第307話 決戦 18
「早すぎるだろう……」
あまりにも救いのない展開に、思わずカズマはそう言葉を零してしまった。
ルード国のジャスティスを破壊した跡からこちらの居場所は割り出されるのは分かっていたが、その点にすぐに気が付いて行動をしなければここまで早くは辿り着かない。
きっとパイロットは頭のよい人物が乗っているのであろう――なんて現実逃避をしている場合ではない。
終わりだ。
こちらから見えているということは、相手からも見えているということだ。
あと数秒もしない内に破壊されるだろう。
「動け……動いてくれ……っ!」
操縦桿を前後させるが、びくともしない。動かなくなる直前に押そうとしていたボタンも、何度も押下しても反応はない。
完全に積んだ状態である。
覚悟は出来ていない。
全く出来ていない。
「……どうする……離脱……いや、駄目で……でも……」
ジャスティスを動かせなくなるだけで、これ程まで混乱するとは思わなかった。
昔はジャスティスなんて当然所持していなかったのに、いつのまにやらそれがないといけないようになっている。戦力という面もあるが、昔の自分はどうやって生きていたのか、考えられないようにもなっている。
ハッキリと自覚した。
ジャスティスに頼り切りで、自分は何にも力が無い。
それなのに自分が助けられるなんておこがましいことを考えていた。
だからこの場から離脱しよう。
昔の、ただのカズマに戻るだけ――
――なんて考えは、最初から無かった。
「……足掻けっ!」
カズマは自分を叱咤する。
逃げ道はもうない。
心にも逃げ道は作らない。
――今出来ることをしろ。
カズマは周囲のスイッチを構わず押した。何か反応してそこから活路が見いだせないかを探した。しかしながら、どれを押しても反応はない。
足掻いて。
もがいて。
道を模索する。
それは、自分が生きる道ではない。
探しているのは彼女を――ミューズを助けられる道だ。
『――助けてください!』
と。
そこで響いた声。
それは意外な所からだった。
というよりも頭から抜けていた。
『僕は貴方に攻撃しません! だから破壊しないでください!』
その声はカズマの真横にいるジャスティスから。
つまりこれは――ピエールが命乞いをする声であった。
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