第185.5話 戦争後の帰宅-風呂-

アリムとミカの入浴シーンです。

この話は見なくてもストーリーに少ししか支障がありません。

また、今回はちょっと書き方を変えます。

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「あっ! そうだ…折角だから大浴場に行こうか」



 アリムはミカに、そう、提案した。



「大浴場…あー、そういえば中に入ったことないわ。どんな設備があるんだっけ?」



 ミカは小首を傾げ、アリムに問う。

 アリムはよくぞ聞いてくれましたとばかりに自慢げに、自作の大浴場の説明をする。



「基本は温泉旅館とかと変わんないよ! サウナもあるし、いろんな種類のお風呂もある! ただ、露天風呂はないよ」



 露天風呂はないと聞いたミカは、ちょっと残念そうな顔をし、その理由をアリムに聞いた。



「露天風呂……なんでないの?」

「ああ、それはね、大浴場が地下にあるから」



 アリムはそう答えた。



「地下にある……? なんで?」

「場所の都合だよ」



 場所の都合ならば仕方ないと、ミカは思ったが、あからさまに残念そうな顔をした。

 その表情を読み取ったアリムは慌てて代わりになるものをしだした。



「うん…あ、でもね、その代わりに! 露天風バーチャル風呂があるからね」



 その聞いたこともない機械的な名前のお風呂がミカは気になり、アリムに問う。



「な、何よそれ」

「うんとね、風の流れとかを露天風呂風に空気調節してあって、背景がバーチャルなんだよ。いろんな背景があるよ、例えば普通のとか…森の中…海底…空の上、プラネタリウムみたいにもできる」



 アリムは良かった旅館をオススメするかのように、ミカに嬉しそうに自分が作成したその、露天風バーチャル風呂を紹介した。

 それを聞いたミカもどんどんと入りたくなってくる。



「いいわね…それ、じゃあ早速行こう! それで…….場所はどこだっけ?」

「ん、こっちだよ」



 アリムはミカの手を引きながら、着替えやタオルなどを持って、屋敷内の大浴場にむかい、そして着いた。

 


「本当に温泉旅館みたい。脱衣所だけで」

「でしょ?」



 脱衣所だけで、十分旅行に来た雰囲気になれる。

 ここまでは二人とも、この屋敷を作成した日に見に来ていた。

 脱衣棚がずらりと並び、空調は裸体には丁度いい温度。

 大きな鏡と洗面台の前には高そうなドライヤーなども置いてある。

 その他にも、お茶や水が出てくる機械などもあった。


 アリムは服を脱ぎ、脱衣籠の中に入れた。

 それに続けて、ミカも同じようにする。

 互いに恥じらいはない。なぜなら、同性だから。

 そういうのも、スキルの効果だったりするのだ。


 二人は大浴場への戸を開き、中へ入る。


 

「ひ…広い!」



 大浴場を見たミカの第一声はこうだった。

 その大浴場は、個人で所有するにはあまりにも広かった。

 サウナや水風呂はもちろん、足湯や座り湯、電気風呂に泡風呂、ジェットバス。寝転べるお風呂に、壺湯、各々で違う効能の露天バーチャル風呂3種。

 他にも何種類かの風呂がある。



「そうでしょ! あ、水はこの大浴場のエンチャントの効果で無限に湧くから、勿体無い…とかは思わなくて良いからね」

「りょーかい」



 ミカとアリムは風呂桶を手に取り、かけ湯を自身の体にかけた。



「よし! …じゃあまずはどうする?」

「身体洗おうよ、その後ゆっくり入りたいな」

「わかった、そうしようか」



 二人は隣同士でシャワーの前に座り、先ず身体をシャワーで濡らし、ボディソープをボディタオルに含ませ、泡立てた。

 


