第16話 お買い物
おばあさんが小言を呟いてたのはこれのことか……。なんでそこまでミアと僕をくっつけたがるんだか。おばあさんまじで何者なんだよ……。血はありがたく飲むけどさ。
ミアには吸血鬼の事言ってないから僕だと思ってるのはわかるけどさ、なぜいきなりそこまでの信頼があるのかさっぱりなんだよねぇ。
あとはあの占いと頼み事かぁ。仲間……ね。吸血鬼のスキルガンガン使うつもりだからあんまり増やすつもりなかったんだよね。ミアは魔族だから言っても大丈夫だと思うんだけどさ。他に仲間を増やすにしても絶対に吸血鬼の事は話さないと、スキル使いづらくなっちゃうからなぁ。その魔族とやらと戦う前に隼人と仲原さんに会うしたら、その魔族と戦う時には逃げてもらわなきゃなぁ。あの二人には危険な事に首を突っ込んでほしくないからね。普通に言っても逃げてくれなさそうなんだけどさ。
武器は元々作ろうと思ってたからあんまり関係ないね。いつまでも針飛ばしで倒せるとは思ってないからね。
頼み事は吸血鬼が自分がやるって言ってたし任せようかな。たまたま見つけたら僕が回収って事で。
早速、血を飲む事にしましょうかね。何が手に入るのかな〜。『吸血』発動。さーって、カードを確認しますか。
鉄条 零 『人族(吸血鬼)』
男 レベル29
スキル:『吸血』『自己再生』『血液譲渡』『血液操作』『隠蔽』『魔力把握』『土魔法』『雷纒(大)』『怪力』『短剣』『危険感知』『気配感知』『鑑定の魔眼(極小)』『雷魔法』
称号:『転移者』『目醒めし者』『吸血鬼』『真祖』『血を操る者』『群潰し』『雷人』『力持ち』
おお!魔眼!そういえば吸血鬼が魔眼とか言ってたね。しかも鑑定だよ鑑定!これでどんなスキル持ってたりするのかわかったりするよ!けどなぁ(極小)って出てるんだよなぁ。これ多分もっと血を飲まないと見れなさそうだわ。それにはおばあさんから血を貰わないといけないのかぁ。一応聞きに行こうかな。
部屋を出ると丁度同じタイミングでミアが部屋から出てきた。
「あー、えーっと、おはよう、ミア」
「……おはようございます、テツ君」
なにやら機嫌が悪そうだ。寝起きだからとか?とりあえず昨日の事の礼と謝罪をしておかないとね。
「昨日はありがとう。それとごめんね。ベット使わせてもらっちゃって」
「……おばあさんのせいだからいいですよ。気にすることありません。それよりどうやって部屋から出たんですか?鍵がかかってたのに」
「あー、窓からちょっとね」
「ま、窓……」
ミアがぶつぶつと何か言い始めちゃったので、おばあさんに血を貰えるかちょっと聞いてみようかな。
「おばあさん、あれってまた貰えたりしない?」
一応言葉を濁しておく。ミアが小言を呟きながらもついてきたからね。
「あげてもいいんだけどねぇ。あんたどのくらい飲んでるんだい?」
「そこまで頻繁にって訳でもないかな。魔物狩りした時は結構な量だけど」
「ふーむ……。まあいいかね。けど、一つ忠告しておくよ。あんまり短期間で大量に摂取するのは止めといた方がええよ。あっちの部分の方が強くなっちまうだろうからね」
つまりは吸血鬼成分多めになって人から吸血鬼に本格的にクラスチェンジしちゃうって事かな。それは勘弁してほしい。
というかゲイルには魔術使用を、おばあさんには『吸血』使用を制限と言われたけどこれって吸血鬼の特性かなり制限されるよね。二人とも僕の事を心配してくれてるってわかるから素直に聞くけどさ。
「僕としても嫌だから忠告は素直に受け取っておきますよ。それとこれありがとうございます。もし足りなかったらまた貰えると助かります」
「今回は特別さ。夜に迷惑かけたからね。今度からは色々と対価なりなんなり貰うからね」
「わかりましたよ」
対価ねぇ。できれば昨夜みたいなのは止めてほしいところだ。というかおばあさんは吸血鬼の事知ってるみたいだけど、僕みたいな半分吸血鬼に対する注意をしたって事は、僕以外にも半分吸血鬼の人とかがいるのかもしれない。もしいるのなら会ってみたいかも。
まあ吸血鬼関係はここらへんにして、ミアと出かけようか。
「ミア、今日はどうする?」
……。話しかけても返事が返ってきません。まだぶつぶつと呟いてるし、周りの事が聞こえなくなるまでいったい何を考えてるんだか。しょうがないので肩を揺すりながら声をかける。
「おーい、ミア」
「は、ははは、はい!子供は女の子が欲しいです!」
何を口走ってるんだこの子は……。色々とやばいかもしれない。
「何のことだかわかんないけど、大丈夫?とりあえず今日はどこ行く?」
「あ……。!?わ、私今、今!?」
駄目だ。何言ってもミアが正常に戻らない気がする。しょうがない。今日のミアとのお出かけはお預けだ。
「はぁ……。ミア今日は行くのやめ––––」
「行きます!行きますから!」
僕が言い終わる前に言葉を被せてきた。ちゃんと聞こえてるじゃないか……。
