第162話 来たる大悪魔-1-


 バリアが壊れる少し前____




・西口



 あまりの敵の多さに、ラストマン率いる奴隷解放組や、その他冒険者は困惑こそしていたが、アリムの作った腕輪と像のバリアにより安全に闘っていた。

 無論、死傷者などいない。



「くそっ! 安全に倒せてるのは良いが……ラストマンさんや俺達がいくら悪魔共を倒しても埒があかねぇ…」

「そうだな……まるで無限に湧き出てくるかのようだ」



 ラハンドはバリア越しから敵を殴り、ガバイナは槍で突いたりなぎ払ったりしていた。

 彼らはAランクながらも、固有

 一方、バッカスは



「リクェア・マーチレス! からの……フレイム・マーチレス!」



 リクェア・マーチレスによりアルコールをばら撒き、フレイム・マーチレスで燃え上がらせるという方法をとってバリアの内側から攻撃をしていた。


 

「ふぅ…やっぱり数が多いなぁ……」



 彼も倒せど倒せど湧き出てくる敵に、嫌気がさしているようだ。

 だが、彼の攻撃が敵をうまく殲滅しているのも確かである。


 また、その他の冒険者達もラストマンの指揮の元、倒すだけならば次々と倒せていた。


 その現象をみてウルトは少し、考えている。



「……どうしようか、敵が多い……そろそろ、俺が行くべきかな?」



 そう、一人で呟いた彼は、その後バリアに張り付いている悪魔や魔物に攻撃をしている者達に一旦どくように指示した。



「良イカ? 皆、一度ワタシガ悪魔共ヲ一網打尽ニシテミル」



 そう言いつつ、バリアの外へと向かう。



「無理、しないでくださいよぉ?」

「大丈夫ダ」



 ラハンドの忠告を受けつつ外に足を踏み入れたラストマンは攻撃をすべく、行動に移した。



「…クリーチャー・メタモル…モード、ヘカトンケイル」



 そうつぶやくなり、彼の身体は変化していく。

 腕はが背中から次々と生え、身体の至る所から顔が形成される。

 そして最終的には腕は100本、顔は50個の化物の姿になった。



「光爆極拳!」



 そして、彼の100の拳は全て光に包まれる。

 これは彼のクリーチャー・マスターとは関係してない攻撃スキルであった。

 しかし、モード、ヘカトンケイルでは、本来ならば両片手にしか纏うことができないこの技を…100つ全ての拳にできるのだ。


 そして彼は拳を振るう。

 そしてその拳に殴られた箇所は…光属性を帯びた爆発が発生するのだ。


 そうして魔物は100の拳から放たれる数多の爆風により弾け飛んだ。

 しかし、続々と魔物は湧いてくる。



「これでもダメか?」



 ならば、と、ラストマンは次の策に映る。

 


「モード、バジリスク…ザ・ハンド」



 彼の100本の手は、いつの間にやら人の手サイズのバジリスクの頭部になっていた。

 手の先のバジリスクは猛毒を作り出す。

 その毒は掠っただけで死に至る、超猛毒…。


 ラストマンはそのバジリスクの手を使い、次々と悪魔達を葬っていく。

 この、ラストマンが外に出てからの十数分間だけで1万の敵を倒した。

 しかし、それでも処理が追いつかない。


 ラストマンは一度、バリアの中に戻ることにした。


 そしてその戻る最中に……バリアは壊れた。



「なにっ!?」



 慌ててラストマンは元々バリアが張られていた場所より先に侵入しようとしてくる悪魔を処理し始める。

 他の冒険者達は突然バリアが崩壊したことに驚愕をし、身体が動かないようだった。


 ラストマンが処理しているにもかかわらず、それは追いつかずに1匹……2匹とだんだん多くの悪魔と魔物が入り込む。

 それも、先ほどまでとは違うAランクやSランク。


 この間、およそ10秒。

 どこからともなく初期と全く同じの像が現れ、再度、バリアを張り巡らせた。

 それと同時に、やっと驚きから覚めた冒険者達は中に侵入してしまった敵を処理し始めた。

 

 ラストマンはバリア内にいて弱ってるとはいえ、驚異的であるSランクの魔物を優先して処理しようと再び動き出したその時、何者かに声をかけられた。


 その声の方を向いてみるが、誰もいない。

 だがその時、唐突にラストマンの左手はもぎ取れてしまった。

 いや、腐って落ちた、と言うべきか。


 ラストマンは膨大な魔力を感じ、今向いた方向とは反対側に顔を向ける。

 そこには、小さな王冠をかぶった、非常に大きな2mはあろうかという蝿がいた。


 ラストマンは確信した。

 これが、アリムの言っていた敵の幹部の一人であると。



「貴様……シャイターン トヤラノ幹部カ?」



 ラストマンの問いに、その蠅はこたえる。



「あぁ、そうさ! オレの名はバルゼブブ! 蝿の王にして大悪魔だ!」



 ブンブンとうるさい、非常に耳障りな声でそう喋った。

 周りにいた者はそれに気付き、武器を構えるが、ラストマンは残っている右手を上げ、それを制止した。



「ミナ、下ガッテイロ。コイツハワタシガヤル。ナニヤラ……厄介ナチカラヲ持ッテイルヨウダシナ」

「おぅ! 部下思いだねぇ…じゃあお前を殺す前に名乗ることぐらいしてやろうかな? 俺の名はバルゼブブ! ……汚染と腐敗の大悪魔であり…蠅の王だ」

「ソウカ……マァ、倒ス敵ノ名前ナドドウデモイイガ……」



 その言葉と共に、ラストマンの左手が生えてくる。まるで成長する植物のように。



「バルゼブブ、貴様ニ正義ヲ……執行スル」

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