195/機構小竜
ジョーが己の肉体を武器にした最後の攻撃を仕掛けようとしている時、一方でアスミは志麻の方を振り返り、眼球運動による暗号を送っていた。全てが終わる前に、仮説の二つ目を確かめておかなくてはならない。
逼迫した事態において、アスミに全幅の信頼を寄せる志麻は、暗号の内容を訝しみながらも、すぐに行動に移る。
「『
フェラーリの窓を再構成して生み出したのは、
先の愛護大橋の戦いで使用したガンディーラは、蝶女王から大王に報告されている可能性がある。だが、この小竜は、大王にとって初めて目撃する存在であるはずである。その点に、アスミの仮説の検証の核がある。
雄たけびをあげて飛び掛かってきた小竜に対して、大王は一時ジョーから視線を外し向き直ると、これまでと同じ様に、掌を掲げ、大王に接触する直前で制止させた。
アスミが見逃さなかったのは、ここでまた、大王は一度大きく息を吐いた点である。
「硝子を元にした竜型の細工」
機構小竜ジーラスをそう言い換えた大王は、続けて同じように返しの拳を撃ち込む。
「その存在よりも、我は強い!」
すぐ様ジーラスは爆散し、キラキラと硝子の破片が風に乗って舞った。
「もはや、大型の機構怪獣も作れぬか」
大王が、志麻に射抜くような視線を向けた最中、アスミの心は、希望と絶望に揺れた。
(ああ、この仮説は、いけそうだ。少しだけ、糸口……)
恐らくは、大王本人も気づいていない、『
アスミは、こんな時でも冷静に思考できる自分という人間を皮肉に思った。
(でもまあ、これしかない)
アスミは左胸に手を当てた。自分という仮初の構造物。母、
母に感謝の念を捧げた。この
そっと志麻を見やる。
(見破って、対策を立てるのは、あんただからね)
結局アスミは、いかにその内に
(今から、七日間だけ時間を贈るからね)
アスミは、ゆっくりと大王に向かって歩を進め始めた。
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