第112話 娘、行動開始

「そういえば獣人大陸のダンジョンは2つクリアされてるんだよね?」


「私が入ってから聞いた話ですと更に追加で2つのダンジョンがクリアされたらしいです」


 つまり4つはクリアされちゃってるのか……。人族大陸の各地のダンジョンはクロと僕の分身体で攻略中だけど、こっちに回した方がいいのかなぁ。人族大陸のダンジョン、まだ僕がクリアしたあの1つのとこしかクリアされてないみたいだし。


「未クリアの3つがどこにあるかってわかる?」


「あ、はい。少し待って下さい。……残り3つはまとまって存在しています。獣人大陸の王都にあるみたいです」


 獣人メイドさんがギルドの奥に入って本を持ってきてくれた。多分、あれに獣人大陸の事が書いてあるんだろうね。


 にしても、王都にねぇ。ダンジョンって魔力が濃いらしいけど3つもあるとやばいんじゃないの?魔物とか溢れ出したりしないんだろうか?


「クリアされた2つは最近の話?」


「はい。詳しくは聞けていないですが、獣人と人族の合同パーティだったらしいです。マスター様が捜しておられるゲイルという方がダンジョンクリア出来る程の実力者であるのでしたらその2つの近く、もしくは王都にいらっしゃる可能性は高いと思います」


 ゲイルは獣人大陸のダンジョンクリアした事があるって言ってたしその可能性は高いね。獣人大陸の知り合いに呼び出されたとも言ってたし。


「うん、分かった。なら目的地はそこらにしておくよ。色々教えてくれてありがとね」


「いえいえ!私がこうして今を生きていられるのはマスター様とクロ様のおかげです!お礼を言うのならこちらの方です。ありがとうございます!」


 うーむ。事の顛末しか聞いてなかったけど、クロに後で詳しく聞いておこう。ここまで言われるのは気になってしょうがない。


「とりあえず向かうとしたら先に王都かな。みんなもそれでいい?」


「テツ君が決めた事ならそれでいいですよ」


「俺たちは鉄に付いてってる形だからな。基本方針は鉄に任せる」


 他のみんなも頷いて同意を示してくれる。それなら王都へ向かうでいいとして。クロには分身体を先行しておいてもらおう。


 ついでということで依頼を受け、適当に達成しておく。今見ている限りでは獣人大陸も人族大陸もあんまり違いはなさそうだ。違いがあるとすれば、緑が多いくらいだね。






「どうやら、獣人大陸に入ったらしい。ミストもいる事だし、愛娘も行ってきたらどうだ?」


「いいの?」


「ああ。息子の事を見ててやってくれ。そうだな……あのメイドにもバレないようにだ。『到達者』なら出来るだろ?」


「出来るけど。パパはお兄ちゃんに何かあるって思ってるの?」


「ああ。青眼のは占いって言ってはいるがほぼほぼ未来視だ。行動次第で確かに細かな事は変わるが、変わらない事もある。息子の受けた内容なら、まず魔族、アポリスは必ず獣人大陸にいることになる」


「そのアポリスっていうのが、お兄ちゃん達と殺しあう?」


「ああ。絶対に。メルエスは吸血鬼なら殺れる。アレウスも『到達者』の領域に片足だけ踏み込んでいたから苦戦していたが協力して殺れた。だが、アポリスは『到達者』だ。今、ミストと愛娘が相手で歯が立たない息子じゃあ相手するには役不足。人形が内蔵魔力を消費すればどうにか相手に出来るだろうけどな。母さんがいるから息子は死なずに回収されるだろうが、周りの足枷に関しちゃ回収しないだろ。回収されなかった時、息子は多分折れる。だから愛娘に付いてて欲しいんだ」


「要するに、お兄ちゃんの周りの足枷を守れって事でしょ?」


「まあそうだな。大人数で召喚されたのはこっちの不手際だ。そのくらいはやらないと息子に裏切られる」


「吸血鬼が『反転』は考えたくない」


「だろ?しかも息子は切り札。無理矢理にでも『真祖』にしたってのに『反転』されたらこっちが詰む。だから息子の事、頼むな」


「わかった。感知反応外、上空1万メートルくらいから見てるね」


「いや、そこまでしなくていいぞ?息子はなんだかんだ鈍いから。人形にさえバレなければな」


「はーい」


 その場から女の子の姿が消え去る。


「うーむ。我が愛娘はやる事なす事大き過ぎる……。自重して欲しいもんだ……。だが、さて、これであの未来視にどれくらいの影響が出る事やら……」


 息子と娘に宗一は頭を悩ませながら眠りについたのだった。

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