「アリム、洗いっこしない?」



 ミカはアリムに提案した。

 特に魂胆はない。



「いいよ、しよっか」



 アリムは簡単に了承した。

 前に一緒に入った時もそうしたからである。



「じゃあ私から」

「りょうかい」



 アリムは後ろを向いたミカの背中を優しくかつ丁寧に擦 こすり始めた。



「前も思ったんだけど…アリム、洗うの上手だよね。男だとは思えないくらい…どこで覚えたの?」



 ミカはアリムに何気なくそう訊いた。



「えっとね、ボクの肌ってかなり傷つきやすいのは知ってるよね?」



 アリムは洗うのを続けながら答える。



「うん」

「いやぁ…実はね最初は苦労したの。有夢でいた時みたいにゴシゴシって洗うと、皮膚がちょっとヒリヒリしちゃってさ…だからいろいろと試行錯誤したんだよね」

「ああ…成程ね」



 その説明でミカは納得したようだ。

 説明している間にもアリムはミカの首の根元から尻部前までの背中を一切もふざけたり、余計に触れてみたりといったことはせずに丹念に尚且つ優しく洗い上げた。



「じゃあミカ、背中流すよー」

「あ、お願い」

 


 アリムはミカに桶の中に入っていたお湯を背中にかける。


 

「じゃあ次はアリムの番ね」

「頼んだよ」



 くるりと後ろを向き、アリムはミカに背中をみせたた。



「お客さん、痒いところはない?」



 そう言いながら、ミカはアリムの背中をこすってゆく。



「ないよー」

「そっかー」



 ミカはアリムの背中を洗っている最中に、空いてる片手でその赤い髪の毛をそっと、つついた。



「アリムさ、髪伸ばしてみたりとかしないの?」

「ん、髪を?…ああ…考えてみても無かったなぁ」

「伸ばした髪も、アリムには似合うと思うんだけど…その赤い髪で二つ結びとかさ」

「そう? んー、でもこれが1番動きやすいんだよね」



 アリムは自分のうなじ近くにある髪を手に取り、少し弄って見せる。



「でもさ、そういうアイテムを作って使ったら伸縮自由でしょ? やってみない?」

「あ、そうか…そうだね。今度、暇な時にでもやってみようかな」

「暇な時って…いつになるのやら……」



 そのあとは特にしゃべることもなく、黙々とミカはアリムの背中を洗っていた。

 しかし、ミカは唐突に悪戯をしたいという衝動にかられる。

 

 

「アーリム!」



 アリムの名前を呼びながら、ミカはアリムの肩をトントンと軽く叩く。

 当然、アリムはミカの方を向いた。



「なぁに?」



 ミカの方を振り向いたアリムに待っていたのは、丁度頬に来るように伸ばされた人差し指だった。

 プニッと、アリムの頬にミカの指が突き刺さる。



「………ほっぺた気持ちい」

「…何すんのさ」



 ジト目でミカのことを見つめるアリム。

 その頬には未だ、ミカの指が刺さったままだ。

 この間、およそ10秒。



「そろそろどけてよ…指」

「あっ…ごめんねっ! 気持ちよくてつい」



 ミカが指を離すと同時にアリムはまた、前を向いた。



「もぉ…良いんだけどね、別に」

「えへへ、ごめんごめん」



 ミカは謝った。

 しかし、彼女は悪戯をやめるつもりは無かった。 

 


「アリム…ごめん、ちょっと洗いにくいからさ、右腕上げてもらえる?」

「んー? わかった」



 さっき悪戯をされたのにも関わらず、すんなりとその要求を受け入れたアリム。

 ミカはここぞとばかりにアリムの脇に腕を滑り込ませ、アリムの成長途中である右胸を鷲掴みにした。



「きひゃぁ!?」



 思わず、変な大声を叫ぶアリム。

 ミカはつかんだまま離さないどころか、手を動かしている。



「ち、ちょっ…ちょっと…ミ…ミカ!? 何するのさ! やぁ…やめてっ…やめてってば…」

「(ほっぺたがあんなに気持ちいいから、ここも…とは思ってたけど……いや、すごいわ)」



 アリムは悲痛の叫びを上げつつ、ミカの手を自分の胸からひっぺがした。

 その瞬間、夢中になっていたミカは我にかえった。



「えっ!? あっ……ごめん、つい」

「……つい…じゃないよ……」

 


