▼第三章  『ダーク・タワー』 ♯1

『ケ~イジさ~ん! 起きてくださ~い! 起きる時間ですよぉ~』


 体全体を包む生温かいブヨブヨしたものに揺さぶられ、ケイジは目を覚ました。


『おはようございますケイジさん』


 寝ぼけ眼で瞼を上げると、四つん這いになって覆いかぶさるスタイル抜群の女性顔が目の前にあった。

 一瞬、ついさっきまで見ていた夢の中で戦っていた女性ひとかと思った。

 ――が、違った。

 目の焦点が合うと同時に、自分を上から見下ろしていた女性の顔が、出来そこないのマネキンみたいというか、ぬっぺらぼうみたいというか、明らかにディティールが足りない偽物であり、しかもそれがじわりと半透明の水色のスライム状に変化し、でろりと崩れはじめたからだ。


「ひぃぃぃぃいいいぃぃい~!!」


 当然のごとく悲鳴を上げのけぞるケイジ。


『あああごめんなさいケイジさん! 驚かせてしまいましたかぁ?』

「……お……お……おおおお………」


 目覚めるなり、心臓が口から飛び出るかと思ったケイジは、しばらく返事どころでは無かった。


『ワタクシもクルーの皆さんの姿を模すことに挑戦してみたのですが、どうもまだまだみたいですね…………人間の方々はワタクシにはちょっと小さすぎで細かすぎです……』

「おおおう……サティぃぃ……」


 サティの最近のマイブームに、ケイジはとんでもなくおぞましいものを見た記憶を必死に打ち消そうとしながら、自分がなぜサティに包まれていたかを思い出した。

 どうやらまたサティをベッド代わりにして眠っていたらしい。

 ここ数日、ケイジは脚が痛む時に、中央格納庫にいるサティにマッサージチェア代わりをしてもらう手段を思いつき、彼女に頼んではついついそのまま寝ってしまうのだった。


「あああまたやっちまったのか…………」


 ケイジはまず時刻を確認しながらぼやいた。

 幸い眠った場所は違えども起床時刻にはまだ間があった。慌てる必要は無い。

「こっちこそごめんよサティ、またベッド代わりにしちまった……」


『気になさらないで下さい。ワタクシも驚かせてしまいましたし……それにワタクシはお役に立てたならそれで嬉しいのですから』


 基本的に眠る必要が無いサティは、寝覚めのまだハッキリしていない意識の中で謝るケイジに、24時間変らぬテンションで答えた。


『ケイジさん、何か夢を見ていらしたんですかぁ?』

「ふえ? ああ…………え~とぉ~」


 ケイジは失敗を恥じつつもサティに今見た夢を答えようとして、その瞬間、それまで見ていた夢の内容が思い出せなくなっていることに気づいた。

 夢だからという理由もあるだろうが、だいたいはクルーに化けようとしたサティを見て驚いたせいだが……。

 何かとても勇壮でハラハラドキドキし、そしてとても感動する夢を見ていた気がしたのだが……思い出せないことをとても惜しく感じた。


「ふぁ~思い出せないや……でもとても良い夢だった気がしたんだけどなぁ~……」

『まぁ……それは残念ですねぇ~、人間のみなさんは不思議ですね……眠ることができて、しかも夢も見れるだなんて羨ましいです』

「サティだってたまに眠るし、夢も見たことあるって言ってたじゃないか」

『ワタクシの睡眠は必要があってやっているわけでは無い、いわばマネごとですから……それにあんまり眠って、万が一ここでワタクシが眠って寝がえりを打つと、怒られちゃいますからね……あまり眠れないんです』

「そうなの? ……そうだよな…………」


 ケイジは凄く納得した。


『夢も一回だけ、木星を出て来る間際に見たこともあるにはあるのですが、あれは夢というより、夢を装った木星内のリング管理AIさんとのコミュニケーションでしたから……』


