第23話 Event1:死んで罪をつぐなうがいいわ!
ふーざーけーんーなーーー
とか。
こーのーやーろーうーーー
とか。
そう言う類の魂のシャウトが噴出するまであと0.2秒、と言った頃合いだった。
こちらを向いて両肩をすくめた画家ゾンビの後ろで、絵の中の子供がきょろりとこちらを向いた。
向いただけではなく、歩いてくる。ポニーテールをありうべからざる風になびかせて。にこにこ笑いながら。
私たちはシンとしてその情景を眺めていた。なんだか口をはさんでいいような感じがしなかったのだ。なぜだろう!? 脱力したようにぽかんとして、絵から小娘が出てくる情景を眺めていたのだ。
木の穴に尻をつまらせたくまみたいな目には遭うことなく、ドーラは地面に着地した。その目がらんらんと光っている。
「あ、あんた絵画出身だったのね」
「うるさいわね!」
タン! と小気味よく赤い靴が地面を踏む。
「なんなのその絵画出身て! そうよ、私は亡霊よ。首をつって死んだ人の呪いを受けてこの地に留めおかれている」
迫力のあまり一歩下がってしまった。
シロウなど壁まで下がっている。ドーラは薄ら笑いを浮かべながら私たちに迫ってくる。
「だいじなことを知っているわ。でも、教えてあげない。私の知りたいことを教えてくれた人にしか、秘密は明かせられない。それに、あんたたちは泥棒だもの。泥棒は死んで罪をつぐなうがいいわ!!」
ドーラは手を振りかざした。私が最後にみたのは、安穏として手を振っている画家ゾンビ。そして迎えたのは宇宙レベルデコピン。
…………私たちまたバラバラに飛ばされてしまったのである。
■ ■ ■ ■
逆さづりゾンビと感動の再会で、あった。
て。感動など一ミリグラムだって存在してたまるものかーー!!!!!
なんてわめきちらす元気もない。
また。また飛ばされちゃったよ。ああああ。疲れた……。
「おっと、なんでそんなゾンビみたいな緩慢な動きなんですか、サラさん」
「…………」
口をきく元気もない。ううううう。
先ほどの道をたどる。ここを上ったらスケルトンがいて、走るゾンビがいて、扉の向こうにゴーストに囲まれたノアがいたわけだ。あああうー。
がつがつとはしごをのぼりながら私はうめいていた。バッチョは相も変わらず私の頭の上でぐっすりしてるけどね。マジで定位置だな、ホントに。
このはしごが長いのだよね。マップで見たけどここは地下一階。はしごの上があるのは三階。つまりそれだけのぼらされてるってことだ。疲れるわけだよね。ゾンビみたいな緩慢な動きにもなるわよね。
一階は入ってきたあの大階段の間。
二階は階段を上っていった、ドーラとはじめに出会った階だ。
三階はスケルトンと対決してゴーストと出会った階。
四階はマリア人形のフロアがあって、妖精と出会った。
五階は画家ゾンビのいる廊下の階だ。
なんだかんだいって地味にマップは埋まっているのだ。埋まってないところもちょっとあるけど……
「とりあえず今の目標はあの馬鹿画家に絵の具渡すことよね。つーかさ、思うんだけど、玄関のどくろが言ってた花を捧げるって言うのは画家に絵を描かせろってことだったのかなぁ……でも、首をつって死んだ女は悪神じゃないよねぇ。
うーん。次に花の絵にぶつかったときは、開けた方がいいよね? 花が聖女と魔女の名前を知ってるなら、あの絵が関係してそうだもん」
「おっと、疲れてるけど建設的ですな! それでこそサラっち。腹の底が抜けたような明るさが人々に笑いと夢と笑いと笑いを与え」
おでこをつん、とつつくとバッチョはシーンとなった。
■ ■ ■ ■
しかし、恨み骨髄で、次にあったときはあの馬鹿ガキ残虐ショーのヒロインだとすら思い定めていたのだけども、なんだか感謝することにもなってしまった。
さっきはいい気分で鼻歌まじりに通り過ぎていったから気づかなかったんだけど、スケルトンの部屋に花の絵が置いてあったんである。
見つからないようにひっそりと置かれたとしか思えない、すみっこに。
美姫の唇を飾る色の薔薇
というタイトルのそれは、目にも鮮やかな深紅色をした薔薇の絵だった。
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