 アリムの動機は荒くなっている。

 ミカの方を振り向き、手をとって、諭すようにアリムは、ミカに注意した。



「もぅ、ミカはボクに胸を揉まれるのは嫌でしょ! 突然こういうことしない! いや、突然じゃなかったら良いという訳でもないけどさ……」



 アリムの発言に対し、ミカはポカンとしていたが、暫くして頬を赤らめながら返答し始めた。

 やけにモジモジしている。



「そうだね…私も突然は嫌だな。…ごめんね、魔が差しちゃった。でも私、アリムなら別に……それ自体は…嫌じゃない…けど、なぁ?」

「えっ………」



 思ってもみなかった返答に、アリムは黙ってしまった。というよりは、固まってしまった。



「ち…ちょっと…アリム?」



 突然固まったアリムを我に返すために、目に手をかざしてみたが、アリムに反応はない。

 ミカがほっぺたをつついてみると、やっと反応があった。



「うわぁ…っ!?」

「あ、やっと我にかえった」



 我にかえったアリムは、ミカを見るなりほっぺたを膨らませる。



「と、とにかく、こっ……こういうことはもう、いきなりやっちゃダメだよ! わかった?」

「う、うん」



 どうやら、アリムは先ほどのミカのセリフのことをわすれているようである。

 それほどにショックだったみたいだ。

 そう、ミカは考えた。



「うんうん、でもね、アリム」

「な、なにさ」



 頷いたあとに、ニヤニヤしだしたミカを少し不気味に思ったアリムは、腕で胸を慌てて隠した。

 ミカはニヤニヤし続ける。



「私達がアナズムで最初に会った日より…やっぱり少し大きくなってよ。ふふ、私の方が勝ってるけどさ」

「……あぁ、うん。そうね」



 アリムは少し呆れたような声で、ミカに返事をすると、また、背を向けた。



「まぁ、もういいから続きやってよぉ…」

「あー、そうだった。あとは流すだけだよ」


 

 ミカはいつの間にか桶に溜まっていたお湯をアリムの背中にかけた。

 2~3回ほどかけたところで、泡はすべて流れきったようだ。

 


「じゃあ、残りをさっさと洗っちゃってお風呂入ろう!」

「うんっ!」



 アリムとミカは洗っていない箇所すべてを洗い、その泡をシャワーで落とす。



「これでよし。どのお風呂から入る? ミカ」

「んーとね、露天風呂もどきもいいけど……まずは室内の____あ、あれがいい!」



 ミカは程よい勢いで温泉中にマッサージように湯が噴出されてる風呂を指差した。



「わかった、あれだね」



 ミカとアリムはそこの風呂に隣り合わせで入る。二人しかいないから、別の場所に行くなりして広く使えばいいものの、離れる気配はない。



「あー、水流が背中にあたるぅ…」

「ねっ…気持ちいね」

「ミカ…これってさ、このまま噴出口の方を向いたらどうなるかな?」

「やってみれば?」

「うん」



 噴出口に向かって、アリムは腹部を向けた。

 そして、すぐに背中を向け戻す。



「どうだった?」

「……お腹がウニョウニョした」

「そっか、じゃあそろそろ次行こう」

「賛成ー」



 アリムとミカはジェットバスを出た。

 