 サティの言葉に、ケイジは木星の底に人類はもちろんグォイドでもない何者かが、太陽系創世記に沈めておいた惑星間レールガンのことを思い出した。

 正直、個人で受け止めるには壮大過ぎて考えが追いつかない事柄だった。


「じゃ、本当の夢ってものは見たこと無いんだ……」


 ケイジはサティのリクライニングされたソファ状態のサティから、彼女に答えつつ中央格納庫の床に滑るように降り立った。


「……でもさ、実はサティも夢を見てるかもしれないじゃないか、完璧に忘れてるだけで」

『……………………そう……ですねぇ……その可能性はあるかも』


 ケイジの言葉に、サティはその不定形な身体をさらにうねうねと変化させはじめた。

 どうやらケイジの言葉に考え込みはじめたらしい。

 ケイジはまた、あの溶けかかった女性クルーの姿になりはしないかと身構えた。







 一端サティと分かれたケイジは自室へと向かった。

 たった10人しか正規クルーのいない〈じんりゅう〉居住区には個室が余っており、客室として確保されていった一室がケイジには宛がわれていた。

 実はケイジがサティの元で眠ってしまったのには、この宛がわれた自室に戻るのが少しばかり怖かったから……という理由も無くは無かった。

 ここ数日で二回ほど、ケイジがその日の仕事を終え自室に戻り、照明をつけると、ベッドの中に誰かがいたのだ。

 シーツを頭まで被っていたのでそれが誰かは分からなかったが、どうやらすやすやと眠っているらしく、規則正しい寝息と共にシーツの膨らみが上下していた。

 脂汗をかきながらケイジは瞬時に己がすべき行動を様々にシミュレートしたが、〈じんりゅう〉での数々の経験から、ケイジはシーツをめくるのを止めておいた。

 そもそもそんな度胸などは無く、よって中身が誰だったのかは分からなかった。

 そしてまたもやうずき出した脚を、とりあえず格納庫でサティにマッサージしてもらったのが、そもそものサティを寝床代わりにしたきっかけであった。

 その出来事以外にも、ここ数日はクルー達のケイジへのコンタクトが、どこか普段と変って来ている気がした。

 クルー一人一人が、そんなキャラだっけ? と思ってしまうような行動を、ケイジの前ではしているような気がしたのだ。


 ――何かが起きている!?


 ケイジは曰く言い難い予感を覚えたが、それを明確化することは出来なかった。

 グォイド本拠地接近に伴う緊張もあるのだろうが、おそらくそれは、ケイジに個人的に来たキルスティからの指示と関係あるような気がした。

 ケイジを〈じんりゅう〉に送り込んだ張本人たる彼女は、わざわざ個人宛映像メッセージで――彼女らの手を出すなよ~……絶~対に出すなよ~――と何度も念を押してきた。

 キルスティ少尉は、木星でのケイジの活躍を労いつつも、もうあなたを送った理由は消滅したのだから、くれぐれも帰還まで大人しくしていろ……と、やんわりと伝えてきた。

 クルーらの精神に間違った影響を与えれば、【ANESYS】の思考統合に支障をきたすことになるかもしれない。

 …………言われなくてもそのつもりだった。

 土星圏グォイド本拠地に向かっている時ならばなおさらであった。

 SSDFの常識でいえば当たり前のことを、かくも入念に言ってくるとは……ケイジは何か特別な理由がある可能性を何度も考えてみたが、土星圏に近づく頃には、もうそれどころではなくなっていた。

 自室に誰かいた事件は、悩んだ末にエクスプリカに伝えたが、彼がどう対処したかまでは知らなかった。





 結局、自分はこの艦で何をしているのだろう…………。

 ふと考えるのはそのことばかりだった。

 たった16歳のど新人の航宙艦エンジニアの……それも男子が……幼い頃より憧れ、人類滅亡の危機に怯える時代に、勇気と希望を与えてくれたあの〈じんりゅう〉で、少女クルー達と共に過ごすだなんて、【ケレス沖会戦】の記憶が戻った今でも、これが現実だとは今一つ信じられなかった。

