第150話 当日-3-

「アリムちゃん、ミカちゃんは?」



 3人の中で最初にそう言ったのはパラスナさんだった。

 


「ミカは今、戦争の為の準備をしてますよ」

「そう……あの娘も参加するんだ…」



 SSSランカーの3人はとても暗い顔をしている。

 "アナズム版ドルオタ"の司会者や、どっかの隣国の王子達の様に、おちゃらけた様子はない。

 真面目に戦争の事を考えている様だった。



「……やっぱり、俺は腑に落ちない」



 ウルトさんはラストマンの姿のままそう言った。

 あのわざとらしい片言は使っていない。

 


「アリムちゃんが…とても強いのは知っている。バッカスから姫様を救った時の勇姿を聞いたからな。だけどやっぱりまだ…幼いんだ。どうしても…どうしてもアリムちゃんが勇者をやらなければいけないのかい?」



 ウルトさんのその嘆きとも取れる問いに、俺は首を縦にふって、言葉の代わりに答えをしめした。



「でもだな…」



 そう言いかけ、ギルマーズさんに止められた。



「おいおい、そこまでにしとけよ、ウル…ラストマン。お前がそう言ったてよ、どうにかなるわけじゃないだろ?」

「……っ…ですがっ…」



 ギルマーズさんはラストマンの肩をぽんと叩いてなだめた。



「俺だって、パラスナだって同じ気持ちだ。勇者を代われるんだったら代わってやりてぇよ。だけどな、こればっかりは……アリムちゃんにしかできねぇんだ。……お前、勇者の剣を抜けるか?」



 ウルトさんは悔しそうに首を無言で横に振った。

 ギルマーズさんはウルトさんに念をきかせ、諭す様に述べた。

 


「だろ? だから俺達はこの娘に負担にならないように、持ち場で悪魔共を殲滅すりゃ良いんだよ」

「……そう…ですが」



 ウルトさんは肩を落としてうな垂れた。 

 彼を諭した本人であるギルマーズさんとパラスナさんもやはり、気持ちはウルトさんと同じ様だ。

 この人達にとっては俺はまだ守る対象であり、悪魔神とは戦ってほしくないんだろう。



「それよりラストマン、お前、伝言預かってるんじゃなかったのか?」

「…あ…そうだ…そうだった。アリムちゃん、ガバイナやラハンドから伝言を預かってるんだ……。聞いてくれよ」



 ウルトさんはギルマーズさんの言葉により、何かを思い出した様に言った。

 そして彼らの伝言を語りだした。



「まずはガバイナなんだけど…彼はこう言ってた。『今朝、瓦版を見て大変驚いた。アリムはまだ幼い、俺は悪魔神とアリムが戦うのは反対だ。アリムより弱い俺が言うのも何だがな。それでもアリムは悪魔神と戦うんだろう? だから俺から言えるのは一言だけだ……死ぬなよ』」



 ガバイナさんも俺のことを心配してくれてるのか。

 あの人のことだ、戦争中も少しでも多くの悪魔を倒そうとするんだろうな。

 この人こそ、無茶しなきゃ良いんだけれど。



「ラハンドはこう言っていた。『ウルトさんに伝言を頼んだ。多分、ガバイナの奴も頼んでんだろ。おい、アリム。お前、勇者になるんだってなぁ? ……勇者をしたいなら、すれば良い。俺が、俺らが止められることじゃねぇ。ただこれだけは、絶対に忘れんなよ…お前を心配している人間は沢山居るって事をな』」



 ラハンドさん…。

 何というか、あの人らしいというか。

 俺を心配してくれてる人は沢山居る、か…。


 ていうか、これ、この流れ。

 まるで俺がサマイエイルと戦ったら死んじゃうみたいな流れじゃない?

 そんなことは絶対にありえないんだけどなぁ。

 仮に俺が死んだも、ミカがアムリタ使って生き返らせてくれるしさ。

 その後、泣いて怒られちゃうのかもしれないけれど。


 ……まぁ、仕方ないよね。

 悪魔神と闘ったら負けるかもしれない、そう、皆んなは俺のこの見た目で判断してるんだろう。

 俺の実力を知ってる人も、つい最近まではミカしか居なかったしね。


 俺のこの能力ははっきり言ってチートだ。

 そう、改めて思う。

 なにも、みんなは心配しなくてもいいんだけど。



「以上だ。アリムちゃん、みんな君の事を心配してる。もう一度言う、勇者に本当になるのかい?」



 ウルトさんは本当に俺にサマイエイルと戦ってほしくないんだな。

 ただ、ウルトさんに答えられることは一つ。

 そんなの、決まってるじゃないか。



「ええ! ボクがやりますよ。何だか…皆さんの話を聞いてると、まるでボクが死にに行くみたいな雰囲気ですが……ボクが勇者をしなかったら誰が悪魔神を倒すんですか? もう明日ですよ?」



 3人が互いに顔を見合わせる。



「何も、そこまで言ってないわ……ただ私達は…」

「わかってます、心配してくれてありがとうございます! ですが…ボクは皆さんがしてる様な心配は要りませんよ」



 俺はそう言い放った。

 心配するなという言葉だけで心配することをやめてくれるハズはないだろう。

 だけれど。



「……なぁ、やっぱり俺は思うんだ、ウルト。お前が思ってる様に、この娘は弱くねぇよ」

「そう…そうよ、ギルマーズさんの言う通りだわ! この娘が私達に出会って最初にやってのけたことを覚えてる?」



 3人して、俺のことを見る。

 出会った時の事? あぁ、盗聴した時の事か。



「アリムちゃんはね、私達の会話を盗み聞きして見せたのよ? 私達3人を同時に出し抜いたの。そんな娘が、悪魔神一体に負けると思う?」



 ウルトさんは首をためらいつつも横に振った。

 もう少しでウルトさんも折れてくれるかな?

 後一押し。


 俺はウルトさんの手を握り、言い掛けた。



「もう一度いいます! ウルトさん、ボクは負けません! 絶対に」



 ウルトさんの目がない顔がこちらを向き、そして諦めた様に首をすぼめた。



「はぁ……俺の負けだ。アリムちゃんは強いよ。でも、無茶だけはしない事。これだけは絶対に守ってよ、ね」

「はい!」



 俺はニッコリと笑って頷いてみせた。

 ウルトさんの説得も済んだ事だし、国王様のところに行こう。

 聞きたい事もたくさんあるしね。

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