第107話 あいつはレベル上げの鬼

「うん、いってくるね」

「いってらっしゃい!」


 

 アイツは、有夢はマジックルームとかいうこの部屋から出て行った。



「はぁ……」



  私は思わず溜息をする。アイツがゲーム大好き人間というのは知ってたけど、ここまでとはね。

 今回の予定では600週だっけ? もう人間離れしてるんじゃないかな。


 私は、この世界、アナズムに来て、ラハンドさん達と出会って、そこからアリム……有夢に再開できた。これが3日前のこと。


 つい 、私はアイツに再会できた嬉しさに任せて告白しちゃったし。

 いや、好き…ううん、大好きなのは本当だけど。

 しかも今は同居してるし。……まぁ、地球でもほぼ同居みたいなものだったけどね。


 それにまさか、両思いだとは思わなかったなぁ…。

 あの時は私達二人共大泣きしたっけ。


 そしてなに? 見た目は私も変わってるから別にいいとして、アイテムマスターとか…実は女の子になれて、普段から女の子で過ごしてましたとか(ぶりっ子だし)…死んだ人生き返らせれますとか……正直驚き疲れちゃった。


 でも有夢と一緒に過ごしてから、アイツになんかしてもらってばっかりなの。

 今だってそう、私のために身体を張ってダンジョンに潜ってる。

 ん? いや、ダンジョンに潜ってるのは半分はアイツ自身のためよね。多分。


 私にできる事ってなにかな? アイツは側に居てくれたらいいとか、カッコつけたこと言ってたけど…。

 料理もアリムの方が上手だし…私はアイテムマスターみたいにチートスキル持ってないし。

 あ、それはこれからか。


 うーん、どうしよ? こう、女の特権をフル活用する? …それはダメね。アリムだって女だし。身体も中1ぐらいしかないし。

 第一、恥ずかしいよ…。私、アイツのホッペにキスしただけであの日は全く眠れなかったんだから。



 それに今日、アイツは忙しいのにデートの約束ま無理矢理頼んじゃって。

 愛想つかれたりしないかなぁ…大丈夫かなぁ…?

 ワガママだとか思われてないよね?


 仮に、アイツが私を見限って、別の女の子と一緒に…いや、アリムは女の子でもあるから、『別の誰か』のほうが合ってるか。


 別の誰かと一緒に私を差し置いて、アイツがイチャイチャしてたら私、耐えられるかな?

 無理、絶対に。そんなの想像もしたくない。


 あぁ…有夢ぅ…。


 ……って、こんなのじゃダメよね。私。


 とにかく、私には今は、おとなしく待って邪魔しないようにするか、お料理作るしかないんだから!

 


 私は料理を作る時間までひたすら本を読むの。

 たまーに、ふと貯まっている経験値をみる。すごいスピードで増えていく。

 これ、一周に5分もかかってないんじゃないの!? 10分とか言ってたけどさ。


 もしかしたら1000週とかするんじゃない?

 一体何回転生するつもりよ。


 今、読んでるのは、この世界の悪魔について。そういうオカルト的なのが好きなんじゃなくて、偶々目に入ったから読んでるんだけどね。


 昔、悪魔の神様の『サマイエル』ってのがいて、まあ、ゲームでいう魔王てきな存在だったんだってね。

 それを、教会から指定された勇者が仲間とともに、勇者の剣で封印したんだって話。


 この世界の悪魔って魔物と同じみたい。言葉とか喋れる個体が多いけど、殺したら肉体は消滅して、数個の魔核を落とすんだって。

 こういう記録が残ってるってことはこれ、実話かしら?


 …っと、こんなことしてたらもう6時なの?

 アイツが出てったのは1時だったはず。本は時間、結構潰せるね。


 私はご飯をつくった。今日は糸こんにゃく無しの肉じゃがと焼き魚。そしてうどん。

 本当はお米があったら良かったんだけどね。


 さて、そろそろ呼ぼうかな? 私は有夢にメッセージを送った。



【うん! わかった。今丁度終わったから行くね!】


 

 1分後、彼は戻ってきた。



「わー! 美味しそう。いただきます」

「ふふ、よかった。いただきます」


 

 私達二人はご飯を食べる。今日の肉じゃがとっても美味しい。

 有夢も喜んで食べてくれてる。

 有夢が『おいしい』って言って、私の料理を食べてくれるのは私にとって、本当に幸せ。


 その顔が超美少女なのがなんか、複雑だけどね。


 私と有夢はご飯を食べ終わる。

 あぁ、また行っちゃうのかしら。


 少し寂しいけど、仕方ないか。

 

 そう思ってたんだけど、突然、彼は私の隣に来て、手を握って肩を寄せてこう言ったの。



「30分ぐらい、このままでいい?」



 そう言ったの。



 ……私は有夢もアリムも好き。


 それは見た目がいいから…だけじゃない。私の気持ちを知ってか知らずかわからないけど、優しいところが大好きなんだ。


 私はこう返事した。



「うん」

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