209/八月十四日1~脅え
八月十四日。
(何。怒ってるんだよ)
そういう自分がまだ、アスミに対してイラついている。もう、一緒にいられる時間も少ししかないかもしれないのに。
一軒一軒の壁が、アートのようなもので彩られている。
アートは繋がりの象徴であり、癒しの効果を念頭においたものであり、そして住居に絵を描くということは、その家があくまで「仮」の住居であるということを意味している。
百色に彩られた小さな構築物が並ぶ先には、大きな構築物が建設されている現場も見える。被災者が入居するための災害復興住宅は今日も建設中。がたいの良い工事のおじさん達がいつものように行きかっていた。
(きっと、また壊れる)
復興の足音に背を向ける。
(震災の日も。当日まで幸せだった人がいたんだ)
ジョーはまた街の音が聴こえない、そして人がいない場所を目指すように歩き始めた。
(そんな幸せな人を守るために、誰かは幸せを手放していたんだ)
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