「それで、どこへ行く?」
「昨日薬草採りをしたので、今日はお買い物がしたいです!」
買い物か。深夜に吸血鬼が街を見たおかげで何処に何屋があるかはだいたいわかるし、僕も欲しい物があるからその値段を確認しておきたい。
「いいよ。じゃあ行こうか」
「はい!」
最初に行ったのは服屋だ。これはミアの強い要望のためだ。昨日会った時、真っ黒の帽子とローブだったので、他の服はどうなんだろうと思って聞いてみたら同じローブが何着もあるそうで、他の服がないそうだ。その時にもっと可愛らしい服とか着ればいいのに、と僕が口を滑らせてしまった事が原因だろう。
「これどうですか?」
「うん、可愛いと思うよ」
さっきからこのやりとりがずっと続いている。なかなか決まらないみたいだ。女子の買い物は長いって聞いた事あったけど本当だったんだなぁ……。このままだといつ終わるのか分かったもんじゃないし一番良かった白のワンピースを薦めてみようかな。
「悩んでるんだったらさっきのこれどうかな?良く似合ってたと思うんだけど」
「!!ならそれにします!」
おお、一瞬で買い物が終わった。こんなことなら最初っから言えばよかったかも。
「次はどこに行く?」
「テツ君の行きたい所でいいですよ。私ばかり時間使っても悪いですから」
「いやいいよ、ミアの行きたい所で。今のところ行きたいのが一箇所だけだからね」
僕の行きたい所は魔法道具屋だ。魔力圧縮機の値段を確認して王都とどっちが安いのかを調べたい。王都の物は10銀だった。200銅で1銀なので銅だと2000銅必要になる計算だ。100銅で1銀の方が覚えやすいから変えて欲しい。で、僕の今の所持金は6銀と170銅だ。まだまだ買えそうにはないけど安い方を買いたいからね。
「それじゃあ雑貨屋さんに行きたいです!」
「いいよ〜」
お次は雑貨屋らしい。この世界で雑貨屋に行った事はまだないし、何か良いものがあったら買おうかな。
雑貨屋には手鏡や瓶、小物等沢山のものが置いてあった。洞窟で拾った瓶と同じものだ。少しだけ買っておこう。スライムの液体をストックしておきたいからね。
「わぁ、これ可愛い」
ミアが手に持っていたのはピンク色の花が付いている小さな髪飾りだ。お値段は1銀だ。他の髪飾りはその半分くらいのお値段なのになんでこれだけ高いんだろうか?
「ミアならそれ似合うと思うよ」
「本当ですか!?でもさっきの服が高くてもう1銀ないのでまた今度ですね」
「なら僕が買ってあげるよ」
「それは悪いですよ。テツ君も買いたい物があるでしょうし。お金を貯めてまた来ればいいんです」
「なら、僕はこの髪飾りが買いたいかな。それでプレゼントしたい」
「嬉しいですけど……本当にいいんですか?」
「うん、いいよ。僕がしたいと思ったからしてるんだしね」
「ありがとうございます!」
髪飾りと瓶3個で合計で1銀100銅だった。これで後5銀とちょっとしかない。明日は魔物狩りしてお金貯めようかな。早く10銀貯めたいし。
髪飾りはミアの綺麗な紫髪に良く似合っていた。うん、買ってよかったよ。女の子は可愛くないとね。
「えへへ〜」
ミアが髪飾りを付けてからずっとにやけている。そんなに嬉しかったのか。なら買ってあげた甲斐があるってものだね。
「次は魔法道具屋行っていいかな?ちょっと見ておきたくて」
「はい!いいですよ!」
魔法道具屋は他の店に比べて小さくボロい感じだった。きっと王都がすぐ近くにあるせいで、王都に行った方が品揃えも良く品質も良いのが多く取り揃えられている事が原因だろう。
目的の魔力圧縮機は王都と同じで10銀だった。王都で見たのと少しだけ違うようだったが、デザインが違うだけらしい。デザインを変える必要はあったのだろうか。
少し魔法道具の構造が気になっているので何か買って分解してみたい。とりあえず一番安いのを買っておいた。一番安い物でも150銅〜でお財布が軽くなっていくのを感じる。散財しないように気をつけねばいけない。ちなみに買った魔法道具だが、見たことない形なので、何に使うのかはよくわからない。
魔法道具屋を出た辺りで丁度お昼時になったので、昨日ミアと行ったお食事処で昼食を取ることにした。昨日も思ったがなかなか美味しい。日本で食べていたような料理は一切出てこないが、異世界独特の料理が楽しめている。
移動中の夜食とか美味しいの食べれるように料理の勉強とか少ししようかな。
料理の事は後にして、とりあえずこの後どうするか決めようか。
「この後どうしよっか?」
「私はどこへ行ってもいいですよ。私としては少しお金を使い過ぎてしまったので、稼ぎに行きたいですけど」
「ん、そっか。じゃあ一旦宿に戻って買った物を置いてから依頼受けに行こうか」
「はいっ!」
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