【おまけ外伝 -私は私の恋を神様に祈ったりしない!-】



 私には恋焦がれて仕方のない人が居る。

でもどうやっても恋人にはなれないの。


私の名前は夏目カイ。

宇宙人では珍しい名前らしい。


育ての親のベルガがつけてくれた名前だ。


「カイ様ももうこんなに大きくなられて」とMQRがほっこりと涙を目に溜める。

「MQ! もう泣かないでよ、折角のドレスが汚れちゃうわ」


地球人だった頃の小学生~中学生ほどの容姿に育ったカイをMQRがしめっぽい瞳で見つめる。


「今日は日下部が宇宙にくる日よ♪ 会えるのは数週間ぶり」

とカイは髪にブラシを通した。


日下部とは、五代目イヴである、なんととある惑星の男の子だ。

歳はカイの今の見た目と同い年くらい。

男型でもイヴとして存在しうるという点ではこれまで以上に研究がなされている。


「カイ」


優しい声はカイの育ての親のベルガだ。


「ベルガ! 見て見て♪」とその場で一回転してドレスをベルガに披露する。

「やたら可愛いな」と褒めるとお嬢様はご機嫌だ。

「今日は日下部に会うんだろう?」と笑うとカイはにっこり微笑んだ。




日下部は気弱な男の子だった。

「カイちゃん!」

「日下部!」

二人が可愛らしいラブシーンのようにハグをすると

立場がないわぁ~、と言う風にナインは顔を伏せた。


「あたしのイヴがカイとラブシーン……」と苦笑いも途中で溜息に変わる。

保護者としてついてきているベルガと

パートナーとしてついてきているナインは元々同期であったし気の知れた仲ではあるが

ナインはこの状況に戸惑っていた。


「ベルガはいいの?」と聞くと

「何が?」と笑顔の背後に夜叉が居る顔を見てナインは震えあがった。


「はい、すみません。大体において私が悪いです」

「そうだな!」とベルガは同期のナインを精神的にやっつけてスッキリした。

「あれ? ピンクのリボン買いに行ったってだぁぁぁいぶ昔に言ってなかった??」

と指に何もはめていないベルガとカイを見た。


「好きな人が出来たら渡しなさい、って買ってあげた」と指をプラプラさせる。

「ほぉ~大人なことするねぇ」ナインがからかうも

「カイを試すつもりがあたしが試されてるよ」と溜息をついた。




「カイちゃん、その耳どうしたの?」

「いいでしょー! ベルガに開けてもらったの! お揃いの耳飾りをつけるんだよ♪」と

カイにはベルガの瞳の色の深いグリーンの石が、ベルガの耳には漆黒の石が収まっていた。


「あの計画もう実行した??」

「ううん、まだ……」カイは俯いてしまう。

「日下部はいいよね、イヴなんだもん。あたしは皇族でもないのになんでか宇宙戦士でもなければよくわからない“祈りの女”っていうポストが与えられてる。でもそのお仕事もうまくこなせたことないし」と足をぶらぶらとさせる。


