194/残された武器

 エッフェル塔が去った後に、ジョーに訪れた想念はこうだ。誠意を重ねて築いた人と人との関係も、ある日、唐突に刃が振り下ろされて切断される。途切れる。丁寧に積み重ねて構築した存在も、予期せぬ暴力的な出来事がやってきて、全て壊れる。残骸になる。どこかで、胸の内にずっと抱いていた感覚だ。


(それでも)


 諦めるわけにはいかないから、残された手持ちの武器でがんばるしかない。残された手持ちの武器って? それは、鍛え抜いても、大王が偏角と嘲笑するこの国の中の競争――全国大会でさえ、一回戦すら勝てなかった、この体だ。なんて、頼りないんだ。


 ジョーは左拳を握りしめ、腰を落とし、照準を絞るように右手をかざした。ひい祖父から教わった古流柔術の型が身に染みついていたためにそう構えたに過ぎない。勝機は、なかった。

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