閑話 バレンタイン

これは本来なら、2/14に投稿するはずだったものです。

ですが、2/14はカクヨム様はまだサイトがオープンしておらず、投稿はしませんでした。

故に、3/14のホワイトデーである今日、この話を投稿致します。

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 それはまた、ある日のこと________




 私はなぜかいつもより3時間も早く…朝の4時半に目が覚めてしまった。

 なんでだろ?


 私の可愛い恋人は、静かな寝息をたてながらぐっすりとねむっている。


 ふと、トズマホの画面を確認してみると、今日は2月14日、バレンタインデーだった。


 そうか、バレンタインか……。


 通りで早く起きちゃったわけね。

 身体が覚えちゃってるのかな?


 私が地球にいた頃、バレンタインの日は必ず朝早くに起きてたの。

 製菓用のチョコレートを溶かして、ハートの型に流し込んで、冷やして、文字を書いて______


 そういえば、私が一番最初にチョコレートを作ったのは、6歳の時だっけ。

 お母さんと一緒に手作りのチョコレートを作ったのを覚えてる。


 勿論、私が渡す相手は有夢だった。

 あと、有夢の弟の叶君にも渡してたかな。

 私のお父さんにも渡してたきがする。


 6歳から……9歳ぐらいまでは有夢のチョコだけに『大好き』って文字を書いて、あいつに渡してたんだけど、10歳から急に恥ずかしくなっちゃって…前のバレンタインでさえも、ただ固めて模様書いただけのチョコレートを渡してたの。


 勿論、6~9歳の時のチョコレートは本命チョコのつもりだったし……前までのチョコレートも『ほい、友チョコ』って言って渡してたけど……心の中では本命だったのよ?

 あ……愛情も……その…たっぷり入れてたつもりだったし………。


 それにしても有夢……なんか毎年私以外の誰かしらからチョコレート貰ってたんだよねー。

 特に中学1年生あたりからその量が増えててさ、去年には確か…8個だったっけ? 私のを含めないで。


 確かに、有夢はモテてた。

 ゲームにしか興味なかったくせに。

 無駄に顔がカッコ良かったから……本当に有夢がカッコ良いのは中身なのにね。


 で、毎回毎回全部ちゃんと食べきってはホワイトデーにお返ししてたの。

 有夢が自分でクッキー作ってさ。


 私だけお返しの量が他の子より多かったりしたのは覚えてる。

 なんで知ってるかって? あいつの家に進入して近くでつまみ食いしてたにきまってるじゃん。


 当時はなんで私だけ量が多いのかよくわかんなかったけど、今考えたら、わた……私のことす……好きだったのかなぁ…なんて……なんて…ね? あははー。


 そういえば、バレンタインデーのたんびに、有夢と私が一緒にいる時に、どこからともなく有夢の自称親友の"翔"って奴が現れて『結婚式の仲人は俺がやってやるからな!』とか言ってた。

 なんだったんだろう、あいつは。



 そんなことより、バレンタインならあれが一番印象に残ってるかな。

 アリムが校舎裏の目立たない場所で他クラスの女子にチョコレート渡されながら『好きです』って言われてたんだけど、有夢は『ごめん、好きな人が居るんだ』って断ってるのを偶然見たとき。


 あの時、私は『有夢に好きな人が居るんだ!?』って驚いたし、なんでかはわからないけど涙も流れてきたし、盗み聞きしてること気付かれないように走って逃げようとしたから膝を擦りむいちゃったし、数日間は有夢と話せなかったしで、散々なバレンタインデーだったなぁ………。

 

 あの時の心情としてはショックだったというより、あいつに好きな人が居たのに、私なんかがつきまとって迷惑じゃないかな?

 って気持ちだった気がする。



 それ、いつのバレンタインだっけ?


 ……あ、前のバレンタインだ。


 結局好きな人って誰だったん…の……私かな?

 やっぱり私なのかな?

 自惚れじゃない……よね?

 

 だよね、この世界でアリムに会った時、ずっと好きだったって…………。

 


 ーーっ……。


 

 そ…そ、そうだ!

 

 バレンタインだし! な、なにか作んないと!


 チョコレート作りたいけど、この世界に、ココアはあるのに、なぜかチョコレートがない。


 アリムに頼んだらスキルでなんとかしてくれそうだけど、『チョコレート作るからチョコ出して』なんて言えないじゃない。


 ……しょうがない、ココア味のクッキーかケーキにしようかな。


 とりあえず、ココアも小麦粉も何故か台所に一揃いしてるし、ココアのクッキーでいいよね?


