【エピローグ】


あんたの愛しい人は何処にいる?

傍にいるか?

会える距離にいるか?

あたしの愛しい人は新しい自分になるために

今はスヤスヤ眠ってる

大きくなったら告げよう

どれだけお前を愛しているか。




 その日も宇宙はいつも通り宇宙であった。

ただその日の終わりのどデカイ事件が起きるまでは。


 光合邸を足早に歩くのは赤髪の紅炎だ。


「しんっっっじられない! あたしにイヴが現れるなんて!!!」と

歓喜の声をあげている。


その後ろをつかつかと歩いているのはワイルドなショートヘアの背の高い高校生だ。

女の子だがどこか少年っぽい。

地球とはまた違った高度な文明を持つ惑星から見つかった天の宇宙戦士・紅炎のイヴであり

「三代目イヴ」と呼ばれることになる。


 だがこの日はさらに驚くことがあった。

「四代目イヴ」まで登場したからだ!


 紅炎と三代目イヴの後ろを歩くのは紅炎の喜びとは裏腹にちょっと戸惑っている風のイザベルだ。


「まさか光さんを差し置いて私にイヴなんて」と困惑気味だ。

「いいんじゃないですか? イヴを見つけるのに序列は関係ないでしょう?」と

女子中学生だというその少し生意気な目をした少女は淡々と冷めたようにイザベルに話す。


「それよりも私と同じ日に見つかったのに私が三代目ではなく四代目になるのは納得いかないわ」と高い声で大人ぶった風に言う。

この子もまた別の惑星から発見されたイヴだ。


 二人は連れて来られてすぐにモールの作ったえんじ色の宇宙服に着替えさせられた。

「なにこれ?」


「これは宇宙に耐えられるように二代目イヴ発見の時に作られた特別な服よ!」

紅炎がエヘン! と紹介する。


「へー」中学生もイザベルから服を渡され着替えた。

「あ、早くロンに会わせてください」

イザベルは中学生の発言にビックリして顔を真っ赤にした。


紅炎が寄って来てそちらの大人びた中学生からイザベルを離すと

こそこそと会話した。

「イヴって本当にパートナーの宇宙戦士のことは記憶してるみたいね!」

「ええ、ロンの話なんてまだ全然してないですのに」

二人して新しく誕生したイヴに怯えた。

「カイちゃんはもっと可愛かったんだけど……?」と自分のイヴとなるとそうはいかないみたいね、と顔を見合わせた。


「ベルガは新しいイヴ誕生の知らせ、もう聞いてるかな?」

「どうでしょう?」二人の会話は、イヴのパートナーとしては先輩となるベルガにまで及んだ。



「オルバが兵士試験合格したってカルメイラが教えてくれたの♪」

光がコロンと光合邸の長い廊下をお喋りしながらイザベルの助っ人として向かっていると

コロンが廊下に佇む見慣れない二人の少女を指さした。


「わぁわぁ♪ コロン! きっとあの子たちだよ! 新しいイヴって♪」

コロンもコクコクと頷く。二人が近付くと新しい三代目と四代目のイヴは回廊にかかる大きな大きなキャンバスに魅入っていた。


その堅牢な額縁で飾られた画には最後の舞踏会でカイとベルガが踊る姿が描かれていた。

画家が描いた絵はベルガの単身の肖像画ではなく二人の愛が溶け込んだような作品であった。


 ベルガが長い眠りから覚めてしばらくして画家が持ってきた。

「ワタシの画家人生で最高の一枚になりました」そう言うと

画家はその絵を置いて「長い仕事でした」と言うと出て行った。


そこにはあの日の二人がそこにいた。


なんて幸せそうなのだろう、喧嘩などしなければよかった。

ベルガは何度も何度もその絵の中のカイを呼び続けた。


そしてその絵はベルガ邸ではなく

光合邸に飾ってもらうことにした。


「こちらにあるほうが皆の目に触れるから」とベルガは言ったそうだ。


 少年の瞳をしたどこかおどけた態度の高校生も

 未だ若さをその顔に残しているのにつんけんした中学生も

自分より先に現れ、そして死んでいったというその先代のイヴを見ると

その美しさに言葉をのんだ。



 反対の廊下からガヤガヤとクロノスとナインの声がする。

「だから! 人の視線に敏感なクロノスが私の視線に気付かないはずないでしょ!」

と何やら色恋の話のようだ。


光が「お~い♪ また公開告白してるのぉ?」と手を振ると

クロノスは「やぁやぁ、いつの間にこんなにもてるようになったのかなぁ」と

はぐらかす。

ナインは聞かれていたことに顔を真っ赤にして

ふんっと踵を返して離れて行った。


「あれれ~一緒に紹介してもらおうと思ってたのにー」と光が残念そうだ。

光は新しいイヴ二人を見ると


「ふふふ、カイちゃんが来た時を思い出すねぇ」と楽しそうに笑った。







 ベルガは自分の城のあるバルーンの島の先端に座り相変わらず地球のあった場所を眺めていた。


涼しい風が吹き込んでくる。ベルガの錦糸のような髪はさわさわと頬を撫でる。

遠くから愛しい声が聞こえてくる。


「ベルガママー」ベルガを探しているその小さな小さな女の子は

転んでしまったのだろう、泣いている。


ベルガは可笑しそうに笑いながら姿を現すとその小さい女の子を抱っこした。


「ママって呼ばないって約束しただろう?」と黒い瞳に問いかけると

「んー」と困ったように少女はベルガに抱きついた。MQRは後ろから花の冠を持ってよろよろになって追いついてきた。


「カイ様は本当におてんばですね!」と顔をキリッとすると

カイと呼ばれた少女は「きゃー」と言って今度は城の方へ走って行った。

「待ってカイ」とベルガが呼びとめると

「お買い物に行こう」と提案した。


「どこに行くのぉ?」小さいカイはおかっぱ頭を揺らして尋ねた。


ベルガは長い眠りから覚めた時に自分の指にはめられたブルーのリボンが血の色と焼け焦げたせいで茶色になっているのを見て

「別離の色」に染まるそのリボンを外した。


「ピンクのリボンを買いに行こう」

そう言うと小さいカイは「わーい♪」と何も分からず喜んだ。






 未だに宇宙ではProtect Eveの力の本当の意味は解明されていない。

カイが時折見せたそのパワーも最後にやってのけた力の真の源も

様々な理や常識を超えてそれを具現化する、

それが

“イヴ”なのかもしれない。


全て忘れていてもひるまない、

あたしの記憶をわけあおう

そして


これからもずっと一緒に。






                           BELLGA 完

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