童話 蟻ムと曲木リス

これはアナズムとは別の世界のお話。



 それは、夏のある日___



「うんしょ、よいしょ!」

「ゲームは我慢…ゲームは我慢…」

「うーん、重いよー」



 働き蟻ム(アリム)達はマジックアイテム制作に使うミスリルや、アルティメタル、オリハルコンを山から採掘し、自分たちの巣へ運んでいる最中でした。

 なお、蟻ムは雌しかいません。



「…やぁ! 蟻ムちゃん達、そんなに汗だくで荷物を運んで何をやっているの?」



 そんな働き蟻ム達に声をかけたのは、マガリギリスでした。本人はこう呼ばれるのを心底嫌っており、普段は自分のことをミカと呼ばせています。

 なお、マガリギリスも雌しかいません。



「わぁっ!? マガリギリスだ!」

「うわぁ、マガリギリスが居る! 可愛い!」

「うぅ…そう呼ばないでよ…ミカって呼んでよ、そんなゴツい名前嫌なの」

「わぁ、泣かないで! ゴメンね? ミカ!」

「ごめんなさい…ミカ」

「泣いてる姿も可愛いね、マガ……ミカ!」



 普段、マガリギリスは花を摘んだり、蟻ムのところにお嫁さんとして嫁ぐための花嫁修行をしておりました。

 全てのマガリギリスはこういった習性を持っております。



「それはともかく……結局、アリム達は今は何をしているの?」

「冬に備えてマジックアイテムを作るから、その為の材料を集めてるんだよ!」

「ゲームを我慢して集めてるんだよ!」

「集めてるんだよ! えっへん!」



 腰に手を当てて、自慢気に胸をはる蟻ム達。

 汗のせいか、全員、上の服が透けて見えてるのは彼女達にはナイショです。

 もし教えたら、恥ずかしさのあまりパニックになってしまい、大量の伝説の剣をその場で作りだしてしまう上に、それを神的な剣術で振り回してきます。



「そ…そうなんだ、大変だね?」(透けて見えてる…そっか、今日は全員、黒…か…)

「うん、大変なんだ…ミカは何してたの?」

「私? 私はお花摘みかしらね」

「そっかー」



 そんな蟻ム達の中の一人が、何かに気づいて、マガリギリスにたずねた。



「でもさ、ミカ。今のうちに冬の準備をしなくて大丈夫なの?」



 その一言により、次々にオロオロとしだし、ミカの心配をする蟻ム達。



「そうだよ! 今から準備しないと____ミカは…」

「死んじゃうの? ボク、ミカが死んだら嫌だ…」

「早く、早く準備しないと、急いでミカ!」



 慌てだした蟻ムをなだめるように、マガリギリスはこう言った。



「そうね…確かに今は食料はたくさんある。でも冬になったらなくなっちゃうよね。……あのさ…もし良いんだったら…冬になったら……私、アリム達のところに…お嫁さんに…い、行こっかなぁ……」



 その言葉に反応する蟻ム達。



「来てよ、是非来てよ!」

「わーい!」

「やった、やったぁ!」



 嬉しくて涙を流す蟻ムがいれば、小躍りする蟻ムもいる。はたまた、既にミカに頬ずりしだす蟻ムも居た。



「私っ…すごく嬉しいっ…! 冬になったら絶対に行くから!」

「うんっ! 約束だよ」

「あったかいご飯を用意して待ってるから!」

「もぉ…それは私の仕事よ?」

「そうだった」

「えへへ、アリム、大好きっ!」

「「「えへへへ、ボク達も!」」」




_____

___

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 そして月日は流れ、冬となったのですが。



「うぅ…寒いよぉ…死んじゃうよ…嫌だよぉ…助けてよ、アリムぅ…」



 蟻ム達の巣の場所を聞いていなかったマガリギリスは、冬の寒さと雪の中、凍え死そうになってました。

 その美しかった肌には肌荒れ、霜焼け、あかぎれ等が多数でき、食べ物もしばらく食べてないので、身体もボロボロのガリガリです。


 マガリギリスは偶然発見した水溜りで自分の姿を確認しました。



「ひうっ…グスッ……こんなの、アリムに見せられないよ…お嫁にいけないよぉ…」



 そしてその場でそのまま、マガリギリスは倒れ、動けなくなってしまいました。

 マガリギリスが倒れてから数分後、向こうから何かがやってきます。



「ひぃ…寒っ!」

「本当…トルーの鏡を作るのに、真冬の天然氷が必要ってどういう事なの…」

「早く帰ってゲームやりたいなぁ…」



 それは蟻ム達でした。

 蟻ム達は倒れているマガリギリスを見つけました。



「ん? 誰か倒れてるよ」

「うわぁ!? マガ……ミカだあ!?」



 その声に気づいたマガリギリスは何かを呟きます。



「う…ぁ…アリ…ム? じゃあここは天……国……」



 そして完全に意識を失ってしまいました。



「うわぁぁぁ!?」

「助けなきゃっ!」



 そうして蟻ム達はマガリギリスを自分達の巣へ招き入れた。



「________ここは?」



 マガリギリスはベッドの上で目を覚ましました。

 いつの間にか服は新品のものになっており、傷だらけだった肌はもとどうりとなりツヤツヤで、痩せこけてしまっていた身体も回復していました。



「やったぁ! ミカ、目を覚ましたんだね?」



 マガリギリスが目を覚ましたのに気づいた蟻ムはマガリギリスの元へとすっ飛んでいきます。



「ア…アリムっ? じゃあここは…」

「ボク達の巣だよ?」

「ミカ! 起きたんだね!」


  

 他の蟻ム達もマガリギリスが起きた事に気付き、すっ飛んできました。マガリギリスの手を握ったり、頭を撫でたりしています。



「私っ……助かったの? ここに嫁いできても良い?」

「うんっ…夏の時に会ったマガ……ミカ…だよね? 良いよ」

「あっ…ありがとうっ!」



 マガリギリスは嬉しくて泣きだしてしまいます。



「わぁ、わぁ、泣かないで!」

「なら…慰めてくれる?」



 マガリギリスは蟻ム達に問いました。



「うんっ」

「いいよー」

「任せてね!」

「うゃー」

「うみゃー」

「ゲーム…」



 一斉に多数の蟻ム達がマガリギリスに迫って来ます。



「うわっ…ちょっ…くるならせめて2人ずつ…潰れるぅ________________

________

_____





「うわぁっ!?」



 寝室でアリムと一緒に寝ていたミカは驚きのあまり起きてしまった。



「なんだ…夢か…」



 周りの様子を見て自宅内だと気づいたミカは、心底ホッとした。



「アリムが沢山いるのも悪くないけど……一度にあの数はキツイよ……可愛かったけどね」



 ミカは寝ているアリムに抱きついて、再度、眠りにつく。

 

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