 あ……愛情を…こ、こめたら…べっ、別にチョコレートじゃなくても構わないわよねっ!



 そんなわけで、私はココアクッキーを作ったの。

 ハート型にするのは少し恥ずかしかったかな……。

 大体毎年ハート型にするのに抵抗は少しあったんだけどね。

 

 そうそう、有夢ったら、いつもいつも渡したその場で食べて『今年も美味いよ』なんて言ってたのよね。

 あれはどんだけ恥ずかしかったか……。

 まぁ、美味しいって言ってもらえて、嬉しかったんだけど。


 と、そんなこと考えてる間に焼きあがったみたい。

 塩と砂糖間違えるとか、そんなありえないようなミスしてないか、一枚味見を…。


 うん、大丈夫!




 あ! もう7時。

 アリムが起きないうちに朝ごはん作らないとね。

 今日は何がいいかな?

 久しぶりに厚切りの食パンにバターをたっぷりつけた奴と、ゆで卵とスープでいいかな?


 クッキーは……お昼の2時14分に渡そう。


 

「おはよーミカー」

「おはよう! アリム」


 

 私のアリムが起きてきた。

 相変わらずあんまり寝癖がないキレイでさらっさらな髪をしてる。


 アリムは食卓の席に着く。



「いただきまーーすぅ」

「はい、召し上がれ」



 私たちは朝ごはんを食べ終わった後、特に何もないから、アリムはお仕事に行っちゃった。

 どうせ数分、かかっても1時間以内には帰ってくるけどね。


 最近冒険者らしいこと全くしてなかったし、私なんてまだ20回も依頼こなしてないし、いくら二人で一生遊んで暮らせるお金があったとしても、ときには仕事しないとね。


 いや、二人で一生遊んで……じゃなくても、もし子供ができたとしてもなんらお金には………。


 こ、子供なんて、少し気が早いよね、私達だってまだ子供なんだから!

 それに、 軽いキスと、お風呂に一緒に入ったのと、添い寝と、数時間ずっと抱きしめてもらうぐらいしかしてなくて、まだ口に舌も入れてないし……子供なんて話しが飛びすぎだったわ!



 一人で妄想して一人で顔を赤くしていたところ、アリムが帰ってきた。


 1時か…。


 昼食作らなきゃね。今日はパスタでいいかな。



「いただきます!」

「召し上がれ。アリム、どんな仕事してきたの?」

「ん? あぁ、焼暴牛っていうBランクのモンスターの討伐だよ」

「そうなの、お疲れ様」

「いや、疲れてないかなー、いつも通り一撃だったよ」



 そんな雑談しながらお昼も食べ終わっちゃった。



 そして迎えた14時、午後2時14分。


 私はメッセージでアリムを台所に呼び出す。



「どうしたの?」



 アリムがひょこっと顔をだす。



「いいから来て」

「うん?」


  

 アリムはトコトコと私のところに近づいてくる。



「あ、アリム……いや、有夢。これ……私の気持ちだから」



 そういって懐から私はクッキーを取り出して渡す。



「わぁ! どうしたのさ、コレ」



 私のクッキーを受け取ったアリムがそう聞いてくる。

 いや、肩幅が広がってるから、有夢に戻ったのか。



「今日は……2月14日だから……チョコレートのかわり…。本命よ、本命! じつは私が今まで有夢に渡したチョコ全部本命だけど、今年のは特に大本命よ!」

「あ……バレンタインデーか……ありがとう。そう…全部本命だったの」



 そう言いつつ、アリムは包み紙を開けてクッキーを一枚つかんで食べた。



「うん、いつも通り。とっても美味しい」



 そう、ニッコリと笑う。



「よかった!」

「うん、本当にありがとう。ホワイトデーお返しするね! きっとね!」

「楽しみにしてるわ」



 そうだ、今確認するのもいいかも知れない。



「ねえ有夢」

「なに? ミカ」

「去年さ、地球で私、偶然有夢が他クラスの女の子に告白されてたの聞いたの……でも有夢、『他に好きな人が居る』って言ってたじゃない? あれって誰だったの?」



 私は彼の顔をじいっと見る。



「あぁ、あれね。そういえばあの日のあと、妙に今までよりミカが俺と距離を置くから寂しかったなぁ……」



 そう言うや否や、彼は突然、私を思いっきり抱きしめる。



「好きなのはお前にきまってるだろ? 他に誰がいるのさ……。 って…言わせんなよ、恥ずかしいなぁ……」



 私は有夢を抱きしめ返し、こう言った。



「うん、知ってた…ありがと」

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