ユピティック・ペーパーズ《木星文書》⑧〈太陽系の建設者《コンストラクター》〉

 ここから先の経緯は、すでに多くの方々が知っている情報であることと思う。

 〈じんりゅう〉は、回収していた木星オリジナルUVDを、実体弾代わりにグォイド・スフィア弾ぶつけることでこれの破壊に成功し、人類を窮地から救った。

 だが、これで全てが解決したわけでは無かった。

 〈じんりゅう〉はグォイド・スフィア弾の目論見を阻止したかわりに二つの代価を支払わねばならなかったのだ。


 一つは、木星オリジナルUVDを実体弾代わりに放ってしまったことだ。

 この作戦は、オリジナルUVDの回収は最初から考えられていなかった。

 グォイド・スフィア弾に放たれ、これを破壊、貫通したオリジナルUVDは、グォイド・スフィア弾の進行方向と、オリジナルUVDが命中したコースの中間のコースへと、3割ほど減速した状態で飛び去って行った。

 これを回収する術は、グォイド・スフィア弾の側面ギリギリを通過して、推力をカットして慣性航行となった〈じんりゅう〉には、事実上不可能であった。

 ベクトルが違いすぎたからだ。

 だが、だからといって一基あるだけで人類とグォイドとの戦のパワーバランスを壊しかねないオリジナルUVDを、そのまま放置するのは危険過ぎた。

 万が一とはいえ、野良グォイドにでも回収された一大事だ。

 だが、この問題はご存知のように、すぐに解決した。

 人類の新たな希望にして、VS艦隊の最新鋭艦VS‐806〈ウィーウィルメック〉の活躍によってである。



 大々的に行われた建造国〈ステイツ〉の発表によれば、VS‐806〈ウィーウィルメック〉は、現在〈ステイツ〉によって建設中の、金星軌道上の人造UVDプラントに併設された航宙艦建造施設にて建造された。

 そして新たに選出されたクルーの元、当時金星圏にて完熟航行訓練中であった。

 偶然にも水星を狙うグォイド・スフィア弾を阻止するのに絶好の場所にいたことが、この艦に華々しいデビューをもたらすこととなったのだ。

 〈じんりゅう〉級の最新鋭艦である〈ウィーウィルメック〉は、最新である分、あらゆる点で旧来の〈じんりゅう〉級よりアップグレードが図られており、オリジナルUVDの搭載を除けば、カタログスペック上ではあらゆる点において【ケレス沖会戦】後の改修されたVS‐802〈じんりゅう〉と同等以上の性能を有しているとされている。

 特に前後に伸長された船体は、加減速力に優れ、【ANESYS】を起動しつつ、単独で敵集団に突撃するという初代〈じんりゅう〉以来の戦術を、より優れた形で実行可能ということであった。

 〈ウィーウィルメック〉はグォイド・スフィア弾による水星の破壊の危機を知り次第、その加速性能を利用し、ただちにこれを迎撃に向かったのである。

 元々、使い捨てブースターを用いた突撃を基本戦術に想定しており、そのブースターもまた、テスト直前であった為に即時の使用が可能であったことが、〈ウィーウィルメック〉にとっての幸運であった。

 もっとも、〈ウィーウィルメック〉の主目的であったグォイド・スフィア弾の迎撃は、〈じんりゅう〉が先に達成してしまったわけであるが……。

 その代わり、彼女達は水星を襲わんとするレギオン・グォイドの残党艦を瞬く間に殲滅し、水星の人造UVDプラントを救った上に、これでもかというほど宣伝されているように、木星オリジナルUVDの回収と換装に成功した。

 こうして、とりあえず〈じんりゅう〉の無茶苦茶な戦術によって、発見回収に成功した途端に喪失しかけていた木星オリジナルUVDの問題は解決したのであった。



※(〈ウィーウィルメック〉に関する記述は、あくまで同艦を建造した〈ステイツ〉の公式発表と、同艦や〈じんりゅう〉が撮影した映像記録を元にしたものである。

 建造国である〈ステイツ〉が、土星圏グォイド本拠地攻撃作戦(あるいはタイタン侵攻作戦)の失敗以来、航宙艦建造情報を秘匿する傾向にあった為、これまでSSDFの航宙士を含む多くの人間に、その存在をこれまで知られることがなかったわけだが、その理由についての説明は、『発表できる段階になかった』からだそうである。