 しかも木星で再び〈じんりゅう〉に乗りこんでから、まだ一カ月も経っていない。

 あの美少女揃いの(幼なじみ含む)VS艦隊クルーに囲まれながらの生活は、淡いピンク色をしていて、一人の若い雄としてケイジはもちろん喜びを感じていた。

 が、同時に艦は今、グォイド本拠地という、太陽系内で最も危険な位置へと向かおうとしている。

 ケイジは喜びと恐怖が入り混じった、ふわふわとしたどこか居心地の定まらない感覚を覚えながら、日々を過ごしていた。

 それでも、ケイジは日々大きくなっていく土星の映像を見る度に、自分を戒め、奮い立たせ、自分にできる精一杯のことを行なおうと努めていた。

 木星でのグォイドの企みは阻止したが、グォイドそのものの脅威が無くなったわけではない。

 その脅威に立ち向かう為に、幼き日に見た初代〈じんりゅう〉の姿や、第五次迎撃戦での闘いでケイジが受け取った勇気を無駄にしない為に、ケイジは手を動かし続けようと思っていた。

 勇気は、ただ与えられるだけでは意味が無いのだから。








 ケイジは恐る恐る自室に入り、誰もいないことを確認すると、さっさと着替えを持ってシャワーを浴びに行き、歯磨をし、食堂でヒューボに用意させておいた朝食を何人かのクルーと共に終え、サティと共に……というよりサティの触腕と共に艦尾上部格納庫に入ると、すでにクィンティルラ大尉とフォムフォム中尉が来ていた。



 ――〈じんりゅう〉艦尾上部・艦載機昇電格納庫――土星圏最接近三日前――。



 二人とも作業用ツナギ姿だったが、一人は袖裾を折りまくり、もう一人は袖裾の丈が全然足りていなかった。


「おそい!」

「……フォムフォム……」


 彼女らなりの“おはよう”に、ケイジもまた「おはようございます」と答え、その日の午前中をケイジは彼女らとともに昇電の補修と整備をして過ごした。

 〈ユピティ・ダイバー〉のコアとして〈ヘファイストス〉で組み入れられ、木星【ザ・トーラス】でのグォイド・スフィア弾との戦闘の真っただ中に〈じんりゅう〉へと突っ込むようにして着艦した昇電は、見た目以上にダメージを負っており、再使用には入念な補修と修理が必要であった。

 また、ケイジが木星から水星へと向かうメルクリウス作戦地に、彼女らの操縦技術を〈じんりゅう〉の操艦に活かす為に、昇電コックピットから外してバトルブリッジに無理矢理設置した二つの座席を、再び昇電に戻す作業も行わねばならなかった。

 サートゥルヌス作戦で昇電をどのように使うかは、今もってまだ不透明だが、最悪の場合、〈昇電〉をメッセージ・ボトル代わりに使う可能性もあるので、機体状態は万全にしておきたかった。

 もちろんヒューボに任せても出来ないことは無かったが、人手もあるに越したことは無いし、なによりクィンティルラ大尉とフォムフォム中尉の拘りがあった。

 彼女の好みに合うように昇電を調整できるのは、現状ケイジがもっとも適任であり、機械任せにするより安心できたのだ。

 ケイジはいくらエンジニアとはいえ、飛宙艦載機は専門外だったのだが………断われるはずもなく、ただベストを尽した。

 力及ばない部分はヒューボやエクスプリカに頼れば良かった。

 そしてサティもいる。

 サティという、人類がグォイド以外で初めて遭遇した知的生命体との共同生活は、実は始まってからまだ……というより出会ってからまだ一カ月も経過していなかったのだが、今のところは順調であった。

