外伝 戦場 02

「……」


 目の前に二足歩行型ロボットが突然現れたというのに、少年はひどく落ち着いた様子で見返していた。その碧色の瞳には驚きも動揺も何も浮かんでいない。

 じっ、と。

 微動だにせずそのジャスティスを観察するように眺めていた。


『何だ? まだ子供が残っていたのか?』


 ジャスティスから意外だという声が聞こえてくる。

 その言語で相手がどの国の人間か分かった。


 あれはルード語だ。

 故に目の前の相手はルード国の人間。

 この村を襲撃したのはルード国ということだった。


 それを理解した少年は、ゆっくりとジャスティスの顔面部へと視線を移す。


『って、金髪で碧い目って……おいおい。この村の人間じゃねえじゃねえか! まずいぞ、おい!』


 焦った声が響く。

 同時にコンテニューはその場にしゃがみ込む。


『お、おい! 大丈夫か!?』


 ジャスティスのコクピットが開き、慌てた様子でパイロットが降りて近寄ってくる。白衣を着た肌の色が薄い中年であった。

 きっとこの村の住人とコンテニューは見た目などが大きく異なっているのだろう。

 だからこそ安易に降りてしまったのだろう。

 そして彼に近づいてしまったのだろう。


 それが致命的だ。

 


「え……」


 中年男性の首元から鮮血の花が咲く。

 白衣が一気に赤に染まっていき、彼は地に膝を付け、そのまま倒れた。

 一方でその返り血を浴びた少年は平然とした様子で首を勢いよく横に振り、髪に付着した血をある程度飛び散らすことが出来た。

 それでも金の髪は鮮やかな紅に濡れ、滴り落ちる。


 理由はただ一つ。


 中年男性の首を掻っ切ったのは、少年が持つ鏡の欠片だったからだ。

 先程しゃがみ込んだ時に密かに拾っていたのだが、それを少年は何の躊躇もなく切っ先を突き立てていた。

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