「次はどうする?」

「あの滑り台みたいなのはないの? みたところ、ここにはないみたいだけど」



 キョロキョロと周りを見渡しながら、ミカはそう言った。



「あるよ」

「あるの! やりたーい!」

「でもダメ、あれは水着着用だしそれに疲れるよ?」

「そっかー、じゃあそれも時間がある時ね」



 二人はウォータースライダーを諦めた。



「で、どうする?」

「んー……アリムが決めてよ」

「そうだねぇ…あ、あれなんてどう?」



 アリムが指差したのは、なにもないただのお風呂。しかし、なにやら怪しげな装置が付いていた。



「なにあれ?」

「あのお風呂はねぇ、ミカはきっと喜んでくれる」

「私が? 喜ぶの?」

「そう、とりあえず入ってみてよ」



 アリムとミカがそのお風呂に入るなり、謎の装置から沢山の薔薇の花が出てきた。

 赤、白、ピンクを主にした多種類の薔薇だ。

 つまりこれは、薔薇風呂だった。



「わぁっ! なにこのお風呂、すごい!」



 ミカは自分が好きな花を見て、とても喜んでいる。



「ふっふっふっ…これはね、アイテム噴射機付き風呂だよ!」

「アイテム噴射機付き風呂?」

「そう、このお風呂に入ったら、その人の好みに合わせてランダムでアイテムが噴出されるの。例えば…アヒルさんとか、お金(偽物)とか…ミカみたいに、お花とかね」

「へぇ…だから私の好きな花の一つの、薔薇が出たんだ!」

「そういうことっ…まぁ30分したら全部消えるけどね」



 ミカは風呂中に引きつめられた薔薇の花や花弁を手にすくい、匂いを嗅いだり、眺めたりしている。1番近くにあった大きめの真っ赤な薔薇を拾い上げ、自分の頭の上に乗せ始めた。



「どう? 頭に薔薇っ」

「可愛いっ! その黄緑色の髪がいい感じだね」

「あ、アリムも頭に白い薔薇の花びらがついてるよ?」

「本当?」

「うん、可愛い!」



 アリムとミカはこのお風呂にずいぶん長く入っていた。

 いつの間にか、びっしりとあった薔薇はすべて消えていた。



「あっ…消えちゃった」

「30分たったんだね」

「あぁ…気持ちよかった! じゃあ次はぁ…」



 そう言いながら、ミカはアイテム風呂から出たが、白い体がほんのり赤くなっていた。

 アリムもまた然り。



「次行く前にさ…すこしクールダウンしよ?」

「さんせーい、じゃあ水風呂が良いかな」



 二人は今度は水風呂に入ろうとした。

 この水風呂は特別製で、入り始めは冷たくて入りづらいということはない。

 なぜならぬるま湯ほどの暑さはあるから。

 しかし、全身がつかってから時間を追うごとに冷たくなっていき、最終的には普通の銭湯の水風呂と同じ温度になる。

 水風呂が冷たすぎて入るのに苦労するという人にとってはうってつけだ。


 ミカはそんな水風呂に片足をつけてみた。



「……水風呂なのにぬるくない?」

「そういう水風呂なの。ボク特製のね。まぁまぁ、暫くつかっててよ」

「ん、わかった」



 ミカとアリムの全身が特製の水風呂に浸かった。そこから、だんだんと水が冷たくなっていく。



「あっ…これ、だんだん冷たくなるんだ」

「そうだよ、全身まで入りやすいでしょ? 最初がぬるま湯だとさ」

「そういえばそうね、でも水風呂って冷たいか良いんじゃ…まあいいけど」



 さらにそこから数十秒。

 水風呂がかなり冷たくなった。



「あ…なんか冷たい」

「んぅ…多分、水風呂としての良い温度になってるんじゃないかな、もう」

「そっかぁ……ぬくもりが欲しくなってきた」

 


 そう言いつつ、ミカはアリムの腕にしがみついた。



「なんで腕にしがみつくの?」

「あったかいかなぁ…って思って」

「あぁ、寒くなってきたんだね。そろそろ露天もどきにでも行く?」

「そうするっ!」



 アリムとミカは水風呂から出て、露天もどきへと向かった。

 露天もどきへの道には4つのドアがあった。



「3つドアがあるのね」

「うん、それぞれお風呂のタイプが違うんだ」

「背景は?」

「背景は全部の部屋、リモコンで変えれるから」

「あ、そうなんだ! じゃあまずは1番左から入ってみようかな?」


 

