♯2
『眠ると同時に目覚める。そんな不可思議な感覚と共に、奴らの中へと飛び込む……いつもであれば。
それこそがワタシの使命、ワタシの存在意義、その行為それこそがワタシだからだ。
だがその時目覚めたワタシは、漠然とした違和感を感じていた。
毎度のごとく無数のぐぉいどがワタシを待ちうける。無傷では済みそうにない。
しかし今は、そんなこと割とどうでも良かった。
ワタシはワタシを満たす漠然とした使命感、憎しみ、虚しさ、そして何よりも喪失感を抱きながら、爆煙を突き破り、ぐぉいどの群れの中に躍り出た。
全てがワタシの思いのままになる瞬間、出来るような気がすることはすべて出来る瞬間だ。彼女達であった時には出来ないことも、ワタシとなった今なら出来る。
だけど……何かが違う。
ワタシはふと自分の手を見て見た……そこに手は無かった。
何故、手を見ようと思った? ワタシの肉体は〈ジンリュウ〉だ。ただの彼女達の塊に過ぎない私に、ただ〈ジンリュウ〉を操る為だけに存在するワタシに、“手”などあるわけ無いじゃないか……なぜ手があると思った。
ワタシには分からない。ただそれが重大なことだとは分かった。
ワタシは無数のぐぉいど共を蹴散らしながら、奴らの中心で待つ巨大な柱へと向かった。
ワタシの分身たる無人艦と艦載機達が、ザコ共を始末してくれる。
今回の使命は、今のワタシにとっては実に容易く思えた。
……というか、もう飽きた。
ただぐぉいどの群を突っ切るだけなら、考えずともできる。
かわりにワタシは突然、強烈な焦燥にかられた。
ワタシはここにいて良いのだろうか? ワタシはこんな事していて良いのだろうか?
ワタシは何者なのだろうか? この違和感の正体は何なのだろうか?
何故、今突然にそんな疑問が湧くようになったのか?
思考が答にたどり着けないまま、猛烈に空回りする。
そうだ。なにか重大な事を忘れている。いや、何かとても重大な事から、ワタシは目を反らし続けている。このままじゃいけない!
何から目を反らしているのか? その答を望むワタシの欲求は、なお一層ワタシの思考を際限なく空転させ、そのままワタシの思考はオーバーフローした』
恐ろしく心地よい眠り、戦術思考統合システム【
……いつもそうだった……はずなのだが……。
まるで身も心も溶けて宇宙と一体になってしまったかのような、そんな深い眠りとは真反対の、寝付けない夜の果てに、ようやくたどり着けたような極々浅い眠りから、けたたましく鳴り響く二種類の警告サイレンの音に、ユリノは猛烈な危険と恐怖を感じながら、ぬらりと覚醒した。
鳴り響いていた警告の内、一つはロックオン警報、これは不思議でもなんでもない、敵艦隊のど真ん中にいれば。
問題なのは、もう一つが衝突警報だったことだ。
――なぜに衝突警報?
零コンマ0数秒という僅かな時間に、自分が何者であり、今までどこで何をしていたのかという記憶、何故、危険と戸惑いを感じているのかという理由までもが一瞬にして蘇る。
そして、
「艦長、前方!」
切迫した副長の声にユリノが顔を上げると、眼前のメインビュワーの画面一杯にシードピラーの極彩色の外殻が迫っていた。
――……あ……れ……何でぇ?
「フィニィ回避~!!」
考えるより先に操舵席のフィニィに命じていた。
おかしかった。予定ではシードピラーを屠って敵艦隊を抜けたところで【ANESYS】が終了し、〈じんりゅう〉は最大推力で敵艦隊から一目散に逃げるはずだったのに……。
――なんで目の前にシードピラーがあるのぉ!?
