Ⅱ-8 人間らしさ

「……やっぱり、危険だわ。和久わく陽乃ひの……!」

 コンビニへの外出から戻った僕達を玄関に立って迎える阿万原あまはらこよみ


「あら、阿万原あまはらこよみさん。善良なメイドをつかまえて、なんという」

「はっ、ただのメイドではないでしょう? なぜあの時私に干渉できたのか……阿万原あまはらの血を引くあかつき様か、月読つくよみ様しか存在するはずがないのに――あなた、一体何者……!?」


「……存在するはずがない、ですか。ふふっ、あははっ」


「……何がおかしい? 小間使い」

「ふふっ、いえね。発達した科学が生み出した思念プログラムたるあなたがですよ、この程度を想定できないのがおかしくて、ごめんなさいね」


 こよみの顔がみるみる強ばっているのがわかる。この子、もしかしてわざと挑発している……?


「貴様、人をナメるのも……」

「ふふ、ときましたか。……まあ確かにあなたは人間よりも人間らしいかもしれませんね、愚かという点では」


「小間使いごときが……!」


 こよみが完全に怒りで我を忘れている。

 前から思ってたけど、プログラムのくせに感情が出やすくて、すごいのか失敗作かわからない。


 陽乃ひのは、笑っていた。計画通り、とばかりに。


「……ほんと、あなたが無能で助かりますよ」


「――っ、ぁ……あー……」

 こよみの様子がおかしい。陽乃ひのはまた、乗っ取ったのか……?


 陽乃ひのちゃんが玄関で靴を脱ぐ所作をしたところで、初めてやっとここが玄関だというのを思い出したくらい、2人の攻防にまれてしまっていたのだった。

 攻防、というには一方的だったけど。


「大野様、さあ、靴を脱いで」

「あ、う、うん」

 促されるように家にあがる。本来は僕の家なのに、奇妙な感じだ。


こよみさん、わたしは夕飯の支度に入ります。あなたはその間待機していてください」

 陽乃ひのは完全に操っているかのように指示を出す。

「――かしこまりました」

 そしてまたそれに従うこよみ

 こよみの感情豊かな面ばかり見せられているので、まるで最初に出てきたときのような物腰の柔らかさは、もはや気持ち悪いくらいだ。


「……わたしよりも、あなたの方がよほど人間なのかもしれないですね」


 こよみとすれ違いざま、陽乃ひのは小さく呟いた。

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