孫臏の登場

  前章で、秦が強くなっていき、戦いで他国を押し込み始めた様子を描きました。そしてその秦の河西回復に影響を与えた戦いが二つ、桂陵けいりょうの戦い、馬陵ばりょうの戦い、と、二つあります。


  二つとも、斉と魏が戦ったのですが、結末はこれから読んでいただきましょう。


 ただ、その戦いで、一人の男が大きな仕事をしたことを話しておかなければなりません。


 その男の名は、伝わっていません。ただ姓と、あだ名は残っています。姓はそん、あだ名(あざな)は「足を切られた男(ひん)」、つまり孫臏そんひん、のちに、尊ばれ、「孫子そんし」と呼ばれた人物です。


 前の数章で、私は長々と、当時の年代記を拾いました。丁寧にその記述を拾っていただければ、魏が当時の強国であったこと。しかし秦との戦いでは劣勢を強いられていたこと、魏の惠王けいおうは趙を伐って秦に奪われた失地を回復しようとしていたことを記したつもりです。


 西方で勃興する秦、それに対し、中央で覇権を維持しようとする魏の姿が見えるでしょう。


 そして、その魏の趙への侵攻作戦を担当していたのが、優れた武将であった龐涓ほうけんという人物でした。魏は彼の力によって、趙を砕き、国力を増強しようとします。


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