Ⅳ-12 連携、ふたたび

 1年前。僕たちに立ちはだかった欧州の手勢。


 あのあと陽乃ひのが言っていた分にはあの2機――『シュラフタ』も『大率タイスイ』型を原型にしているらしいけども――また、性懲りもなく出てきたか……!


「アノ、屈辱的なporażka(敗戦)以来! 我々は牙を研いできた。憐れむべき、そして憎むべきヤポニャの『アストロラーベ』たちよ、カクゴ!」


 単機、瞬く間にナギたちの乗る機体――『禍津日』の距離を詰める。


 とはいえ、以前は僕たちをかばうようにして戦わなければならなかったので押されただけであって。

 万全の状態のナギ那美ナミなら、相手ではない。

 奴のレイピア状の刃をかわした『禍津日マガツヒ』は背負っていた大剣をすかさず取り、振るう。しかしやはり敵もさすがだ、完全に虚を突いたと思ったのにすんでのところで回避する。


「今回は素手じゃありまセンか。カラテのような戦術もスキだったんだけどネ!」


 兄であるセナトの『シュラフタ』の上空で陣取り、大砲『カジミェシュ』で虎視眈々こしたんたんと狙いを定める弟の機体からも驚きの声が上がる。


「……驚いた。流石にいつまでも丸腰ではないということだね、兄さん。しかし、その大剣どこかで――……」


 とまで口にしたところで、気がついたようだった。やはり兄弟のうち、弟の方は頭が回る。


「セイム、ジェンクイエンありがとう。なるほど、ユリ・ワンのミェッツときましたカ……!」


 通信は舌なめずりの音まで明瞭めいりょうに拾っていた。


「……ciekawy面白い!!」



 さらに加速して――来る!



「そんな見るからに重々しい大剣、振り回すだけでも一苦労なハズ。この動きに、反応できないでショ!」


 トリッキーな動きでかき乱そうとしてくる。

 意外なところから変幻自在に突き出される連撃、今のところはなんとか『禍津日マガツヒ』も反応できているけれど――2人も機械じゃなく人間だ。


 いつ反応を見誤ってしまっても――……


 『禍津日マガツヒ』は幾度か振りかぶろうとするも、間合いを詰められているため攻撃の機会を逸してしまっている。

 それでもわずかな隙を見出してぎ払う体制に入った。これは決まっただろう。

 そう思っていたが――


 砲撃音だけでビリビリとした振動がここまで伝わってくる。


 弟の『カジミェシュ』――


「……我々の言葉で『母』を意味するその防御システム。偉大なる大王の武勇でさえこじ開けることができないとはね」


 ……ヒヤヒヤしたが、防いでくれた……! 

 遠隔操作ユニット『セルツェ』を規則正しく配置し光でつなぐ防御システム『マッカ』の堅牢けんろうぶりには改めて感心させられる。


「でも、それもいつまでもつかな?」


 奴ら『シュラフタ』の後ろで円陣を組み構える多くの機体たちも携行するライフル型の武器を一斉に『禍津日マガツヒ』へと向ける。


 そうだよな……大人しく見ているだけではいてくれないわな……


「悪く思うな。お前達は『世界』に対する敵。流儀などと言って、負けることは許されないの……だッ!」


 セイムの「撃て!」という大号令と共に、銃撃の雨が降り注ぐ。

 ……幾度となく僕たちを守ってくれた母なる庇護ひごも、これでは……砲火の嵐の前に離脱していた兄・セナトはこの様子を見て勝ちを確信していたようだった。


「……フゥ。アイツラの懐に飛び込むのは勇気が要ったネ。無理をした甲斐があったというもの……決まりだネ」


 何度となく観念してしまいそうな場面があった。

 でもアイツらは常にそれを乗り切ってきた。


 

 頼む、頼む……! 

 今回もまた、どうか、無事でいてくれ……! 

 ナギ那美ナミの無事をひたすらに祈った。 



 どれだけの間砲火が続いただろうか。ようやくその音も鳴り止み、煙が晴れる。



「――!? いない!?」


 あまりものセイムの動揺にこちらがはっとしたほどだった。確認する。

 確かに『禍津日マガツヒ』が砲撃を受けていたあたりの上空には……煙のくすぶりと共に展開された『マッカ』のユニット群が浮かぶばかりだった。



 砲撃を受けている間にひそかに離脱したのか――!? いったいどこに……



「! ――兄貴!! 後ろだ!」

「はァァァーーーーーッ!」


 この声は、ナギの――!! よかった――

 セナトの『シュラフタ』の背後を完全に取った! そして託された『瑠璃王の剣』を、大きく振りかぶる。


「かかった!! ――これで、決まりネ!」


 おかしい、完全に背後を取られてこの余裕……ま、まさか!?

 奴らの狙いは、ユニットと機体の引き離し――!?


「弟!」

「……沈め、サタン!!」

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