 彼女を生み出したスイン・ヌニエル博士の教育の賜物なのか、多少寂しがり屋で好奇心と茶目っ気がありすぎる帰来はあるが、基本的に彼女は礼儀正しく、とても心優しい。

 大好きな映像作品の趣味もケイジと合ったし、クルーの女子では無いが故の話やすさがあり、ケイジはとても助かっていた。

 そしてついでに言えば割と便利だ。

 ケイジはついつい自分の作業に彼女の力を借りてしまうことを、人として後ろめたく思いつつも、土星圏最接近を間近に控えた今となっては、頼らざるをえなくなっていた。

 サティはヒューボよりも融通がきくフォークリフト兼クレーン兼ジャッキ代わりとなって、この作業を手伝ってくれた。

 彼女は寂しがり屋にも関わらず、基本中央格納庫から遠くには行けず、比較的中央格納庫から近い艦尾上部格納庫での作業には、クルーと接触する機会を逃さないように欠かさず手伝いに来てくれるのだった。

 サートゥルヌス計画が始まってから約三週間が経ち、土星圏最接近を三日前に控えた今日までに、昇電の補修と整備はほぼ完了していた。

 大きな作業は終わり、あとはパイロット二人の勘が鈍らないよう昇電の操縦シミュをコックピットで行ないつつ、ひたすらリクエストに応えて微調整を続けるだけであった。

 結局、昇電コックピットの元々の座席は、バトルブリッジに設置しておいたままにし、昇電には新しい座席を取り付けることになった。

 いつまたクィンティルラ大尉達に、〈じんりゅう〉バトルブリッジで操舵を任せることになるか分からないからだ……想像したくは無いが。

 選択肢は多いにこしたことはない。

 〈じんりゅう〉着艦時に昇電を覆っていた木星深深度耐圧D・S装備も、そのまま装備しておくことにした。多少ウェイトにはなるが、増加UVシールドとUVキャパシタ代わりにはなるし、木星以来補給を得ていない今の〈じんりゅう〉には、もうそれくらいしか昇電に装備させられるものが残っていなかった。

 基本的に何も無い宇宙のど真ん中では、使える何かあるだけでもマシなのだ。


「…………………ふむん…………」


 ケイジは思いつく限りの作業が終わると、今一度昇電の姿を俯瞰で見てみた。

 尻尾が二本の白いイトマキエイのような昇電ディープスペシャルの姿がそこにはあった。

 少しばかり違和感のある光景だったが、ともかく出来ることは全部やったつもりだった。

 UV弾頭ミサイルも無く、武装は背面に装備された高出力レーザー砲と、対敵飛宙機用の機銃だけだった。


「ま、こんなもんだよな」


 大きく背伸びをしながらクィンティルラ大尉が呻くように呟き、それにフォムフォム中尉が「フォムフォム……」と頷いた。

 とうとう出来る事が無くなってしまった……彼女らが言外にそう言っているような気がした。

 ケイジも同じ気持ちだったからだ。

 与えられた有限とはいえ膨大な時間の最初は、〈ケーキ&クレープ〉の製作という任務があったから良かったが、それ以後は自分らで何をして過ごすか考えねばならなかった。

 様々な理由から、昇電の修理はすべき作業あり必要ではあったが、それ以上に時間つぶしとしての意味が強かったのかもしれない。

 土星圏最接近まであと三日――。

 すでに土星圏への接近にともない、〈じんりゅう〉の長距離光学観測により土星を回る各衛星や、土星のリングに、数々のグォイド建造物が発見されていた。

 幸い、まだ〈じんりゅう〉が発見され、迎撃されるような兆候は見えていない。

 あくまでパッシブな観測しか出来ない為、知りうる情報には限りがあったが、それでも人類が初めて知る事実の数々には違い無かった。

 もっとも知りたかったのは、グォイドの本拠地と思われるタイタンの情報だが、これはタイタンの分厚い大気に阻まれ、地上がどうなっているかを知ることはほぼ不可能なことが分かっていた。