 あちらからクロノスとオルバが歩いてくるのが見える。

ここは光合邸の庭園だ。かつてオルバと遭遇した場所でもあった。


カイはもちろんそんなことは覚えていない。

「クロノスおじちゃん、オルバお兄ちゃん」

と茂みから出て行くと

「そろそろ“おじちゃん”卒業したいなぁ~」とクロノスが笑ったので

普段寡黙で無口なオルバは少し口元を緩めて慌てて手で覆った。

「おや? 今、オルバが笑ったぞ! カイちゃんは流石だねぇ♪」と頭を撫でると

「私は笑ってなどおりません」と咳払いしたオルバが日下部に戻りますよ、と合図した。


日下部はオルバに連れられて行ってしまった。


これから生体検査なのだ。男型のイヴは日下部が初めてらしい。

カイはしょんぼりとまた室内のお花畑に座った。


 するとクロノスが「ねぇカイちゃん? 悩み事は僕に言ってごらん?」と

優しく微笑んだ。


見上げたカイは、これね、とピンクのリボンを出してきた。

「どうやって相手に渡したらいいの?」とカイはほっぺを真っ赤にして聞いてきた。

「やや、これはまた懐かしいものを見たねぇ♪」とリボンを見ると

プロポーズ百戦錬磨の僕が教えましょう♪ とこう言った。


「相手が怒ってる時に渡してごらん?」

「怒ってる時?? いやだ、怒られるの……何でなの」

「相手のビックリした顔が見れるよ♪」と笑うと

「よくわかんない」とカイはリボンを直してしまった。



 夜、自室の部屋は未だにファンシーな子どものような部屋だ。

こんなだから私はまだまだ大人になれない

カイは部屋のものを次々ゴミ箱にいれた。


「これもこれもこれも……要らない!」


その大きな音に何事かとベルガが入って来て

カイがお月さまがモチーフになったカーテンを外そうとしているのを見て

勢い余って頬を思いっきり叩いた。


カイはうっ、と言うとわんわん泣きだした。


ベルガは我に返りカイをしっかり立たせる。

「殴って悪かった、でもお前は何してたの?」

「だってこんなの要らないんだもん」と泣きじゃくりながら月のマークを指した。

これはかつて地球人のカイが夜寂しくないようにつけたカーテンだ。


「……そうだな、そうかもな」


ベルガは自分に納得させるようにつぶやいた。


カイにはそれが何故だかとんでもないことをしでかしてしまったように思えて

またしゃくりあげて泣きだした。

「カイ、泣きやんで」


ベルガは可愛い“我が子”のカイを抱きしめた。


{この子にカイの全てを押しつけるのはあたしの傲慢と我がままでしかない}

すると指の辺りでカイがなにかむずむずと動いている。

と、先程まで泣いていたカイが満面の笑みでほっぺには涙の足跡をつけたまま

ニカッとベルガの指を持ちあげた。


ピンクのリボンがベルガの指には巻いてあった。


それから恥ずかしそうにカイは自分の指にもリボンを巻こうとした。

だが自分の指に自分ではめるのは難しい、それにカイは不器用だ。

なかなか指に結べなくて涙目になるカイの小さい指を取り、ベルガが強くリボンを結んだ。

そしてその指に口づけする。


カイは耳まで真っ赤になって下を向く。こんなところは以前と全く変わらない。

もっといじめたくなる。

「これはあたしがもらってもいいのか?」と聞くと

カイはコクコク首を縦に振った。




「ブルーのリボンじゃなくて?」と聞くと

さらに茹でダコになったカイは泣きそうになって

「これでいいの!」と威勢よく言うと

ベルガの顔を見てビックリした。


「ベルガどこか痛いの??」

こぼれた涙を一生懸命拭くと

「私もベルガのような瞳の色が良かったなぁ」と言った。


ベルガは涙を腕で拭ってカイの頭を撫でた。

「カイの瞳の中には真っ黒な宇宙が存在するんだよ。あたしもカイも、皆この中で生きてるんだよ」

「そっか! 宇宙色なんだ!」と言うとカイはご機嫌を取り戻した。




 カイは寝る前に日記をつける習慣がいつからかある。

「私は無謀な恋をしている、でも私は私の恋を神様に祈ったりはしない!」

そう書き綴ると本棚に日記を戻した。


 本棚に日記を戻すと

棚の後ろにさらに隠し戸があるのを小さなカイは見つける。


自分と同じような日記帳がたくさん出てきた。


カイはとある十五歳の少女の冒険を知ることになる。

その登場人物は皆知ってる仲間である。

そしていつも主人公を助けてくれるのは……




小さなカイは壮大な一ページをめくり出した。











          【おまけ外伝 -私は私の恋を神様に祈ったりしない!- 完】

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