mission4-16 ドーハの予感
***
そこは神殿の奥部。呪術式がびっしりと刻まれた重厚な石扉の前に、
扉の中央部にある三つの窪みに、手に持っていた三つの宝玉をはめる。一つは緑、一つは赤、一つは青。薄暗い神殿の中で怪しげに光る石は、窪みにはまるとさらに光を強くした。扉の呪術式に三色の光が走る。
--ゴゴゴゴゴゴゴ……
ゆっくりと扉が開く。それと共にはめられていた三つの石は姿を消した。覇王・マティスは後ろを振り返り、低い声で告げる。
「ここから先はドーハだけで良い」
「ええっ! 俺だけですか!?」
想定もしなかった父の言葉にドーハは慌てふためくが、誰もそれを気に留めなかった。
「四神将……お前たちには追っ手の相手を任せる。ネズミ一匹通すな。立ち向かって来る者は何者であろうと薙ぎ払え」
「--はっ!」
四神将は姿勢を正してそう返事をすると、もと来た道へと引き返していった。
ドーハは扉が開いた先へと目を凝らしてみたが、今いる場所よりも暗闇が深く何があるのかさっぱり分からない。ただ、普段周りに鈍感だと言われる彼でさえ、扉が開いた瞬間から全身に悪寒を感じていた。この先にいるのは破壊神。ここに来るまで半信半疑ではあったが、嫌が応にも実感させられる。
四神将の姿が見えなくなるとマティスは身を翻し、石扉が開いた先へと一歩踏み出した。
「行くぞドーハよ」
「え、ええ!? 本当に俺だけでいいんですか!?」
マティスは答えず、黙々と神殿最奥部へと進んでいく。ドーハは不安げに父と四神将たちの背中を交互に見やったが、どちらも立ち止まる彼を気にして振り返る者はいない。ふと、また地鳴りのような音が響いた。慌てて周囲を見やると、石扉が再び閉じようとしている。
「ちょ、ちょっと待って、これ扉が閉まったら帰れな……」
たらりと冷や汗が額から流れてくる。しかし相変わらず同行した者たちの反応はない。ドーハが踏みとどまっているうちにも、石扉は道を閉ざそうとしている。
「--ああくそ、もうどうにでもなれっ!」
彼は考えるのをやめにして、父親の背中を追った。ここに留まっていても答えは出ないだろうと思ったのだ。
なぜ悪寒だけではなく、どこか懐かしい感じがするのかなど--。
***
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます