205/私が消えてしまったあと
「大事な話なの。ジョー君。志麻。聞いて。最初に、ありがとう。私が消えた後のことを託せる友達と出会えて、本当に良かった。
今、話したように、『私』はあと七日間で消えてしまう。だから、これは私の役回りなの。ちょっと、ホっとしてもいるくらいなの。世界のために。街のために死ねるなんて。こんな自分にも、意味はあったって感じかな。
八月二十日の太陽が昇る頃、真実大王の封印は解かれるわ。だから、その少し前、『私』が消えてしまう直前に『氷』の封印を解除して、私は大王にもう一つの切り札。『マグマ』を仕掛ける」
「『マグマ』も、表面通りの熱や炎による攻撃ではないのね?」
志麻が、自分がやるべきことを正確に受け取ろうとするように、確認する。
アスミは頷いた。
「『限定的な超新星爆発のようなもの』とだけ、言っておくわ。いずれにしろ、『氷』と同様にまだ地球上にはない類の概念だから、大王はすぐには知悉できない。これが、私達に残された大王を倒す唯一にして最後の手段だと思う。ジョー君と志麻には、援護をお願いしたいの。周囲に被害が出ない場所。そう。海。僅かな時間で、海に出たいわ」
「その『限定的な超新星爆発』で、大王と一緒に、アスミも消えてしまうのね」
志麻は、震える声を、丁寧に取り繕っている。
「うん。でも、どうせ『マグマ』を使わなくても、『私』は消えちゃうんだから。ね」
なだめるように、アスミは志麻の前髪を指で梳いた。
続いて、正面からジョーの瞳を見つめた。
「ジョー君。本当に今までありがとう。ジョー君はこんな私にも、楽しかった思い出をくれた。ジョー君はこんな私でも、本気になって助けようとしてくれた。お世話になりっぱなしで悪いけれど、最後のお願いだから……。ねえ、この『私』が消えるその瞬間まで、手助けしてくれる?」
アスミの正直な告白を。少女の精一杯の真摯さを。
しかし、ジョーは受け止めることができなかった。
瞳をそらして、地面に視線を落とす。振り絞るように声を出す。
「承服しかねる」
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