そりゃ衝突警報もなり響くわ! ユリノは艦長席の肱掛けを握りしめた。
ユリノの疑問を余所に、メインビュワー一杯に迫るシードピラーの外殻は、フィニィが必死に〈じんりゅう〉の艦首を引き起こしたことにより、ゆっくりとだが画面下へと消えていった。かわりに宇宙の星々と護衛グォイド艦の群が画面を覆う。
どうやら〈じんりゅう〉は何とか上昇することで、艦底を擦るようにしてシードピラーとの激突からの回避に成功したようだった。
……成功しようだ――と思った次の瞬間、バトルブリッジに、バジンッという電子的効果音と共に、下から尾鄭骨が砕けるかと思う程の突き上げるような衝撃が加わり、ユリノは「ひっ!」と思わず他のクルーと同じように悲鳴を上げてしまった。
人口重力を利用した慣性相殺システムは正常に働き、肉体を押しつぶすほどの衝撃から彼女達を守った。が、それでもシートベルトと座席の間で体が千切れそうな衝撃が加わる。
――む、胸がつぶれる……。
この苦しみを席を設計した人間にも味わってもらいたい! とよく思ったものだが、艦長席のシートベルトが幅広のものに改良されてもやっぱり苦しいことには変わりないので、これはもう宿命みたいなものなのかも知れない……ユリノは心の隅でふと思った。
どうやら完全回避は叶わず、シードピラーの防御シールドに、〈じんりゅう〉艦尾底部のシールドが接触してしまったようだ。
「クッソォ~、ごめんなさい艦長! ぶつかっちゃいましたぁ」
フィニィが悔しげに報告する。
同時に、メインビュワーに移る艦前方の景色が、下から上へとゆっくり縦スクロールし始め、ビュワーに再びシードピラーの外殻が映し出されてしまった。
艦尾下方から突き上げるような余計な回転モーメントが加わったことにより、〈じんりゅう〉はつんのめるようにぐるりと縦に半回転してしまったようだ。
再び画面を覆ったシードピラーの船殻のディティールに、ユリノは〈じんりゅう〉に課せられたそもそもの重大使命のことを思い出した。
「カオルコ、ミサイル! ミサイル~!」
ユリノは声を上ずらせながら叫んだ。
カオルコが返答する間も惜しみつつ、即座に〈じんりゅう〉の艦中央周囲に装備された全ミサイル・キャニスターからUV弾頭ミサイルを盛大に発射した。
まるで獲物に伸びる蛸の足のように噴射炎の尾を引きながら、五十発近いUV弾頭ミサイルが、通過したばかりのシードピラーに殺到する。
しかし、リバース・スラストしながらとはいえ、近づきながら発射するのと、離れながら発射するのとでは、攻撃の効果に雲泥の差があった。
目標へと飛翔するミサイルの速度が、目標から離れようとする〈じんりゅう〉の速度によって相殺されてしまったのだ。
シードピラー表面が一瞬閃いたかと思うと、殺到していたミサイルの大半が、シードピラーの対宙迎撃レーザーによって撃墜されてしまった。
撃墜を免れた十数発のミサイルはシードピラーに命中するが、シードピラーの有する防御シールドに阻まれ、ダメージを与えるには至らない。
それどころか、ダメージを受ける心配をせねばならないのは〈じんりゅう〉の方であった。
無様に縦回転している〈じんりゅう〉は、敵にとって恰好の標的だろう。
ハリネズミのごとくシードピラーの表面に張り巡らされた対宙迎撃用砲塔の砲身が〈じんりゅう〉を向く。その砲塔は一基一基が〈じんりゅう〉の主砲搭と同等のサイズがあった。
「あ、やば……」
ユリノは思わず呟いた。
シードピラーの表面の多数の砲塔、その砲口一つ一つに虹色のエネルギーが集まるのが見える。その総エネルギーは、たとえ今の〈じんりゅう〉のオリジナルUVD由来大出力シールドといえども、容易に貫通するだろう。
そして光は放たれた。
思わず目の前で腕を交差させ、きつく目を閉じるユリノ。
バトルブリッジに轟音が響く。
「…………」
しかし、伝わってくる轟音は、〈じんりゅう〉のコンピュータが作りだした合成効果音でしかなかった。
「艦長、〈ラパナス改〉三番艦が!」
悲鳴のようなおシズの報告に目を開けると、眼前のメインビュワーの画面一杯に、艦中央をシールドごと撃ち抜かれた無人艦〈ラパナス改〉が漂っていた。
自立行動故かおシズの遠隔操作のお陰なのか、共に敵艦隊内に突入した無人艦〈ラパナス改〉が、【ANESYS】終了時の無防備な〈じんりゅう〉を守るという本来の目的を果たしたのだ。
一瞬間をおくと、身を呈して〈じんりゅう〉を守った無人艦は、思い出したかのように大爆発して宇宙から四散した。
その爆風をシールドに受け、〈じんりゅう〉は回転しながらシードピラーからさらに離れる。
一方、獲物をしとめ損ねたシードピラーの砲塔が、再び〈じんりゅう〉に狙いを定めようとしている。
チャンスがあるとしたら今しかない!
