第163話 来たる大悪魔-2-

____東口




 パラスナは魔法の連続発動により、他の兵が不要だと思えるほどに、魔物や悪魔を一網打尽にしていた。



「しっかし……倒せど倒せど湧き出て来るのね……きりがないわ……ウルトの方は大変なんじゃないかしら?」



 パラスナのスキル、マジックマスターにより、威力が極段に上がっている上に、魔法を発動する際のMP消費を普通の50分の1程度で済んでいる。

 本来ならばいくら魔法を撃ったところでMPが切れる心配などないのだが、珍しくパラスナはそれを予感していた。

 と言っても、まだMPは10分の1も減っていないのだが。



「はぁ…みんな、大丈夫? 怪我してない?」



 パラスナはそう呼びかけると、冒険者達はこたえる。



「ははは、森羅万象の大魔法使いさんがみーんな倒してくれるおかげで、怪我をする暇なんてありませんぜ」

「パラスナさん、やっぱりすごいです!」

「でも、少し頑張りすぎでしょう。あんな大量の魔法の連発は流石の貴女だってキツイはずだ。少し、お休みになられては?」

「そうですぜ、少しはあっしらも働かせてくだせぇ」



 冒険者達の休めという言葉に、パラスナは甘える事にした。



「そうね、わかったわ。じゃあ少し……」



 言いかけた、その時である。

 バリン___と、音を立て、バリアが崩れ去った。



「嘘っ……!」



 彼女が驚くのも無理もない。

 最大級の魔法の連発でもビクともしなかったアリムの像のバリアが突然に破れたのだから。



「ふむ、なるほど……つまりそうか」



 元、バリアが在った場所から何者かが入り込んできた。

 ボソボソと何かを喋っている様子のその者の膨大な魔力を、パラスナはいち早く察知した。



「貴方……何者? 悪魔よね?」



 パラスナはその悪魔に問いかける。

 その悪魔の見た目は蜘蛛の下半身に人間の身体、カエルの頭と猫の尻尾を有し、手には杖を持っていた。



「我……何者か? そう、それを答えるならば『知識と魔術の大悪魔』ベアルと答えよう」



 パラスナはベアルの答えに…いや、話方に違和感を覚えた。

 どうやら……ベアルのしわがれた声はパラスナ以外の者には聞こえてないようである。



「じゃあ、貴方が敵の幹部の一人ってわけね。………バリア…壊したのは貴方なの?」

「ふむ、いかにも。それは我の仕業なり。我が知によりあの結界を解いた。中々に骨が折れた。我からも問おう。娘よ…お前は『森羅万象の大魔法使い』……か?」



 パラスナはバリアを解いたということを、ベアルがすんなりと答えたのに加え、自分の事を悪魔が知っているという事に驚いた。



「そう……そうよ、私がそう呼ばれてる、パラスナよ」

「ふむ、そうか。我は驚いた。人の大魔法使いが……………まさか、魔法に不適合な獣人だとは思わなかった。これは予想外」



 さらに、パラスナは驚く事となった。

 なぜなら、その事もまた、事実だからである。


 



_______南口



 ギルマーズは剣技によって悪魔に対応していた。

 彼から放たれる一撃一撃が半径数十メートルの範囲の魔物や悪魔を倒していっていた。

 また、南口にはギルマーズのパーティメンバーであるSSランカー、Sランカーが10人以上いる。

 故に彼らは、全く苦戦をしてはいなかった。



「それにしても凄いでぇす……ぼぉくの魔法でもビクともしませぇーん、この結界。SSランカーとしての自信が削がれまぁす」

「そんなに落ち込むなよ、どうやら方々からの連絡によりゃ、パラスナの魔法にも余裕で耐えてるし、ラストマンが暴れても壊れる気配も無いらしいぜ?」

「それほんとぅ、リーダー? ひょえぇぇ……かわいー勇者さん、凄いでぇす」



 こんな風に、余裕を持って彼らは戦闘中に話をしているが、その間にもどんどんと敵を蹴散らす。

 闘いには完全に慣れているようだった。

 さすがはメフィラド王国一のパーティチームと言うべきか。



「俺のモーニングスター、唸るでごんすよ!」



 そう言って、モーニングスターを持った男はそれを外の悪魔に向かって振った。

 その瞬間、今までビクともしなかったバリアが消えてしまった。

 

 

「き…消えたっ!?」



 それと同時に、大量の悪魔がなだれ込んで…こなかった。

 何故なら、



「まぁ、アリムちゃんのバリアは今までよく持った方だぜ」



 ギルマーズが迅速に対応したからである。

 拠点内に入ろうとしている悪魔達はどこからともなく降り注ぐ、槍の雨によってほぼ倒されていた。

 その槍はギルマーズが所持している槍が分散したものだった。



「いやぁ…ゲイボルクも持ってきて正解だったな、こりゃ」

「うほっ! さすがリーダー!」

「やっぱり、リーダーはすごくすごいでぇす」

 


 誰もがそう、緊急事態を余裕を持ってかい潜り

ホッとしたのもつかの間。

 今度は何処からか、強大な魔力とともに眩しい光を発している者が現れた。


 無数に振り注ぎ、地面に刺さっている槍の林の中、その光はどんどんとこちらに近づいてくる。

 その者が危険だと察知したのか、ギルマーズが前出た。



「この槍の中を生き残るなんて、並じゃねぇ…お前、大悪魔とかいうやつか?」



 輝いている悪魔は頷いた。



「そうだ。俺は……大悪魔……ルシフエイル……すまない、本当にすまない」



 ルシフエイルと名乗ったその悪魔は深く腰を下げ、謝り始めた。



「どういうつもりだ?」

「あぁ…言い訳をするつもりはない……俺は、俺は最低だっ……だが、だが俺は俺の望みのため……お前達の命を貰う」



 ルシフエイルは腰の鞘から剣を抜き、ギルマーズに向かっていった。

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