 それでも、せめて次のグォイド大規模侵攻がいつになるかのヒントだけでも得ようと、〈じんりゅう〉は可能な限りの観測を続けながら、土星圏へと向かっていた。

 そんな、土星圏のグォイド本拠地最深部を掠めるなどという行いをして、何も起きない……何事もなく極平穏に通過し、安全圏まで行ける……などとは到底信じられなかった。

 必ず何かが起きる……誰もがそう思えてならなかった。

 だがそれが何かは分からない……そんな中を、ただじっと待って過ごすことなど、そうそう耐えられることではない。

 言わば昇電の修理作業の半分は、良い手慰みだったのだ。

 だがそれも終わり、ケイジにはパイロット二人が、自分と同じように軽く途方に暮れているように見えた。




 ――それはそれとして、ケイジにはこの機会に思いきって尋ねたいことが二つばかりあった。


『あのぉ~、お二人とも……今日は……というか、ここしばらくなんだか大人しいですねぇ?』


 ケイジが今まさに尋ねようとしたことをサティが先に尋ねると、二人はビクゥッと微かに跳ねあがった。

 やはりサティも気になっていたらしい。


『いつもなら前に見たアニメや映画の話とか、無駄話で盛り上がりながら作業してたのに……』

「あ~あ~え~それはだなぁ!?」

「フォフォフォフォフォムフォムフォムフォムフォムフォム……」


 クィンティルラ大尉どころかフォムフォム大尉までもが挙動不審になった。

 ケイジは話の種くらいの気持ちだったのだが、どうやら相当にクリティカルな部分をつついてしまったらしい。


「いっつも作業中にお喋りしてばっかなのを、艦長らに怒られたから悔い改めただけだ! 気にするな!」


 クィンティルラ大尉は実にもっともそうなことを述べ、フォムフォム大尉がコクコクと頷いたが、ケイジには、それくらいで彼女が行動を改めるとはまったくもって信じられなかった。

 が……、


『まぁ、それじゃ仕方ないですねぇ……』


 サティはクィンティルラ大尉の返答に即納得したようだった。

 実際、彼女にそう答えられたならば、それ以上の追求などケイジにはできはしなかった。

 明らかに彼女たちは、本当はいつも通り騒々しく振舞いたいのを我慢しているように思えたのだが、その理由を質問して答えてもらうのはまず無理そうだった。


「そ……うですか……じゃもう一つ質問、パイレーツ・ニンジャってなんですか?」


 ここ数日……具体的にはキルスティからメッセージが届いて以降、任務中、食事中、〈じんりゅう〉クルー同士の会話で時々耳にする謎の単語の意味をケイジは尋ねてみた。

 その質問に対し、彼女らは最初の質問以上に激しく反応すると、「なんでもない!」「乙女の秘密だ!」という、何でもないのか秘密なのかどっちなんだか分からない返答しか来なかった。

 が、彼女らの激しい動揺から、ケイジはある意味答えの一部をもらった気がした。

 これはこれ以上追及しないほうが良い……と。








 大げさに名残惜しむサティと一端別れ、食堂でまたヒューボ調理の昼食を終えると、午後は各機関室の保守点検にあたった。

 主機関室はもちろん、四基の補助エンジンナセルと、艦首ベクタード可動軸部に改装時に納められた人造UVDを見て回るのは、点検そのものよりも、移動の方に時間がかかる行いであった。

 サートゥルヌス計画が始まってから、もう何度も繰り返し行なっている作業ではあったが、面倒くさいと思う度にケイジは自分を戒め、サヲリ副長が製作した作業計画に合わせて保守点検を続けてきた。

 自分の整備に、〈じんりゅう〉とクルーの命運がかかっているとなれば、手抜きなど出来なかった。

 艦首、四基の補助エンジンを見て回り、再びサティ(の触腕)と合流して、最後に主動力源たるオリジナルUVDが納まる主機関室にやってくると、珍しい先客がいた。


[……ナンダけいじカ……]


 機関室の入り口に佇み、オリジナルUVDを仰ぎ見ていた〈じんりゅう〉の汎用インターフェイスボット・エクスプリカは、顔を180度回して真後ろを向くと開口一番、割と失礼なことを言った。

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