「フィニィ! 全速力でここから脱出!」
「りょぉかぁ~いっ!」
フィニィが吠えるように答えると、ようやく再び艦尾をシードピラーに向けた〈じんりゅう〉は、艦尾から盛大に噴射炎を放ちながら、敵艦隊の外に向かって加速を開始した。
しかし、バトルブリッジには相変わらずロックオン警報が鳴り響き続けていた。
予定ではこの時点でシードピラーは撃破されていたはずなのだ。それがまだ後方で健在であるということは、〈じんりゅう〉の後から撃ってくれと言っているようなものだ。
ユリノは艦尾映像を睨んだ。シードピラーの表面の多数の砲塔、その砲口一つ一つに虹色のエネルギーが再び集まるのが見える。
――まずい!
再び敵シードピラーの対宙迎撃UVキャノンが火を噴いたその瞬間、何者かがシードピラーの上方から突撃し体当たりすると、放たれたUVキャノンの光の束は〈じんりゅう〉下方へと大きく反れていった。
「艦長、今度は〈ラパナス改〉四番艦なのです……」
シズの報告。今度はシードピラーに体当たりすることで、またしても無人艦が〈じんりゅう〉を助けてくれたらしい。
上方から体当たりした無人艦〈ラパナス改〉四番艦は、シードピラー上部シールドを突き破り、敵船体に激突すると、そのまま艦の前半分をグシャグシャにひしゃげさせ、そのまま大爆発した。
シードピラーの巨体は、無人駆逐艦の体当たりごときでは沈まなかったが、艦首側上部での密着状態の爆発は、その巨艦の姿勢を僅かに傾けさせる程度の効果はあった。
「今のうちにはやく!」
ユリノは操舵席に向かって叫んだ。
UV弾頭ミサイル攻撃が失敗した今、シードピラーを沈めるという作戦目標の達成は諦めるしかない。今はどんなに見っとも無くても〈じんりゅう〉が生き延びることを考えるべきだ。
〈じんりゅう〉は前方に見える敵艦隊右舷側の護衛艦群を抜けようと加速した。
とその前に、後顧の憂いを断っておかなくては。
「カオルコ! フレアとスモーク、デコイ、チャフ、その他諸々後方にぶちまけて」
「了解!」
〈じんりゅう〉艦尾より、直ちに敵攻撃を妨げるあらゆる手段が射出された。
チャフの銀粉を含んだ宇宙戦闘用煙幕がシードピラーと〈じんりゅう〉の間に広がり、敵の照準を妨げる。
さらにランダムに宇宙を乱舞する囮目標と高熱源体が、敵の対艦ミサイルの追尾を欺瞞した。
これらの兵装は、宇宙戦闘尺度で言えば、極近距離でしか役に立たないものであったが、敵艦隊のど真ん中はその極近距離にあたり、効果は充分期待できた。
「おシズちゃん、他の無人艦は無事なの!?」
「〈ラパナス改〉一、二番艦は、現在〈じんりゅう〉の左右後方から本艦に合流すべく加速中なのです!」
「よし、そのまま〈じんりゅう〉に追いついたら、本艦の前後に配置。〈じんりゅう〉の防御に当たらせて!」
ユリノは任務失敗によって湧きあがる、あらゆる感情をねじ伏せながら命じた。
間をおかずにメインビュワーの上方から無人艦〈ラパナス改〉一番艦の艦尾が現れ、撃破されても〈じんりゅう〉の進路を妨げないように〈じんりゅう〉の前方、斜め右上方に遷移し、〈じんりゅう〉の守りに入った。
無人艦〈ラパナス改〉四番艦の犠牲とばら撒いたフレア、スモーク類のお陰で、後方のシードピラーからの攻撃の心配はしばらくはいらなそうだ。しかし、〈じんりゅう〉前方にはまだ敵艦隊右舷側を形作るシードピラー護衛艦隊群がいる。