 この回答で納得できるかは、個々人の判断に任せることとする。

 また、偶然では説明がつかないレベルで〈ウィーウィルメック〉が、グォイド・スフィア弾と〈じんりゅう〉との戦闘直後に駆け付け、元から用意したとしか思えないほど速やかに木星オリジナルUVDを回収し、あまつさえ主機関に換装た件については、まだ説明されていない情報があるとする説がある。

 〈ウィーウィルメック〉そのものについても、新たなグォイド土星本拠地攻撃作戦用に開発されたとう説があり、その為の大加速性能であり、さらに量産が開始されているという未確認情報も存在する)




 問題は、もう一つの代価たる〈じんりゅう〉の身に起きたことの方であった。

 オリジナルUVD二基分の加速力をもってして木星オリジナルUVDをぶつけることで、グォイド・スフィア弾を破壊できるだけの速度を出した〈じんりゅう〉は、もうそう簡単には減速・静止はできない存在となっていた。

 仮にすぐさま〈じんりゅう〉独力の全推力で減速を試みた場合、それまでの速度を完全にキャンセルできるのは、メインベルトを越え、木星公転軌道のさらに外側まで行ってからになることが、グォイド・スフィア弾破壊後の計算で分かっていた。

 問題だったのはそれだけではない。

 一番厄介であったのは、〈じんりゅう〉が偶然にも土星方向へと向かっていたことだった。

 ただちに減速を開始するプランでいけば、〈じんりゅう〉はグォイドの本拠地たる土星圏の目の前で減速を終え、あらためて内太陽系人類圏へ向け、加速を開始することになる。

 当然、制宙圏のど真ん中で、盛大に減速噴射の光を放って静止した〈じんりゅう〉を、土星圏のグォイドが座視するとは思えなかった。

 無視できぬ高い確率で、グォイド本拠地を守る防衛部隊に〈じんりゅう〉は捕捉され、攻撃を受けることになるだろう。

 それも〈じんりゅう一隻に対し、大多数のグォイド艦をもってしてだ。

 そうなった場合、〈じんりゅう〉が無事帰還できる確率は限りなくゼロに近かった。

 ゆえに、VS艦隊司令であるテューラ大佐は、すぐにもう一つの選択肢を〈じんりゅう〉クルーに提示し、判断を任せた。




 それはすぐに減速を開始し、土星圏手前でようやく停止、反転するのを諦め、むしろ減速せずに慣性航行を続けることで、加減速噴射光を発しないことによって、敵からの被発見を回避しつつ土星圏グォイド本拠地へ接近。

 これを偵察し、土星をフライバイして内太陽系人類圏への帰還の途につくというものであった。

 当然ながら、いくら加減速噴射光を発しないゆえに、被発見率が低いからといって、グォイドの本拠地で万が一にでも見つかれば、間違いなくグォイドの本拠地防衛部隊によって〈じんりゅう〉は撃沈されるだろう。

 それどころか〈じんりゅう〉搭載のオリジナルUVDを、敵本拠地に進んで届けることになりかねない選択肢であった。

 しかし、この選択肢の方が、発見さえされなければ〈じんりゅう〉が敵制宙権内に滞在する時間は短く、また上手くすればほぼ初めてと言って良いグォイド本拠地の情報を、持ち帰ることができる可能性があった。

 判断は〈じんりゅう〉クルーに任されたが、答えはすぐにでた。

 〈じんりゅう〉はただちに減速はせず、慣性航行による土星圏グォイド本拠地のフライバイ偵察する道を選んだ。

 それが今、その成功の可否が世間で論争となっている〈サートゥルヌス計画〉である。






 そこから先は、この文章を読んでいるであろう方々が知る通りである。

 本文章を記してる時点で、〈じんりゅう〉とそのクルーはどうなったのか? どうしているのか? サートゥルヌス計画の可否については、本文章の目的ではなく、また筆者にとっても不明であるため、書くことはできない。