 ミカは1番左のドアを開けた。

 その先には道があった。



「あの途中までの道も再現してるの?」

「そうだよ、さっ…行こう」

「うん!」



 露天へと続く道を滑る床に気をつけながら歩き、そしてたどり着いたその場所には、オーソドックスな露天風呂一つと、壺風呂が2つ。

 そして背景は夜景であり、森林や山が月明かりによって照らされている。

 さらには鈴虫等の虫の声も聞こえる。



「おぉ、これはよく見るやつ!」

「中々良いでしょ?」

「うん、あ、私、あれからはいるね」

「あっ…ちょ…」



 ミカは壺風呂へと向かっていった。

 アリムの手を握って。


 そして一つの壺風呂の中に、二人一緒に入った。

 身体がかなり密着している。



「な、なんで? なんでボクも一緒に入れたの?」

「えっと…えへへ、一緒に入りたかったからかな。ダメ?」

「ううん、駄目じゃないよ」



 ミカとアリムは互いに照れた。

 はたから見たら少女二人が戯れているようにしか見えないのだが、本人達にとってはそれなりに意味がある事なのである。


 ミカは背景を見た。



「すっごーい…背景が綺麗…」

「でしょ! …どうする? 変える? 雪景色とか、砂漠のど真ん中とかにもできるけど」

「砂漠のど真ん中って……。私はこのままが良いかな」

「わかった、じゃあこのままで」



 しばらくそうして二人は一つの壺風呂に入っていた。

 


「そろそろ温泉にでも」



 そう言ってミカは壺風呂から出た。

 それと同時にアリムも出る。



「この温泉はね…効能がいろいろあるんだけど、なんといっても1番の効果は腰痛に効くことだね」

「腰痛なんて誰もしてないじゃない」

「ま、そうなんだけど」



 ミカとアリムは温泉へと入浴した。

 この温泉は普通のお湯よりほんの少しだけ赤みがかかっているようだ。



「はふ~…極楽極楽」

「そだねぇ…」



 しばらく二人は一言も喋らずにのんびりと湯を楽しんだ。



「よし…じゃあ次いこぅ…」

「うん、この隣の部屋だね」



 二人は温泉を出て外廊下を渡り、3のドアがある間まで戻ってきた。

 そして、先ほどまで入っていた部屋の隣、つまり真ん中のドアを開け、中に入った。


 部屋に入ったはずだった。

 さっきの部屋のように廊下はなく、いつの間にか自然の中に二人はたっていた。



「うわぁ…すごい。虫とか居そう」

「ここは大自然の中に偶然できた秘境の温泉とかをコンセプトにしているよ。そのドアはここから離れたら見えなくなるからね」

「む…虫はいないよね?」

「居ないよー」



 二人はドアから離れ、温泉へと向かう。

 確かに、ドアからある程度離れたら見えなくなった。

 床の肌触りがかなりリアルであり、本当に自然の中を裸足で歩いているような感覚にミカはなっている。


 そして二人は温泉までたどり着いた。



「こういうとこの温泉って、バスタオルとか巻くものじゃないの? バラエティ番組とかだと…」

「誰もいるはずないし、そんなことしなくていいよ」

「でももし、男の人が来たらどうする?」

「『きゃっー! エッチー!』とでも言ってから魔法でも放てば良いと思うよ」

「そ、そうね」



 ミカとアリムは入浴する。



「ふぁ…なんか変な感覚…温泉に入ってるっていうより、自然の中に居るって感じ」

「そうだねぇ………あっ、そうだ!」



 アリムは何かを思いついたようだ。



「ん? なんか思いついたの?」

「んふふ、良いものでも食べようかと思って」

「良いもの?」

「まぁ、見ててよ」



 そう言ってアリムはダークマターを展開すると、すぐにそれは木の器の中に入った温泉玉子へと変化した。

 木でできた匙も付いている。

 アリムは二つ作った温泉玉子の片方をミカに差し出した。



「ミカも食べる?」

「温泉玉子だぁ! うん、食べる!」



 ミカはアリムから温泉玉子を受け取った。

 木の匙で絶妙の茹で具合の温泉玉子をすくい、口の中に頬張る。

 


