えぴろーぐ
今日も今日とて、天孤は鳥居の上でのんべんだらりん、ほろ酔い加減で参拝客を待っていた。
「おや、あのおちんちん娘……またきおったのか……?」
好いた男のおちんちんを欲しまくっていた清音の同級生であるおちんちん娘であった。
「はてさて、今日はどんな願いをするつもりかの……?」
先日、彼女のために神通力を使用したばかりなので、しばらくは彼女の願いを聞き入れてやるつもりはなかったが、他に客もなく、退屈しのぎに彼女の心の中を覗き見てやることにしたのである。
彼女は相も変わらず律儀に参拝の作法を守り、神殿前までやってくる。
その前にお賽銭の確認。
天孤は彼女が開いた財布を覗き込み、
「ふむ、せっかくじゃ、その諭吉さんを放り込むなら特別にそなたの願いを聞き入れてやらんこともないぞ……?」
今は姿を消しており、彼女に届かない声を彼女の耳元で冗談交じりに囁いてやった。
しかし彼女が手に取ったのはワンコイン。
彼女は姿勢を正して一揖してから、手にしていたそれを賽銭箱に放り投げた。
そして鈴を力強く打ち鳴らし、二礼二拍手一礼し、手を合わせて口の中で呟く。
「神様、先日はありがとうございました」
感心。感心。叶えてもらった願いに対しての御礼参りであったらしい。
「それと神様――」
どうやらついでに新しい願いをしていくらしかった。
まあ、あれだけの奇跡を見せてやったのだから、どんな願いでも叶うと思って、手を合わせてくるだろう。
しかし彼女は、どんな願いをしてくるのだろう? またおちんちんに塗れた願いだろうか……?
しばらくはもう、彼女のために神通力を使ってやるつもりはないが、どんな願いをするか興味はあった。
「神様……今後、わたしが卑しいお願いをしても叶えないでください」
彼女のその願いを聞いて、「んんっ、何じゃそれは……?」と天狐は顔をしかめた。
願いを叶えるな、という願いを聞かされたのは、神使になって初のことであった。
天狐は彼女の真意を確かめるため、手を伸ばし、彼女の心に直接触れ、唇の隅を僅かに歪めて笑う。
「なるほどのぉ~……」
どんな願いを叶うと身をもって知った彼女は、弱き心でそれを負の方向に行使してしまうことを懸念していた。
つまり好いた男を神通力で無理矢理に惚れさせたり、ライバルを蹴落とすような卑劣な真似をしたくはないという決意表明であった。
「まあ、その決意は胸に止めて置いてやるとしようかの」
ちなみに、おちんちん関連のお願いは彼女にとって卑しいお願いではないらしく、今後もどんどこしてくるつもりであるらしかった。
そして彼女は神殿を後にする。
「おや、また、一人……」
天狐はおちんちん娘を見送ると、入れ違うようにやってきた、参拝客に目を留めた。
制服は異なるが、参拝客は清音や先ほどのおちんちん娘と同じ年頃の娘だった。
最近、着実に参拝客が増えてきている気がした。天狐もそれなりに仕事をしてきているから、口コミでこの神社の噂が広がっているのだろう。
彼女もまた、礼儀正しく、参拝方法を守っていた。
「ふむ、感心、感心。そうじゃな、今日はこの娘の願いを聞いてやろうかのう」
そして彼女は神殿に訪れ、願い事を口にする。
「どうか瀬奈君が、わたしのおしっこを――」
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