 むしろ、この文章が読まれている段階で、〈じんりゅう〉に関する答えの全てが出ている可能性もある。








 ……ともあれ、ここまでがメルクリウス作戦に至るまでに、我々人類が木星で遭遇した出来事のあらましである。

 もっと簡潔に書くつもりであったにも関わらず、長文になったことをお詫びしたい。



 しかしながら、筆者たる私がこの文章で伝えたかったことは、まだ全てではない。

 当時、我々は次々と起こる新しい事態に対応するのに精一杯であり、木星で起きたことが、人類にとっていったいどんな意味を持つのか、考える余裕など無かった。

 だから今、こうして改めて文章化することで、今一度見つめ直してみようと思ったのである。

 この文章で、初めて木星でおきた事態を知ったという方にも、聞き捨てならないワードが散見されたことと思う。

 ここまで書き上げた文章に間違いなければ、人類はその創生にかかわる重大な事実を、今ようやく知ったことになるのだから……。





 これまでは我々が遭遇した時系列準に、起きた事象を書き記した。

 では今度は、太陽系全体でみた場合の時系列で考察してみようと思う。




・138億年前――宇宙誕生。


・46億年前――原始太陽系の誕生。


・38億年(±3億年)前――原始生命(バクテリア等)の誕生。


・20億年前――木星へオリジナルUVDと【ザ・トーラス】を形成する巨大リング状物体が到来。

 その活動により、太陽系の各惑星が現在の軌道になる(サティの証言による)。


・1億年前――恐竜の全盛期。


・6550万年前――恐竜の絶滅。


・370万年前――原始人類の誕生。


・西暦1968年――人類初の有人宇宙飛行。


・西暦1969年――人類月着陸を果たす。


・西暦21××年中期――UDOの初観測。


・西暦21××年後期――UDOの襲来と人類による迎撃。


・西暦21××年末期――土星圏よりのグォイドの大規模侵攻始まる。


・西暦22××年初頭――人類、第四次グォイド大規模侵攻迎撃に辛くも成功するものの、オリジナルUVDを搭載した初代〈じんりゅう〉とその艦長、秋津島レイカ中佐を失う。

 同年、木星軌道エレベーター〈ファウンテン〉倒壊。同施設にて木星オリジナルUVDより採取した起源グォイド細胞より培養・育成したクラウディアンが廃棄される。

 木星大赤斑が赤道へと移動を開始したのも同時期と考えられる。


・西暦22××年初頭――人類、第五次グォイド大規模侵攻迎撃に成功す。

 それより約半年後、木星にてグォイドの【ザ・トーラス】を用いたグォイド・スフィア弾による内太陽系攻撃が企てられ、人類、苦戦の末にこれを阻止する。





 わざわざ年表にするまでもなく明白なことなのかもしれないが、それでも太陽系史の20億年前に木星に【ザ・トーラス】が形成され、必然的に惑星間レールガンとして活動したことが事実ならば、筆舌に尽くし難い程に重大な事件であることが分かるはずだ。

 なぜならば、20億年前の木星での【ザ・トーラス】活動後の太陽系史が、全て【ザ・トーラス】を生み出した存在……〈じんりゅう〉クルーの呼ぶところの〈太陽系の建設者コンストラクター〉の思惑によるものである可能性があるからだ。


 20世紀の昔、人類の間でインテリジェント・デザイン仮説なるものが唱えられたことがった。

 これは、誤解を恐れずに説明するならば、天文学的確率の果てに誕生し、進化してきた人類をはじめとした生命の存在は、自然と偶然の産物ではなく、何者かの意図的介在によるものだとする説である。

