第7話 夜中に聞こえた○○○
その日の夜は、病院で眠ったからか、なかなか寝付けなかった。
窓から見える星空をぼんやりと眺めたり、合い掛け布団を抱き枕の代わりに抱きしめてベッドの上で丸くなったりしているうちに、時計の針は午前2時を過ぎている。
カチカチカチという時計の針の音が、規則正しく聞こえる。
まあ、学校は休むことになりそうだし、別にいいんだけど。
ここは開き直って、昼間佳帆が言っていたゲームでも落としてみようかな。
そう思って、スマホのロックを解除する。
日本の神様のマスコットを集めるゲーム、だっけ?
「そういえば裏の神社の神様の名前は、なんていったっけ……」
聞いたことはあるはずなのに、ど忘れしてしまった。
こんなことを言ってはいけないのかもしれないけれど、日本の神様の名前は長かったり似てたりして、覚えるのが難しいような気がする。
神社の中には他にも摂社や末社があって、翔汰を封じたのはその摂社の神様のうちの誰かだったはずだけれど、そちらもやっぱり名前が思い出せない。
そのうち、お兄ちゃんか翔汰にでも確認してみよう。
とりあえず、ゲームをするならアプリを入れられるだけの容量を空けるところから始めないといけない。
もう使わないアプリを、どんどん削除する。
――カタリ。
「え?」
ふいに、廊下のほうから音が聞こえたような気がして、わたしは部屋のドアを見る。
耳をすますけれど、家の中はしんと静まり返っていて、わたし以外に誰か起きている気配はない。
お母さんもお父さんも早寝早起きだから、毎晩22時ごろには寝入っているはず。
「気のせい……?」
何も聞こえないことにほっとして再びスマホに向かったところで、ドサリ、と壁の向こう側から音が聞こえた。
びくっ、と体が強張る。
気のせいじゃない。
「お母さん……?」
ベッドから下りて、恐るおそる呼びかけるけれど、返事はない。物音もしない。
どういうこと――?
お母さんなら、返事をしてくれるはず。
ぞわり、と悪寒が背筋を這い上がる。
壁の向こう側の廊下に、誰かがいる――?
誰もいないはず。いるわけがない。
こんな時間だし、戸締りはお母さんがちゃんと毎日確認してから寝ている。
それなのに、なにかがこちらの様子を窺っている――?
「いや……」
部屋のドアに鍵はかけていない。そんな必要はないからだ。
けれど、今ほどそれを後悔したことはない。
鍵をかけたい。けれどドアに近づきたくない。
嫌だ。どうしたら――。
恐怖で体が動かない。
何もできない。
そんなわたしを追い詰めるように、音もなく、ドアノブが動く。
ゆっくりと、ゆっくりとまわる。
恐怖に、腰から力が抜ける。
カーペットの上にへたりこんだわたしは、ドアノブを凝視することしかできない。
いや、やめて!
声にならない悲鳴を上げる。
けれどドアノブはまわり続ける。
そして――。
ギギィ。
と。
蝶番が鳴った。
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