シードピラーに狙われていた時は、護衛艦にとって〈じんりゅう〉を狙えば背後にいるシードピラーにも砲撃が当たってしまう為撃てなかったが、シードピラーから離れた今、護衛艦グォイドに〈じんりゅう〉を撃たない理由は何一つ無い。
敵艦隊から脱出するには、グォイド・シードピラー護衛艦群をくぐり抜けなくては。
メインビュワーに映る前方画像に、戦艦級グォイド二隻と駆逐艦級グォイドが、〈じんりゅう〉の進路の前にその身をもって立ちはだからんと移動してきているのが見えた。このままでは〈じんりゅう〉は物理的にとうせんぼさせられてしまう。
問題はまだある。
現在、〈じんりゅう〉は細長い円錐陣形をとっているグォイド艦隊の、中心部から右舷側に向かって脱出しようとしている。この〈じんりゅう〉の位置は、敵艦隊右舷側後方部の艦の目前を通過することになり、敵艦にとって、絶好の射撃位置にいる事になる。
基本的に前方への攻撃力に優れ、左右上下後方への攻撃には、船体自体の向きを変えないと出来ないという特性を持つグォイド艦にとっては尚更だ。
つまり〈じんりゅう〉が無事に敵艦隊内から脱出するには、〈じんりゅう〉右舷側で艦首をこちらに向けて攻撃してくるであろう敵艦と、〈じんりゅう〉前方で舷側を見せながら進路を塞ぐ三隻の敵艦の両方に対処しなければならない。
「副長とおシズちゃん、〈じんりゅう〉と〈ラパナス〉のシールドを右舷側に集中。カオルコ、全主砲塔六基を右舷に旋回、牽制で良いから撃ちまくってちょうだい!」
ユリノは考えうる最も現実的手段で対処することにした。
火器管制官カオルコの操作により、〈じんりゅう〉の全主砲が右舷側の敵艦に向かって旋回、虹色のマズルフラッシュを瞬かせながら射撃を開始する。
仮に敵艦に命中しても、最も防御力の厚い正面からでは、敵艦を沈められるかは怪しいが、今は敵砲撃を少しでも邪魔できればそれで良い。
ほぼ同時に、右舷側敵艦隊からの砲撃が〈じんりゅう〉に向かって殺到しはじめた。右舷側に出力を集中させたシールドにより辛うじて耐えているが、いつまでもは持たないだろう。
「〈じんりゅう〉より昇電TMC。クィンティルラ無事? 無事なら返事して!」
『あいよ! こっちはフォムフォム共に元気だぜ艦長、セーピアがほとんどやられちまったがな……一体何があった?』
ユリノは「ああ良かった!」と胸を撫で下ろした。
記憶には無いが、【ANESYS】中に昇電と艦載機はちゃんと発艦して任務をこなしていたらしい。
「細かい説明はあと! 無事なら無人艦と一緒に〈じんりゅう〉進路上の敵護衛艦を蹴散らしてちょうだい!」
『もう向かってるとこだよ!』
という声が聞こえるが早いか、メインビュワーに映る無人艦〈ラパナス改〉のそばに、横合いから昇電と一機の無人機セーピアが躍り出てきた。
「クインティルラとおシズちゃん、〈ラパナス〉に前方進路上の敵艦の艦尾を狙って集中攻撃!」
「了解なのです」
ユリノの指示に従い、無人艦と昇電、セーピアが前方のグォイド戦艦二隻と一隻の駆逐艦に攻撃を仕掛ける。
対艦ミサイルとUVキャノンが敵艦に殺到した。
駆逐艦は防御力の弱い側面からの攻撃であっさりと沈んだ。
前方への火力は絶大だが、やはり側面への攻撃力は大して無く、防御力も弱い戦艦級のグォイド艦は、それでも巨艦である分、無人艦と飛宙機の火力で沈めるのは困難であった。
が、現在、グォイド艦隊の全ての艦は、前方で待ちかまえるSSDF大規模侵攻迎撃艦隊との交差戦闘に備えて減速している真っ最中であった。
