Ⅰ-3 使者は空から降臨す

 『ファーシャスタン連合』を名乗った人たちと戦ったあと、ぼく達2人はしばらく上空を航行していた。


 だが、いつまでも空を飛び回っていたのではかえって目立つかもしれない。

 市街地を過ぎた山間やまあいで一時身を隠しておくことにした。

 

 追ってくる様子もない。完全に振り切ったか……?

 ひとまずは安堵する。

 サヤには感謝しないとな。

 

 ――と油断していたその時だった。

  

「遠路はるばるご苦労さまでした。天孫のご降臨、歓迎たてまつりますわ。宇宙そら御子みこ――新世界の盟主たる眷属けんぞくよ」



 ――!?



  まさかその、忌まわしい計画によってできたあだ名を聞くことになるとは。

 ――しかし、この女……何もない上空から――!?


 混乱していたぼくに代わって妹が問いただす。

 静かな怒りを感じさせる、低い声だった。


「お前は……誰だ……!?」

阿万原あまはらこよみ……こよみとお呼びくださいませ、御子様」

「阿万原!? まさかお前は――」


「そう、『時を刻む国』の者ですわ。察しがよくて助かります」


「――どこからどうやって来た」


 こんな近い距離を、サヤとステーションを結んだ『セルツェ』のネットワークが逃すはずはない。なのにここまでの侵入を許してしまったということは、やはり――


「空から降ってきた、とでも申しましょうか? 女の子は空から降ってくるものなのですよ」


 ……まともに取り合う気はなし、か。

 しかし自ら名乗ってくれて、探す手間が省けたというもの。


「案内してもらおうか。お前の当主・阿万原あまはらあかつきの元へ」

「……参りませんわ。あなた方にはここで早々に立ち去っていただきます」

「……そう言うと思ったよ。――サヤ」

「うん、お兄ちゃん。『セルツェ』迎撃システム、起動――」

「させませんわ」


 ――?! コヨミの拒絶と共に、巨大な何かが上空から振り下ろされ――……


「危ない!」

「きゃっ!?」


 妹を抱えてなんとか避けたが……なんだ!? 

 


 ……巨大な、手……!?



「あら化け物みたいな運動神経ですこと。データ通りのお方ですね。危険だわ」


 コヨミを見上げた、そのさらに上には――……見たこともない巨大な機械がぼく達を見据えていた。


 まるで全能の神が弱々しい下々の有象無象を見下しているかのような……

 これは、ステーションのライブラリーにあったアニメでいう『ロボット』ってヤツだろうか……!?


「こ、これは……!?」

「驚きました? あなた方が思ってる以上に、科学は進歩しているものですよ。あなた方が化石のような宇宙の廃墟で引きこもっている間に、ね」


 人型をした巨大な『ロボット』――って、いうんだっけ?


「美しいでしょう? この『大率タイスイ』は。世界を制圧した圧倒的な『時を刻む国』の技術を前に、ひれ伏しなさいッ!」


 ロボットの手の甲から巨大なレーザーが射出され、地面を焼いていく。

 生身のぼく達ではなんとかそれをかわすのに精一杯だった。


 『セルツェ』のシステムで応戦しようにも、とてもそんな余裕は……

 逃げるしかない。

 び寄せた『タカマガハラ』が来るまでどうにかもたせなければ――!


「ふふっ、どうしました? 逃げるだけで精一杯ですか? 神の御子ともあろう者たちが」


「うわっ!?」


 突然至近距離に現れるコヨミ。


 ……遠隔操作でさまざまなものを操り、瞬時にものを異次元に飛ばすことさえできる『セルツェ』のシステムでさえ人体ほどの巨大なものは飛ばせない。

 いったい、どうやって……!?


「くそっ……サヤ!」

「うん。……遠慮はしない」


 ようやくつかんだ反撃の機会で遠隔操作ユニット『ヴォーラ』の砲撃が完璧に、コヨミの身体をとらえた……はずだった。


「なっ……すり抜けた――!?」


 コヨミは不敵に微笑む。


「私をとらえることなどできやしませんよ……そろそろ、終わりにしましょうか」

「くっ!」


 このまま終わるわけにはいかない――なんとか、なんとかチャンスを窺わないと――でも、どうする!? わからない。わからないけど、とりあえず、逃げなきゃ!

 レーザーが盛り上げた地面にできた瓦礫がれきにまったく気づかず、ぼくたちは足を引っかけて転んでしまう。


 しまった――!


 いつの間にか向かいの崖に追い詰められて……サヤの方が身体が軽いぶん、ぼくよりも勢いよく吹き飛んでしまった。

 

 このままじゃ、落ち――



「サヤあぁぁーーーーーーーーッ!」

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