千ベルしか使わない。
マジで2000億ベルどうすんだよ…。
それどころか、武器とか、商品開発とか、インタビューそのものとかの報酬金で今もなお、お金は増えてる。
いっその事、国王様には断られるかもしれないけれど、手許に3億ベル程だけ残して、あとはこの国に寄付してもいいかな…なんて。
とにかくどうにかしなきゃね。
まぁ……あとはこれと言って大きな事は無いかな?
みんな、上手くやってるみたいだしね。王都の裏路地の治安も良くなったし。
まぁ…なにやら北のほうにある何処かの国とは、なんだかうまくいってないみたいなのが気がかりか?
まさか…アムリタの情報が? いや、そんなまさかね。
ともかく一ヶ月半は忙しかった。
でも最近はやっと落ち着いてきて、インタビューや仕事も3日に4件あるか無いかだ。
1ヶ月半、カルアちゃんとは遊べなかったし、ミカとも夜以外でイチャイチャできなかった。
でも、今後はできるからね。嬉しいね。
俺は今、自宅でミカと一緒に夕食を食べている。
キノコと鶏肉を主とした2人用鍋だ。
なぜ鍋か、それは秋ももう少しで終わ…らない。なんせ、アナズムは16ヶ月もある。来月、つまり12月までは秋だ。そう、つまり今、鍋をしてるのは鍋が食べたかったからの何物でもないのだ。
俺が何気なくミカに微笑みかけるとミカも返してくれる。
無理してでも明日は仕事を無しにしなきゃいけないんだ。明日はミカとめっちゃイチャイチャする。そう決めている。
何故か、実は明日は大事な日。……それはミカの誕生日だ。
忘れてはならない。ま、忘れたことはないけど。
「アリム…どうしたの? 食べないの?」
ミカが、そう、俺に声をかける。
どうやら、ボーッとしていたみたい。
「あ、あ…食べるよ。ちょっと眠かっただけ」
「そうなの…じゃあ今日は少し早めに寝よ?」
「うん、そうしよう」
俺はサマイエイルと戦う時よりも明日は本気出す。
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