第129話 カルアの見張り

 ここはヘルの森の何処か。

 悪魔達の本拠地…住処である。


 その場所に今、3体の悪魔と一人の少女が居た。



「それじゃ、見張りを頼みましたよぉ~! アスモデンスさん、アスタロードさん」

「うっ……ここは……?」



 メフィストファレスは少女を一人連れてきた。この少女がカルア姫である。

 今、連れ去られたカルア姫は、目を覚ましたようだ。



「おい、メフィストファレスの旦那……俺、この娘で"楽しんでもいい"のか?」



 悪魔の一体は、下衆な表情をし始める。



「ええ、生贄は別に"生娘"である必要はございませ~ん! 殺さなければ良いですよ。どうぞご勝手に、アスモデンスさーん!」

「ふへへへへ、いくら眠ってたとは言え、300年も我慢してたからな……少し幼いが別にかまやしねぇ…300年ぶりの人間の娘、楽しませてもらおう」

「ひっ!?」



 そう、そんな下衆に舌なめずりをしているのがアスモデンス。彼は、主に性欲と嫉妬の力を持つ。

 姿もまた異様であり、普通の人間の上半身に、中央に人間の頭部があるのだが、右肩には雄牛の頭部、左肩には牝羊の頭部。下半身は雄鶏の足と蛇の尾を持つ異形な容姿だ。

 人型の化け物そのものである。

 

 

「アスモデンスさんはそうでなければ。流石は性欲の塊ですねー」

「おいおい、その言い方はねぇだろ。『性知識に貪欲』と言ってくれ、貪欲と」

「どっちも同じような気がしますが……まぁ、良いでしょう。アスタロードさん頼みますよぉ~、カルア姫が死なぬよう、見ていてくださいねぇ」

「(あぁ、わかったが……面倒くさいな)」



 こもった声で返事をしたのがアスタロード。主に怠惰と不精の力を持つ。この者は常に口を布で覆っている。なぜならば口から吐く息が猛毒だからだ。

 猛毒蛇がペットで、今も左腕に巻きついている。

 さらには二重人格であり、一方(普段)は男だが、月がよく見える日のみ、女に性別が変換される。

 人格が変わることによって身体も変わる。

 今は女のようだ。

 

 

「それじゃあ俺は、もう一つの用事をこなしてきますのでー! くれぐれも、姫を見ていてくださいよー? まぁ、人間がここに来ることなんて、普通ではできませんけどね、一応。ではでは」


 

 そう言ってメフィストファレスは煙となり、何処かへ去って行った。



「ひゃーーーっほぉう! じゃあ俺は早速、この娘と楽しむとしますかねぇ? お前もどうだ…って、今日は女か」

「(どっちにしろ面倒くさい。動くの。オレ、蛇ちゃんと遊んでるから勝手にやってて)」

「ったく、つれねーな。まぁいいや。早速、まずは発情させて………」

「いや、いやっ……近づかないでください!」

「いやよいやよも好きの内ってな、いうじゃねぇか?」



 アスモデンスの雄牛の方の目が、カルアを睨みながら赤く光る。

 アスモデンスの能力だ。

 普通ならば相手の身体の下部が異常なほど火照るという変化が起こるが、何故かこの時は起きなかった。


 カルア姫の周りを薄い膜のようなものが囲っているのだ。それがどうやらアスモデンスの術を通していないようなのだ。



「チクショー! 防御壁を張ってやがる、なぐったら破れるのか? これ」



 そう言ってアスモデンスは力一杯にその膜を殴りつけるがビクともしない。



「くそっ! これただの防御壁じゃねぇぜ!? おい、アスタロード。これ破んの手伝えや」

「(やだ、ねむい、むり)」

「クソガッ」

「(というか、王族の姫なんだし、そういうの持っててもおかしくない。諦めろ。メフィストファレスさん帰ってくるまでまて)」

「チッ……。目の前にうまそうな餌ぶら下げられて我慢できる獣がいるかっての! 俺はこの壁をぶち破る。有毒怠け者はそこで見てろ」

「(有毒怠け者……か)」



 カルア姫はどこから自分をまもってくれている膜が出ているのか見当がついていた。


 おそらく、アリムちゃんがくれた装飾品からだろう…と。

 またしても自分は、アリムちゃんに不浄な者から護られているのだと実感する。


 今頃、皆んな寝ているのだろうか? それとも、自分が居なくなったことに気づいて動き出してるのだろうか?


 あの道化は自分のことを"生贄"と言っていた。

生贄ということはつまり、いつか殺されてしまうということ。死へのとてつもない恐怖心。

 自分はまた、友達に迷惑をかけてしまうのだろうか…そもそも、ここまで助けに来られるのだろうか?

 それにこの壁がいつまでもつかも、わからない。アリムちゃんが作った物だから長持ちはするだろうが……、もし壊れてしまったら?

 自分の純潔はどうなるのか。


 そう、彼女は思考を巡らせ、そして恐怖する。



「ひー! いいねぇ、その恐怖に歪んだ顔! 俺は玩具にする前の女のその顔が大好きなんだ! でもなぁ……んと、この膜邪魔だよなぁ……」



 一体、いつまでこの状況が続くのだろうか?

 

 カルア姫は、自分で脱出する方法がないか、恐怖心と戦いながら必死に考えてみる_________

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