エピローグ
第102話 エピローグ 01
◆
「信じられねえ……」
ブラッドが倒された後、放送を中断したテレビに向かって、ヨモツは呆けた声を放つ。
「っていうかありゃなんだ!? 完全に勝ったはずだろ!?」
「そうですね。あれは不可思議でしたね。完全にブラッド元帥の攻撃は相手にトドメを差すものでした。ですが――」
コンテニューが首を横に振る。
「直前でその動作が止まったように見えました」
「うん。それめっちゃおかしいよねー」
その言葉と共に一人の女性が入室してくる。
セイレンだった。
彼女はいつもの白衣のまま、ひょうひょうとした態度で語る。
「まだ調べていないけど、あたしのジャスティスが直前で不具合起こしたかと思っていたんだけど、そういうわけじゃなさそうだしねー」
「何しに来やがった、セイレン?」
「あたしが来たのが不満かいー? っつーか機嫌悪いねーヨモツ。まさかあんた、ブラッドのことを好きだったとか言わないわよねー?」
「ちっ。そんなんじゃねえに決まってんだろ。ただ納得してねえだけだ」
ヨモツは吐き捨てるように告げる。
「あのおっさんは元帥だ。しかもアリエッタとは違って実践派の元帥だ。そんなのがジャスティス戦で負けるってことが信じられないんだよ」
「んー、そりゃそうだよねー。あたしゃ信じられないよー。中で爆発でもしたんかと思ったけど、ちらっと映ったブラッドは四肢無事だったしねー」
「つまりはきちんとジャスティスの破壊によって死んだということですか?」
「そうそうー。様子も普通にジャスティス壊された時に死んだ感じだったねー」
「じゃあ何でおっさんは死んだんだよ!」
ヨモツの問いにセイレンは「さあねー」と肩を竦める。
「単純に相手が強かったんじゃないのー? もしくは慢心―? 本人じゃないとわっかんないやー」
「んだと!?」
「じゃああんたには分かるのー? 何で鈍ったのかってー?」
「くっ……分かんねえから聞いてんだろうが!」
「じゃああたしも分かんないって答えるしかないねー。本当に分かんないしー」
あはははとセイレンは笑う。
ブラッドが倒されたのに、どこか呑気な様子だ。
と。
「あ、そうそう。忘れてたよー」
彼女は手をポンと一つ叩く。
「あたしゃブラッドって馬鹿だねえって言いに来たんだったわー」
「……本当に何しに来たんだよ、セイレン」
怒りを通り越して呆れに変わったヨモツに、セイレンはんふふと笑う。
「言いたかっただけよー。ブラッドも最後に脅せば、逆に相手の動きが鈍ったはずなのにねえ、ってー」
「それは人質を殺すぞ、ということですか?」
「んー、コンテニューちゃん。合ってそうで間違っているね、それー」
「では、どういうことでしょうか?」
「んー、正解はこちらだよー」
指をぱちんと鳴らして声色を作り、セイレンは告げる。
「このジャスティスを倒すと―― 一緒に人質も死ぬぞ」
「……それは文字通りの意味なのですね」
コンテニューは首を縦に動かした。ヨモツも理解しながらも納得できないような苦い顔になる。
セイレンは満足そうに続ける。
「そうだよそうだよー。そもそも何でジャスティスが壊された時に操縦者の命を奪うかって考えてみれば分かるじゃーん」
「深く考えていませんでしたが、そういうことだったのですか」
「そういうことだよー。ジャスティスは命を動力とするロボットなんだからさー」
セイレンは無邪気な顔で残酷な言葉を口にする。
「人一人や二人の命だけで修繕出来る訳ないじゃーん。だからジャスティスは壊れたままだしー、コクピット内にいる人間は全員生命力を吸い取られて死ぬんじゃなーい」
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