 具体的に例えるならば、いわゆる宇宙人の類が太古の地球に来訪し、人類の先祖に対し、進化を促すよう遺伝子を調整したから今の人類に進化したのだ……などと言ったものだ。

 この仮説は今も根強く唱えられてはいるが、証明がほぼ不可能であるため、当然ながら仮説の域は出てはいない。

 それに、自然の摂理は意外とテクニシャンであることが、これまでの研究で分かってきてもいた。

 インテリジェント・デザイン仮説は、誤解を恐れずに言えば“神”もしくは“創造主”の存在を、宗教的しがらみを排して論理的に証明を試みたものであると言えた。

 が、今回の木星の一件で、想像もしなかった形と規模で、今我々が存在する理由の一端が明かされてしまった……ようなのだ。

 ……“ようなのだ”と書いたのは、確証があるわけでは無く、あくまでもその可能性が今この時に初めて見出されたに過ぎないからだが、無視するわけにもいかなかった。

 ……グォイドと主の存亡を懸けて戦っている時は特に。



 なるべく論理的に語る所存ではあるが、同時に完全な私見であることも留意の上、ここから先の私の仮説を読んで頂きたい。



 およそ20億年前に、木星が【ザ・トーラス】によって惑星間レールガンと化し、太陽系を現在の姿にしたのならば、それにはどんな目的があったのだろうか?

 あらゆる可能性があるであろうが、少なくとも、【ザ・トーラス】の介入がなければ、現在の太陽系の惑星配置、つまりは太陽から丁度良い距離に、適度に環境に周期的変動を与える衛星を持ち、適度な公転周期と自転周期があり、構成素材に生命の誕生と進化に必要な物質を豊富に含んだ地球があった……という状態では無かった可能性がある。

 少なくとも、ランダムな自然現象で、その条件が全てそろっている可能性はおそろしく低いはずだ。

 それを現在のような太陽系の状態に【ザ・トーラス】が調整したのならば、そのことから【ザ・トーラス】を差し向けた〈太陽系の建設者コンストラクター〉の目的を、逆説的に推測することはできないであろうか。


 つまり、回りくどい言い方を止めて結論を述べるならば、〈太陽系の建設者コンストラクター〉は人類を誕生させる為に、太陽系の惑星配置を調整したのではないか? という仮説が成り立つはずである。

 一体何のために? と問われたならば、そこまでは分からない。

 また、もしこの仮説通りだとするならば、手段が可能なテクノロジーレベルに対してあまりにも迂遠過ぎる。

 地球原生生物の遺伝子をいじくった方がはるかに早い。

 仮に目的が人類の誕生であったとしても、その動機と手段の選択の理由があまりにも不明だ。

 だからこの仮説はあくまで仮説にすぎない。

 あくまでこれは、辻褄が一応は合う可能性の一つにすぎない。

 人類の誕生に必要なさまざまな条件が、天文学的な確率で奇跡的にそろっていた……というこの仮説の前提も、人類が人類となったからこそ必要性があると勝手に錯覚しただけかもしれない。

 他の条件下でも、人類が誕生していた可能性はある。

 〈太陽系の建設者コンストラクター〉は人類など眼中になく、ただまったく別の目的の副産物として、たまたま人類が誕生しただけなのかもしれない。


 いずれにせよ結論を急ぐのは危険である。

 だが同時に、今回の木星の事件を通じて得た情報を精査し、可能性を検証する必要はあるはずだ。

 なぜならば、〈太陽系の建設者コンストラクター〉の行いが、グォイドの太陽系襲来と無関係とは考えられないからだ。




 〈じんりゅう〉より送られてきたサティ誕生に関する情報の中に、興味深いものがあった。

 木星オリジナルUVDから採取した起源グォイド細胞を元に、不定形知的生命体サティを生み出したスィン・ヌニエル博士(以後ドクター・スィン)によれば――――


 オリジナルUVDはグォイドの動力源として、宇宙を移動し、結果太陽系に訪れた。

 だが実際のところは、オリジナルUVDが先に存在し、オリジナルUVDが宇宙を旅しているところにグォイドの先祖にあたる存在が寄生……あるいは相乗りし、長い時を経て現在のグォイドにまで進化した……というのだ。


