第246話 開発 11
◆
中から悲鳴が聞こえた。
入っていた少女の悲鳴だ。
文字通りの悲しい鳴き声、いや――泣き声。
それが数秒ほど響き。
そして――完全に聞こえなくなった。
「……」
静寂が場を支配する。
これだけの人数がいるのに誰一人として声を発しない。衣擦れの音すら――更には息をするのも躊躇われるような空間になっていた。
そんな中で、
『あらー、やっぱり駄目だったのねー』
セイレンがひどく軽くそう言い放つ。
『まー仕方ないわねー。電源切っちゃっ――』
――その時だった。
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォッ!!
誰もが目を疑った。
耳も疑った。
マリーが乗っていた緑色のジャスティスが突然両手を広げ、天に向けて咆哮した。
咆哮。
ジャスティスは二足歩行型兵器だ。意志を持って話すなどもってのほかだ。
かといって明らかに少女の声ではない。
ではこれはなんなんだ?
そんな唖然とする面々の前で、緑色のジャスティスは唸り声をあげると――
ガシャン。
あっという間に二足歩行型兵器から四足歩行へと姿を変えていた。
四つ足の獣。
今まで見たことが無いジャスティスがそこにいた。
――が。
ガクリ、と。
まるで電源を切られたかのように、唐突に緑色のジャスティスは動きを止めた。
『――素晴らしい! 素晴らしいわ!』
セイレンの喜びに満ちた声が響く。
『どれくらい暴れられるかまで見たかったけど、もう一機あるからここまでにするには本当に惜しいわね。まさか変形まで行くとは思っていなかったわ。――いやー、満足満足ー』
パチパチパチ、と。
拍手はスピーカー越しに聞こえた。
セイレンが手を叩いているのだろう。
その理由はただ一つ。
『マリー・ミュートさんはパイロット適性ありで合格ー。おめでとうー』
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