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「ご、ごめんなさい……だ、大丈夫と思ったんだけど……」
しゅんとなった結愛が今日何度目かの謝罪をしてくる。
既に拭き取ったが、結局、恭介の部屋の床は、結愛が水浸しにしてしまったのである。
「いや……こっちこそ……ゴメン」
恭介は調子に乗ってしまった。
結愛のお尻を叩いていたわけだが、途中で気分が高揚し、やめてくれと言う結愛を無視して叩き続けてしまったのである。
そうしたら、この有り様というわけ。
「に、臭い……の、残ったりしない……よね?」
と、結愛が不安げに訊いてくる。
「えっ? ああ……大丈夫っしょ?」
恭介は床に顔を近づけて、鼻を鳴らそうとすると、
「そ、そんなの嗅がないでよぉ~っ!」
顔を真っ赤にした結愛に突き飛ばされ、抗議された。
「お、おう……すまん」
恭介の前で何度もお漏らしして来た彼女であるが、どうやら臭いを嗅がれることには抵抗があるらしい。
「せ、瀬奈君……今日は何か……本当に、ご……ごめんなさい」
更に謝る結愛。
「いやいや、本当……こっちこそだしそんな謝らなくても」
「う、ううん……じ、実はもう一つ謝らなきゃいけないことがあって……」
「えっ? まだ……って、何? 他に何かあったっけ?」
「う、うん……これ……なんだけど……ね?」
結愛はそう言うと、トートバッグからもう一つお弁当箱を取り出して、
「さっきのお弁当、完食すると思わなくて、もう一つちゃんとしたの作ってきてて……」
「んっ? ちゃんとしたのって……何? さっき俺が食ったやつはちゃんとしてなかったとでも?」
「う、うん……わざと失敗した」
「んっ? 何それ? 何でそんな……」
普通は失敗作をわざと渡すなんてことしないと思うが……
「ごめん……なさい。瀬奈君に叱って欲しくって」
「えっ?」
「色葉ちゃんがお尻叩かれたって……だ、だからわたしも叩いてもらわなきゃって……」
どうも今日は結愛の様子がおかしいと思ったら、そういうことであったらしい。
どうやら彼女は、色葉がしたことは自分もすると決め、わざと怒らせて――お尻を叩かせるように恭介を誘導しようとしていたらしかった。
お弁当の件も、アイスティーにおしっこを混入させたという嘘もその一環であったのだ。
だがそれはそうと、一つ誤解を解いておく必要があると恭介は思った。
「あのー、結愛ちゃん? さっきも言ったと思うけど、俺、別に女の子のお尻を叩きたいとかそーいうのないからね? そこだけはとりあえずわかっといてね?」
「えっ? で、でも……さっきすごい愉しそう……だったよ?」
「い、いや……まあ……ちょっと変なスイッチ入っちゃったけどもさ……」
確かに恭介は、膝に載せていた結愛を逃がさないようにがっちりと押さえ、彼女がおしっこを漏らすまでついつい叩き続けてしまったのである。
「瀬奈君……も、もしよかったら……ま、まだ……いいよ?」
結愛はスカートの裾をめくりあげ、太腿を全開にしながらそう言ってきた。
恭介はチラチラ見やりながら、ゴクリと息を呑み込んで、
「……い、いや……ほんと……別に……うん。いいから」
下手に叩き続けたら変な性癖に目覚めてしまいそうだし、これ以上は結愛の可愛いお尻にも優しくないので断った。
「え、遠慮しなくても……いいよ? わ、わたしたち付き合ってるんだし」
頬を紅潮させ、潤んだ瞳で迫ってくる結愛。
こんな顔をされたら断り切れないかもしれない。
「と、とにかく今日は……ね?」
「だ、大丈夫……だよ? 二回したから、もう床を汚したりしないから」
「そ、そういう心配してるわけじゃ……」
どうもこのままだと結愛に押し切られ、再び彼女の生尻を叩くことになりそうだな思ったその時だった。
ピンポーンと、階下よりインターホンの電子音が響いてきのである。
「あっ! だ、誰か来た! ちょ、ちょっと待ってて!」
ケツ叩きの誘惑を断ち切るのに丁度いいタイミングの来客に感謝しつつ、恭介は結愛を振り切り部屋を出て、階段を駆け下りる。
しかし誰だろう? 車の音はしなかったので宅配便の類ではなさそうだが……
まあ誰でもいいかと恭介が玄関のドアをガチャリっと開け放つと、そこに佇んでいたのは、
「こんにちは、恭ちゃん?」
色葉であった。
「おう……ちわーっす。つーか、玄関からとか珍しいのな」
「うん。カーテン閉まってたから……」
と、どこかむすっとした表情で言う色葉。
そういえば鍵も閉めていた。
もしや訪ねてきて窓ガラスを叩いたが、恭介の方は尻を叩いている最中で気づかなかったりしたのだろうか?
