恥ずかし固め
「錫杖も魔法もなしに戦えと言われても……」
なすすべもなく、壁際に佇みあたふたとする櫻子。
「お、落ち着いてください、種ちゃん先生! パワーだけなら種ちゃんのが上のはずです!」
恭介は櫻子の平静さを取り戻させるように言ってやった。
最終恥装となり、自身のパンティーをマスクとして被られ羞恥心を煽られまくった今の櫻子の魔力量はかつてない数値を示しており、戦闘力がずっと強化されていたのである。
「でも、錫杖がないと……」
確かに素手で殴ったり蹴ったりする戦い方に抵抗はあるかもしれないので仕方ない。
今恭介ができることは、ただただエロい目で櫻子をガン見し、更なる恥辱心を煽ってやることだけであった。
里緒奈戦の際はどうしてもばゆんばゆんと縦横無尽に暴れるおっぱいに釘付けとなってしまい小言をもらったが、今回の相手はまだ恥装になってはいないので、櫻子だけを見ていられた。
「どうしたの、櫻子? この狭いリングの上、逃げ場はもうどこにもないのよ?」
「そ、そんなことは言われなくたって……」
「臆病な……こないのなら、こっちから行ってあげるわ!」
言った瞬間、パンティー仮面がダっと低い姿勢になって地を蹴り上げた。
そしてそのままパンティー仮面は櫻子にタックルをぶちかます。
「きゃぅっ!」
パワーがパンティー仮面より上回っている櫻子である。しっかりと足を踏ん張らせれば耐えられたかもしれないが、何せタックルされたのなんて生まれて初めてだろう。
櫻子は彼女の強い当たりに対処する術もなく、地面に倒され――
「ふふ、喰らいなさい、櫻子……」
「えっ? 何? 何なの? きゃぁぁっ!」
絆創膏三枚の櫻子は、あれよあれよという間にパンティー仮面に逆さに引っ繰り返され、彼女の足で大股を開かされた状態で固められた。
「こ、これは……恥ずかし固め!」
あまりプロレスに詳しくない恭介だったが、この恥辱技はあまりにも有名過ぎて知っていた。
「い、いやぁ~っ! み、見ないでぇっ!」
がっちり固められ、自力では逃れられないようで、櫻子は恥ずかし気に叫ぶ。
しかし恭介は見ないわけにはいかなかった。
昨日は里緒奈のばゆんばゆんのおっぱいに目を奪われたことに苦言を呈された。
櫻子には、何があってもわたしを見続けろと言われたばかりであったのである。
よって恭介だって櫻子が嫌がることを無理矢理するのは心苦しかったが、ここは心を鬼にして、櫻子の大股に拡げられた股間の絆創膏だけを凝視することにした。
今、恭介にできる支援はそれだけだからだ。
「せ、瀬奈……くん!」
こちら向けて大股を拡げた櫻子選手とがっちりと視線が交錯した。
「い、いやあぁああああぁぁっっ!」
恥辱が最高潮に達したか、櫻子が悲鳴を上げ、魔力を爆発させた。
その瞬間、パンティー仮面の拘束が緩んだのか、櫻子はその隙を見逃さず、恥ずかし固めから抜け出し、パンティー仮面から距離を取った。
「よ、よくもこんな辱めを……」
「絆創膏三枚で何を今更……」
「う、うるさいわね! そ、それとこれとは別よ!」
パンティー仮面がふっと笑う。
「さて、これで少しはまともに戦えるようになったかしらね、櫻子?」
恥辱に塗れることで魔力が増し、肉体強化の魔法で身体能力が格段にアップするのである。
あくまでもパンティー仮面は、己の強化のため、櫻子に恥辱を与え、力をすべて発揮させてから倒すつもりであるらしい。
「くっ……な、殴り合いとかしたことないけど……わたしを強くしたこと……心の底から後悔させて上げるわよ!」
先ほどまでは錫杖を失い躊躇していたようだが、あまりの恥辱に踏ん切りがついたか、櫻子はパンティー仮面に殴りかかる。
それを最小限の動きでかわすパンティー仮面。
「幻滅だわ。あなたの力……こんなものなの?」
力やスピードが上がった櫻子であったが、戦い方に不慣れでいまいちそれを活かし切れていなかった。
「こ、このっ……よ、避けるな!」
櫻子が魔力を乗せた、渾身のハイキックを放つ。
しかしパンティー仮面はひょいっとそれをかわし、逆に櫻子の蹴り上げた足を掬い上げ、転倒させる。
「きゃっ!」
パンティー仮面はそのまま流れるような動作で、櫻子に再び恥ずかし固めを決めた。
櫻子は顔を歪めて必死でもがくも、がっちりと決められ抜け出せない様子であった。
「つーか、これってただの恥ずかし固めじゃ……もしや……ふ、フレイヤ・スペシャル……なのか?」
プロレスに疎い恭介が、恥ずかし固めを知っていたのはフレイヤ鈴木の代名詞、フレイヤ・スペシャルのおかげであった。
フレイヤ・スペシャル――どんな体勢からでも恥ずかし固めをかけ相手選手を徹底的に辱しめ、戦意を喪失させるフレイヤ鈴木の十八番であり、彼女を世界女王に導いた最強の恥辱技である。
パンティー仮面の流麗な動きやプロレス技に、彼女の正体がフレイヤ鈴木ではないかと恭介は思ったのだ。
「いや、まさか……」
世界女王にまで登り詰めた彼女が、こんなところでU・N・SU・JIパンツを被って魔法少女をしているはずがないだろう。
「いいや、キョーコ、そのまさかだよ」
隣にいたQBが恭介の心を読んでか言った。
「えっ? マシでか……?」
確かにパンティー仮面の動きはやたらとよく、普通ではなかったが、まさかの世界女王であったとは……
「マズいな……だったらちょっとくらい力が上回っても勝ち目がないかもしれん」
櫻子は竜の苗の保有数ではフレイヤ鈴木に劣っているものの、最終恥装と恥ずかし固め効果により魔力値を底上げし、現状、身体能力だけであればフレイヤを上回っているはずであった。
しかしさすがは世界女王、肉弾戦において、櫻子はフレイヤに完全に抑え込まれる形となっていた。
「まだあっちは本気すら出してないのに……」
フレイヤはまだ恥装を残していた。恥装にでもなられたら、一瞬で勝負がついてしまう可能性すらあるだろう。
やはり魔法のステッキを奪われたのが痛かった。
今、恭介ができることはひたすらエロい目で櫻子のおっぴろげられた股間を凝視することにしかないのだろうか?
「せめてもう少し近づけたら……」
距離が遠すぎた。櫻子の恥辱を煽るには、もっと間近でエロい視線を送る必要があるだろう。
「くっそ……リングギリギリまで近づければ……」
しかしQBのマジック・ウォールに阻まれて、それはできなかった。
「だったらマジック・ウォールを解除してあげようか?」
「えっ?」
「彼女たちの戦闘に直接的な関与をしないという条件で、マジック・ウォールを解除してあげてもいいよ?」
と、QBがいきなりの提案をしてきたのである。
QBは心が読める。
恭介はそれを肝に銘じ、答えることにする。
「わ、わかった……約束する……よ」
魔法のステッキを拾って櫻子に渡したりであるとか変な考えは起こさない。
恭介は、ただただ櫻子の恥辱を煽るための行動以外はしないと心に誓い、QBに制限を解除してもらうことにした。
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