第33話 ランクを上げよう

 馬車を用意してもらったのはいいんだけど、そんな大きなのを貸してもらうのは壊した時に怖いから、小さいのにしてもらったんだ。

 で、僕達は今7人いるわけで、全員入るのはちょっときつかった。そんなわけで、魔力総量を増やすために僕が雷歩を使って走る事になった。それだけだと狭いからミアを抱っこして。


 道も整備されていて魔物もそれほど出てこない。馬車のゴトッゴトッという音につられてなのかたまに出てくるんだけどね。それでも僕が気配感知とかで周囲を警戒してて、引っかかったそばから血で対処してるから暇でしょうがない。安全だからいいんだけどさ。こっちは森じゃなく平原が広がっている。その為、なかなか見晴らしがいい。夜など星が綺麗だった。



 それから数日、黒服じゃない普通の盗賊とかが出てきたり、空から鷹みたいな魔物が数匹襲ってきたりとかして結構大変だった。盗賊の方はみんながいる手前殺すのは無し、鷹は空にいて素早いから血が当たらなくて苦戦した。そこで『透明球生成』で透明球を出して使ったらなんか楽勝になった。この透明球は僕は見えるようで、他の人は見えないみたいだ。他に人がいる時だとかなり使いづらい事が判明した。



 そんなことがまああったけど、無事ダンジョンがある街ポートに着いた。とりあえず、宿をとってそこに馬車を駐めさせてもらった。その後はギルドだ。受付の職員に聞いてみた。



「この街にあるダンジョンについて聞きたいんだけど、いいかな」


 なんか話すのは僕の係になった。美智永さんの方がいいと思うんだけど、なんでだ。


「はい、ダンジョンですね。この街のダンジョンはこの大陸にあるダンジョンの中でも難易度が低いダンジョンとなっております」


「難易度が低い?」


「はい。簡単に言いますと、他の所より出てくる魔物が弱いそうです。それでもまだクリアされた方はいらっしゃらないんですけどね。そんなわけで、ダンジョン初挑戦の方は大体ここを訪れます」


 なるほど。だからさっきから人が多いのか。僕達も初挑戦だし、ちょうどよかった。


「それでなんですが、難易度が低いといっても大陸にある7ダンジョンの1つ。誰でも入れるというわけではありません。そんな事をしてしまうと死亡者が増えてしまいますからね」


 まあ当然か。


「それで条件は?」


「ランクが最低でも黄以上の方ですね。黄までいっている方ならある程度の強さ、そして冒険者としての常識を備えていると思っていますので」


 ふむ。黄色かぁ。僕は大丈夫だけど……。後ろを振り返ってみるとみんな眉を寄せていた。あぁ、ダメなんですね。ミアは確か緑で、王女は冒険者になったばかりの筈だから青、隼人達は多分緑なんだろうなぁ。さて、どうしたものか。


「黄ランクですか」


「ええ。後は特別許可が下りている場合、その方は入れますね」


 アンヨドギルド支部長は知り合いだけど、特別許可なんて貰ってないからなぁ。僕以外入れないこの状況……みんなのランク上げするしかないか……。神代君を探さないといけないし。


「ありがとうございます。仲間のランクが足りないので、続きはまた今度お願い出来ますか?」


「はい。了解致しました。またのお越しをお待ちしております」


 さて、みんなとお話ししましょうか。


「黄ランクかららしいよ」


「ああ、聞こえてた。俺たちはまだ緑ランクだから無理だな……」


「私もまだ緑です……」


「私はまだ青ですね。これはランク上げをしないといけませんね」


 だよねぇ。ランク上げっていっても依頼を受けまくるしかないんだけどさ。難しい依頼を達成すると、その分早くランクが上がるそうだけど僕達に難しい依頼はちょっとねぇ……。


「鉄は大丈夫なのか?」


「ん?うん、僕銀ランクだし」


「「「「「はぁ!?」」」」」


 そんなみんなして……。あ、ミアは言ってないよ。僕が銀なの言ってあったからね。


「ちょっと待て!?何でそんな急上昇してんだ!?」


「クイーンのせいとしか言いようがない」


 だってクイーン倒したら銀になったんだし。僕の意志じゃない。


「はぁぁぁ。ま、いいか。それじゃあ手伝ってくれ」


「もちろん。僕だけダンジョンとか嫌だし。そもそも僕の最初の目的ってミアのレベル上げだしね」


 あの魔族倒したせいというかおかげというかでミアとのレベル差が5倍近くになっちゃったからね。サクサク上げないと。というかレベル上限ってあるのかな?100とか99が限界だとしたら半ばのとこまできてるんだよなぁ。


「それじゃあサクサクやっていくか!あんま時間もかけてられないし!」


 隼人達4人、僕3人に分かれて依頼を受ける事になった。一緒でもよかったんだけど、あんまり大人数だと何もしない人が出るって事で、隼人達は慣れてる4人で、僕はミアと王女で受ける事に。王女ってどれくらい戦えるのかね。




 結果、なかなかって所かな。後方からの魔法使いタイプ。『水魔法』が得意で『風魔法』『火魔法』が多少なりとも使える。『水魔法』が得意だからか水と他の複合魔法も使えるようだ。


 依頼をどんどんこなしていく。自分の手持ちですぐに達成出来るものも選び、レベル上げも兼ねて魔物狩りもしたりだ。


 数日かけて隼人達が全員黄ランクになった。ミアはまだ緑、王女は緑に上がっている。先に黄ランクにしたかったのに先越されたなぁ。その後は隼人達にも手伝ってもらい、全員が黄ランクになった。


「これでやっと全員挑めるようになったのか」


「そうだね。でもその前に太一君を探さないとじゃない?」


「だな」


「こっちでそれとなく情報収集してみたけど、神代君は今別の街に行く依頼をしているみたいよ」


 えぇー……。留まっててくれよ……。


「でも、依頼は達成してて、別の街を出た日から計算すると明日この街に戻ってくるみたい」


 どっからそんな情報取ってくるんですか美智永さん。


「それじゃあ今日はお休みって事ですか?」


「そういう事になるかな。神代君がいないんじゃ、話も出来ないし」


 まあ神代君が僕達と一緒に素直にダンジョンに行ってくれるか分からないんだけどね。


「なら買い物しましょう!私たくさん依頼してお金も貯まりましたし!」


「いいな。でも流石に7人で移動すると邪魔になるし、何組かに分けて行動するか」


 隼人の仕切りで組分けが出来る。隼人と近藤くん、仲原さんと美智永さんと王女、僕とミアという組分けになった。


 これ、またあれが始まるのかなって組分け何ですよねぇ……。


「それじゃあ行きましょうか、テツ君!」


「ちょっ、そんな引っ張らなくても大丈夫だから!?」


 ミアのテンションが高い。はぁ。


「なっ?ミアさんと鉄の2人にして良かっただろ?」


「だね〜。それじゃあ私達もショッピングを楽しみますか」


 そこの親友2人、聞こえてるからね。

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