※18話 奴が、月曜日がやってくる……。

 うちの嫁さんは、猫又と呼ばれる妖怪だ。

 平日は人間社会に溶け込んで、スーツを着て会社に行くが、日曜日は黒猫の姿に変わる。


「にゃあ……」


 そして、日曜の夜は急激にテンションが下がる。


「にゃあ……」


 俺は猫語は分からないが、嫁さんの言いたい事は、大体わかる。


「にゃあ……(会社行きたくない)にゃあ……(働きたくない)……

 にゃあ……(お家でゴロゴロしたい)にゃあ……(仮病使っちゃおっかな)」


 デラックスな猫缶を食べ終えて、手と顔をぺろぺろ洗った嫁さんは「この世界にはもう何も楽しい事なんてないんだよ……」という感じで気落ちしている。


「嫁さん」

「……にゃ?」


 うろんな金色の瞳がこっちを見る。その頭をよしよし撫でると、普段は猫の姿でそうされるのを厭う彼女は、今だけは「仕方ないですね」とばかりに身体を寄せてきた。


「嫁さん、明日、弁当に何か入れて欲しいものある?」


 聞いた。うちでは朝の弁当作りは、俺の担当だ。

嫁さんが言うには「朝は五分でも長く寝ていたいです」とのこと。うん、俺はそのために、三十分早く起きるんだがな。


「にゃ~」


 ちょっと気分が持ち直したのか、嫁さんはPCタブレットの方に移動した。ぺちぺちと、肉球でタップし、クッ○パッドの画面を開いた。


「にゃあ♪」


 これ、お願いします。そう言って見せてきた画面は、


「――きゃ、キャラ弁……」


 また、手間と時間のかかるものを。


「にゃ~ん♪」

「わかった……わかったよ……作るよ……」


 薄々わかっているが、俺は日曜の嫁さんに、すごぶる弱い。

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