「おいしい…ね」

「ねぇ…おいしいね」



 二人はペロリと温泉玉子をたいらげてしまった。



「アリムぅ…も、もう一個食べたいなぁ」

「良いよぉ…はいどうぞ」



 アリムは再度、二個の温泉玉子を作り出し、一方をミカに渡した。

 そしてまた、すぐにたいらげる。



「おいしかった!」

「喜んで貰えてなにより、じゃあそろそろ次に行こうか?」

「うん」



 二人は大自然の露天風呂から出て、ドアがあった場所に向かった。

 近づくと、再度ドアは出現する。


 そのドアを開き、3つのドアがある間へと出て、そのまま二人は右から2番目のドアの中に入った。

 出た先は構想ビルの屋外。

 そこには寝そべられるのに丁度いい広さと浅さの、先二つと比べてかなり人工的な見た目の湯があった。



「うわぁ…これはすごい」

「なんかお金持ちになったみたいでしょ?」

「うんっ!」



 二人はそのお風呂へと、寝そべった。



「あー、なんか夜風が気持ち良い」

「ねー、都会の夜景も良い感じだよね」



 唐突に、アリムは少しだけ身体を捻らせ、手摺についていた怪しげなスイッチを押した。



「ふえっ…今何したの、アリム?」

「机が出てくるの、このボタンを押すと」

「へー」



 アリムの言った通り、二人の間に白い板が一枚現れた。



「これで何かを置いたりできる。例えば、ここで本を読んだり、飲み物を置いたりできるってわけ。 さ、ミカ! 飲み物は何が良い?」

「飲み物かぁ…そうねぇ…」



 ミカはしばらく考えたのち、こう提案した。



「上にアイスクリームが乗ってるメロンソーダが良いなぁ……」

「わかった、じゃあボクもそれにしようかな」

「で…あの、一つお願いがあるんだけど」

「何?」

「す…ストローをね? あの…二股のやつにして欲しいの」

「えっ…あ、あぁ! うん、わかった!」


 

 アリムはミカの注文した通りの大きめのメロンクリームソーダを一杯出し、スプーンと共に机の上に置いた。

 アイスクリーム、メロンがトッピングされているほか、二股に分かれ、中部がハートのようになっているストローも付いている。

 


「うんっ! ありがとう」



 ミカはそのメロンソーダを手に取り、一人で飲み始めた。



「えっ…ち……ちょっとミカ?」

「なぁに? あ、そういえばアリムは自分の分は出さないの?」

「えっ……」



 アリムはあからさまに落ち込んだ顔をした。

 てっきり、二人で一つのを飲むと思っていたのだ。

 まあ、これもミカの意地悪なのだが。


 アリムが落ち込んだのを見たミカはニヤニヤしながら、さっきまで飲んでいたメロンクリームソーダを机の上に置いた。



「ごめんごめん、冗談だって」



 ミカは片方のストロー口を口に咥える。

 アリムはもう片方のストロー口を咥えた。



「やってみたのは良いけど…なんか恥ずかしいね」

「ね」



 二人とも照れつつも、互いに顔を見つめあいながら、メロンクリームソーダを飲み干した。

 アイスクリームは半分ずつ食べ、メロンのトッピングはミカが食べた。



「えへへ…たまにはこう言うの良いよね」

「そうだね…あぁ、そろそろ出ようか」

「大分長いこと入ってたもんね」



 二人は屋外バスを出て、4つのドアの間を出て、そのまま脱衣所へと向かった。

 身体をバスタオルで拭き、髪をドライヤーで乾かし、寝るための衣服を身につけ、大浴場を後にした。



「どうだった? ミカ」

「すごく楽しかった! ま…また一緒に入ろう?」

「そう? なら良かった。勿論、また今度ね」



 二人は二人のための自室へと戻った。

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