第172話 死の魔神

 てなわけで、幾つかこのサマイエイルに質問をしてみようと思う。



「ねぇ…ところで幾つか質問したいことがあるんだけど、いい?」



 俺は勇者の剣を突きつけつつ、そう訊いた。



「ほう……我に人間が質問か。初めての事だ。どうせ抵抗しても無意味なのは分かっている。折角だ、答えてやる」

「ん、わかった……じゃあまずね……」



 ん、やけに正直だなぁ。

 もう諦めてるのかな?


 ま、いいや。どんな質問がいいかなぁ…。

 まぁ、一番最初は…うーんと…なんで人間を襲うか…がいいかな?

 まずそれを訊いてみて、で、その話の中で疑問に思ったことがあったら追加で質問しよう。



「どうして、人間を襲うというか…そんなことしてるの?」



 俺はそう訊いてみた。

 サマイエイルはすんなりと口を開く。



「そうだな…なにも我は人間を滅ぼせるなら誰でも良いというわけではない。我の1番の目的はメフィラドの血筋を絶やす事だ」



 え? なんでメフィラドの血筋を狙うんだ?

 だって…ねぇ?

 自分が復活できなくなるじゃん。



「そうなんだ……じゃあ、なんでメフィラドの人達を狙うの? もし滅ぼしちゃったりなんかしたら……悪魔神は復活できないんじゃない?」



 そう問うと、一瞬、サマイエイルは驚いたように表情を変えたが、また答えてくれた。



「それは……我がメフィラドの血筋を絶やさなければならないからだ。……そう、メフィラドの血筋を絶やさなければならない」



 おいおい、理由になってないぞ!?

 そんなん、『殺したいから殺す』…って言ってるのと同じじゃん。

 なにをそう、悪魔神を突き動かしているのか…。



「うーん、わかんないや。つまり、どういうことなの? メフィラド家の人達って…なにか危ないの?」

「…………………わからぬ」



 ダメだこりゃ。

 それに……なんか聞いちゃいけないこと聞いた気分だ。

 背中になにかいやなものが走る感覚さえ、してくる。

 だったら…こう、もう少し答えやすそうなのにしようかな。



「わかった、じゃあ理由のことは置いといて……悪魔神って、いつ生まれたの?」

「…………ん? 考えたこともなかった。すまない、わからぬ」



 さっきと同じ感覚が背中に走る。

 手には嫌な汗がにじむ。

 あれ…俺これ…なんかまずいことでも聞いちゃったかな…?

 なんかこう、心霊番組を見ていた時に偶然本物を見ちゃった時の感覚ににてる。

 そういう事ってあるよね?

 

 そう考えていた時、サマイエイルは何かを言い出した。にやけ顏が怖い。



「なぁ…真の勇者よ、今度は我から訊きたいことがある…。答えてくれぬか?」



 今度はサマイエイルから俺に質問が…?

 どうしよう。

 正直、こいつとこれ以上関わりたくないんだけど……。

 まぁ、変なこときかれたら封印しちゃえばいいし、少しくらいならいいかなー、なんて。

 冥土の土産に教えてやるっ…てやつ?



「………いいよ、なに?」

「お前は……どうやって我の羽を切り取った? あれは……この世の物では傷がつけられなかったはずだ。それこそ……神の力でもない限り」



 あ、まじで?

 通りで勇者の剣じゃ、傷がつけれなかったわけだ。答えるべきかな…これ?

 でも答えなかったところでどうなるわけでもないし…答えてあげてもいいかも。



「ん…ちょっとね、この剣でね」



 その剣をみたサマイエイルはさっきよりもとびきり驚いた顔をした後、ニコニコと笑いだした。

 

 なにその反応…すごく気になる。



「え、どうかした?」

「いや……いや、なんでもない。こちらのことだ」

「そう言われても気になるんだけど」

「そのうち、わかる……かもしれぬ。運が良ければな。すまないが、これ以上は答えないぞ」



 サマイエイルからは固い意志が読み取れた。

 これ以上は何も答えてくれなさそうだ。


 仕方ない…そろそろ封印するかな。



「ん、じゃあそろそろ封印するね、おやすみ」



 そう言って、俺はカルアちゃんのお母さんの身体に、傷がつかないようにエンチャントをした勇者の剣を突き刺した。


 しかし、サマイエイルはより笑みを浮かべる。


 

「ぐぉぉぉ!? ぐ…ふは、ふはは、ふははほは!! 貴様、気づいていないのか?」

「ん?」



 勇者の剣は青白く光だし、その突き刺した場所から何かを吸い取り始めた。

 紫色の靄のようなものがちょくちょく見える。

 それがサマイエイルの霊体というか、たましいのようなものなのかもしれない。

 サマイエイルはドロップロットを手から落とした。

 それと同時に、サマイエイルは何か口をパクパクさせながら話そうとしている。

 一体、何を俺は気づいてないというんだ?

 よく、耳を澄ませてその内容を聞いてみることにした。



「くはは……愚か者めっ……我は封印さ…る…だが、メフ…ラ…の血筋を絶や…こ…は……できた……! 真…勇者よ……残念…だっ…な…貴様と話してる間に…我の目的は完遂していた……!! 試しに……貴様らの拠点の魔力を見てみるといい」



 俺はそう言われたので、魔力を感知してみた。

 そういえば、サマイエイルと闘ってから、ずっとそっちに集中していて、周りのことは見てなかった。


 ……拠点どころか、メフィラド王国王都から、一切の魔力を感じない。

 誰の魔力も…だ。


 ウルトさんや、パラスナさん、ギルマーズさん、そして国王様。

 一切わからない。


 それどころかミカも……。


 俺はミカにメッセージをいくつも送ってみる。

 いつものみミカなら間髪入れずに俺のメッセージに対応してくれる。

 しかし、来ない。


 サマイエイルが何かを言っている。

 だけど、俺は焦っていて、何を言ってるかよくわからない。

 でも…今はそんなことに構わず、ミカの安否の確認が先だ。

 最悪、ミカさえ大丈夫だったらいい。


 仮に死んでいたとしても、どうせ、みんな俺の薬で生き返る。


 俺は拠点へと急いだ。


 ……勇者の剣も、ドロップロットも、カルマさんの遺体もほっぽいて。



_______

____

_



「くっ……くはは……我は……悪の魔神…サマイエイル! 闇が成す空間を操り、悪魔を生み、生あるものを黒き力によって死に至らしめる魔神だ!我が本当の力…それは即死! 神の道具を手に入れし、真の勇者よ…我が本当の力の前に絶望するがよい! ……ふは、ふははは…ふはははははは!!

………ぐぶっ」



 その悪魔神の断末魔の混じったその声は、アリムには届かなかった。


 勇者の剣にサマイエイルが完全に封印されると、一人の道化がやってくる。



「……ここまでは、計画通りですねぇ…いろいろと内容とは違うことも起こったりしましたが…まぁ、良いでしょう。もう少し…もう少しです」



 そう言って、メフィストファレスは勇者の剣をアルマの亡骸から抜くと、その勇者の剣をドロップロットで破壊した。


 黒い靄は再度、アルマの身体の中に入っていこうとするが、その靄をメフィストファレスはドロップロットで綿あめのように絡め取る。


 そして、それを腰に携え人間達の拠点の方へと向かった。

 

 その場に残ったのは、折れた勇者の剣と、傷1つないカルナの亡骸____。


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