「恭ちゃん? 結愛さん…今、来てるんだよね?」
色葉は玄関に揃えて置いてある結愛の靴を見やって言ってきた。
「お、おう……き、来てるね?」
「カーテン閉めて、二人っきりで何してたの? 外から見られたら困ること?」
「えっ? い、いや……困らねーよ。昼メシ食ってただけだし……それからちょっと話してただけ……ですが?」
と、恭介は頬をピクつかせつつ答える。
「それ、カーテン閉める必要があるの?」
「うーん? まあ……な、ないね……?」
「結愛さんにも訊いていい?」
「え?」
「上がらせてもらうね?」
色葉は言うと、靴を脱ぎ捨て、ずかずかと人ん家に上がり込んだ。
「お、おい……?」
恭介の言葉をまるで聞こえてないように、色葉は階段をずんずん上がっていく。
「おい、どうしたんだよ色葉? 結愛にまで訊く必要あるんか?」
ちょっと大きな声音で色葉に言うも、完全に無視された。
しかしそれでも構わない。
今のはどちらかと言うと、恭介の部屋にいる結愛に向けて言ったからである。
色葉と一緒に部屋に向かうが、オムツとか出しっぱなしになっていたら片付けといてねとそんな意を込めてのことである。
そして色葉は恭介の部屋の前に立つと、
「入りますね、結愛さん」
と、室内の結愛に声を掛けつつドアを開け放ち、
「こんにちは、結愛さん」
「こ、こんにちは、色葉ちゃん……ど、どうしたの?」
「結愛さんこそ、カーテンを閉め切って、恭ちゃんと何していたんですか?」
と、どこか語気を荒げつつ色葉。
恭介は慌てて割って入る。
「べ、弁当食ってただけ……だよな? 結愛?」
「恭ちゃんには訊いてない」
色葉は恭介をキッと睨み付けてから、
「そうなの? 結愛さん?」
と、結愛に再び訊いた。
「う、うん……瀬奈君に食べてもらおうかと思って」
「じゃあ何でカーテン閉め切ってたんですか? エッチなことしてたからじゃないんですか?」
色葉の質問にドキッとする恭介。
もしや結愛は、ありのままにあったことを話してしまうのではないかという不安が過った。
固唾を呑み込みつつ結愛の回答を待つ恭介。
そして結愛が口を開く。
「えっ? そ、そんなことは……エッチなことなんて……して……ないよ?」
彼女はそれを否定し、恭介がホッと胸を撫で下ろしたその後、
「ただ……お尻を叩かれてただけ……だよ?」
と、続けて結愛は言ってしまったのである。
「ちょ、ゆ、結愛……ちゅわぁん?」
どぎまぎとなる恭介。
「恭……ちゃん……ひどい……よ」
肩を震わせつつ顔を伏せて言う色葉。
「い、いや……別に……うん。ちょっと……叩いていたには叩いていたけども……って、えっ? あ、あれっ?」
そこで恭介は彼女の異変に気付いて、
「ちょ……な、何で泣いて……んの?」
と、訊いた。
色葉に罵られるのではないかとビクついていた恭介だが、怒るどころか彼女は目にいっぱいの涙を溜めていた。
「だ、だって……恭ちゃん……色葉のお尻は叩かないじゃん」
「……叩かないって……えっ?」
何故それで泣くし。
「ひどいよ……結愛さんっばっかり贔屓して……」
「いや、それは……結愛がしくじりまして、流れでそうなっちゃいまして……」
「じゃあ、色葉のお尻も叩いてよ!」
「……な、何がじゃあ、なのかね?」
「い、いいから、叩いてよ!」
色葉は自棄気味に言うと、スカートの下に手を突っ込んで、ショーツをずり下げて、恭介に尻を向けてスカートをバサッと捲り上げた。
「こ、こりゃっ! 色葉……!」
たじたじの恭介は、色葉のお尻と結愛の顔を交互に見比べる。
「ね、ねぇ……せ、瀬奈君……? わたし……お願いしたいことあるんだけど……いい……かな?」
結愛が伏し目がちに訊いてきた。
「えっ? な、何……? 今、それどこじゃ……」
こんな状況で、一体何を願うというのかと、恭介は一蹴するも、
「せ、瀬奈君……わ、わたしも……叩いて?」
結愛は頬を赤らめつつ、スカートを捲り上げて言った。
「…………」
一体何が何やら。
色葉の突き出された大きなお尻と、結愛の可愛らしい小振りのお尻がこちらに向いて、並んでいた。
「恭ちゃん……は、早くしてよ!」
「せ、瀬奈君……いいよ?」
二人は自身の恥ずかしさを紛らわすように、恭介を急かさせる。
「……んなこと言われても……」
恭介は迷った。
叩くべきか、叩かざるべきか。
叩くのであれば、どちらから叩くべきなのか?
そしてこの時、恭介の脳裏に四つの選択肢が浮かんだ。
A・結愛のお尻は叩いたばかりで休息が必要だ。
また、色葉のでんとした安産型のお尻を叩いて、尻肉をぶるんぶるんと震える様子を見学したい。
まずは色葉のお尻を叩くことにする。
B・今日の色葉は彼女ではない。彼女でもない女性の生尻を叩くわけにはいかない。
色葉は放置し、ひたすら結愛の小振りなお尻を叩くことにする。
C・どちらか一方のケツだけを選べやしない。
お前たち、二人のケツが俺のドラムだ!
そんなわけで恭介は、二つのケツを並べて乱れ打つことにした。
D・二人だけ脱ぐなんてずるい。
恭介は、パンツを脱いでおちんちんを露出させることにした。
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