 サティが起源グォイド細胞なるものから生み出されたにも関わらず、グォイドとはまったく違う存在となったのは、そういった事情かららしい。

 ともあれ、ドクター・スィンの仮設は大変興味深いものであることは間違いない。

 もしドクター・スィンの仮設通りならば、少なくとも20億年以上前に、グォイドの先祖は〈太陽系の建設者コンストラクター〉と遭遇したことになる。

 それが人類にとってどんな意味を持つのか……残念ながら私には答えを出すことはできない。

 言えるのは、このグォイドとの先の見えない戦いに、人類が勝利する鍵があるとしたならば、それは〈太陽系の建設者コンストラクター〉の存在が鍵となるであろう……ということだけだ。

 それが、長々とこの文章を書いてきた最大の理由だ。

 木星で何がおき、それが人類にとってどんな意味があるのか……

どうかこの文章を読んだ方々にも、私と一緒に考えていただけたら幸いである。



※(そしてもう一つ気になる点がある。

 今から五年と半年前の第四次グォイド大規模侵攻迎撃戦時に、今回の事件の発端と言える大赤斑の移動が始まったことだ。

 それはつまり、大赤斑直下で木星オリジナルUVDが再起動し、木星に【ザ・トーラス】を形成する為のUVエネルギーの充填、20億年ぶりに開始されたのだと思われる。

 なぜこのタイミングだったのだろうか?

 普通に考えるならば、同時期になんらかの切っ掛けがあり、それは始まったのだと考えるべきなのだろう。

 が、第五次グォイド大規模侵攻当時は、初代〈じんりゅう〉の戦没をはじめ、多くの出来事があり、いったいどれが大赤斑移動のトリガーとなったのか? そもそもトリガーがあって始まったことなのか? 決定的な論拠のある仮設はない)




 最後に――。

 この文章を書き上げた現時点で、〈じんりゅう〉の土星最接近予定時刻から四日が経過し、我々は必死に土星圏を観測し続けてはいるが、未だ〈サートゥルヌス計画〉中の〈じんりゅう〉からの通信、およびその無事な姿は観測されていない。

 そしてメインベルト外縁部、SSDFグォイド本拠地監視部隊からの観測データを分析した結果、〈じんりゅう〉の土星圏最接近予定時刻の少し後に、土星の影でごく淡い光が発せられたことが分かった。

 光の発生源が土星の影である為、内太陽系側からでは本来であれば観測はまったく不可能なはずであったのだが、土星圏再外縁部にある何かに光が反射した為、機械による画像分析を繰り返した結果、その光の発生を知ることができたのであった。

 この事実において、留意すべき点が二つある。

 まず観測された光が、いったい何による光なのか?だ。

 だがこれに関しては、80%以上の確率で、人類製人造UVDの爆発光であることが分かっていた。

 この事実から、早くも〈じんりゅう〉が撃沈されたのだと結論づけ、VS艦隊司令であるテューラ大佐への責任追及論が上がっている。

 個人的には〈じんりゅう〉が撃沈されたと結論づけるのは早計だとは思うものの、この観測情報からそのような推論に向かうこともまた不可避だとも思っている。

 問題なのは土星圏外縁部の存在し、土星の影で発生した光を反射した“何か”とは何か? だ。

 “何か”が何かは当然分かってはいない。

 だがそれは画像で見るかぎり、光の反射面積から見て土星直径よりもはるかに巨大なことが分かっていた。

 一個人として、〈じんりゅう〉のことはもちろん心から心配である。と同時に、今でも彼女達の帰還を信じている。

 だが同時に、私はこの“何か”について、グォイドの新たな企み、もしくは〈太陽系の建設者コンストラクター〉の存在を感じずにはいられないのであった。



 これから土星圏で起きる何かが、この文章で長々と書いた仮説を一瞬で無にする時がくるかもしれない。

 その時はどうかお許しいただきたい。

 せめてこの文章のごく一部でも、今後の人類のグォイドからの危機に対する一助になれば幸いである。

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