艦尾で稼働中のスラストリバーサーに集中攻撃を受けると、減速が出来なくなり〈じんりゅう〉の進路上から前進加速するようにして去って行った。
「今よ! ファニィ突っ込め!」
ユリノの指示に従い、〈じんりゅう〉はグォイド艦が排除された前方に向け加速した。
それは【ANESYS】終了から時間にして二分も経たない間の出来事であった。
〈じんりゅう〉は無事、敵艦隊のど真ん中から脱出を成し遂げた。
オリジナルUVDによる大出力と、【ANESYS】を用いた高速情報処理能力によって、敵艦隊内を一気に駆け抜けると同時に、シードピラーを撃破するという目標は達成できなかった。が、【ANESYS】の予想外の早期終了というトラブルに見舞われたにもかかわらず、こうして全クルー無事で〈じんりゅう〉もダメージ無しで脱出できたことは、まぁ少しぐらいなら誇っても良いのではなかろうか……?
ユリノが心の隅でそんな事を考えはじめていた正にその時、眼前を航行する無人艦〈ラパナス改〉一番艦が、真っ二つに折れると同時に大爆発した。
――え、何……?
一瞬、思考が真っ白になる。
視界の左端から、無人艦の大爆発による光が差し込んでくる。
無人艦は、右舷からの何者かによる攻撃で破壊された。
いかに敵艦隊から脱出を遂げたとはいえ、まだシールドは右舷側に集中展開していたはずなのに……たったの一撃で。
「右舷側ビュワーを拡大投影!」
ユリノはバトルブリッジ右壁面のビュワーを睨んだ。今しがた脱出したばかりの敵艦隊の後半部分が艦尾方向に見える。
艦のコンピュータが、無人艦への砲撃弾道を逆算したラインを敵艦隊の内部へと伸ばして示すと、数多のグォイド艦の中から砲撃した敵艦を特定、拡大して表示した。
「大質量……高速実体弾投射艦……」
そこには、艦首そのもが巨大な実体弾投射砲身となっているグォイド艦が、シードピラーの影からゆっくりと姿を現しつつ、その砲口をこちらを指向している姿があった。
『おい、〈じんりゅう〉やばいぞ! 逃げろ!』
クィンティルラが叫ぶのが聞こえる。しかし、どこにどうやって逃げろというのか?
この距離で発射された大質量且つ高速で飛来する実体弾など、対処不可能だ。
大質量故に迎撃レーザーでは気化させきれず、UVキャノンや迎撃ミサイルは、この距離では近過ぎて、発射から命中までに照準が間に合わず命中させられない。
普通であれば、敵の大質量高速実体弾投射艦は、〈じんりゅう〉が突入を開始する前の段階で、実体弾を撃ち尽くしているはずだ。
それがまだ砲弾を残した状態で敵艦隊内に混じっているなどと……。
――……なんて…………なん…………ってぇ――
後方にいた無人艦〈ラパナス改〉最後の一隻が、〈じんりゅう〉の右舷側に移動し、〈じんりゅう〉の盾になろうとする。
しかし、右舷側ビュワーに映る敵大質量高速実体弾投射艦の砲身が、UVキャノンとは違うプラズマによる青白いマズルフラッシュを瞬かせたかと思うと、次の瞬間、右舷に移動した無人艦〈ラパナス改〉は、真ん中に巨大な穴が穿かれると同時にか真っ二つになり、無人艦を貫いた敵の大質量実体弾はそのまま〈じんりゅう〉の舷側へと…………
「なんってぇ……インチキぃぃぃ!!」
ユリノはバトルブリッジが凄まじい衝撃と轟音と共に、真っ白い光に満たされる中、思いっきり叫んだ。
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