171/Aドライブが必要
早朝、ジョーが志麻の家を訪れると、まずは解析を依頼していた
「フロッピーディスクよ」
「何だ、それは?」
「うーん。十年前くらいまではまだ見かけたらしいのだけど。PC用の記録媒体。その後、CDになったりMOってのがあったり。今だとDVDとかUSBメモリに相当するものよ」
「へー」
「で、オークションでAドライブ付きの古いノートPCを落札して、中身を見てみたんだけど……空っぽだったわ」
「マジで?」
「そ。魂のない器。百色ちゃんの話、やっぱり夢でも見てたんじゃないの?」
百色ちゃんとの
「じゃあまあ、この件はこの件で。それは志麻が持っててくれ。Aドライブ付きのパソコンなんて家にないし」
「いいけど。これ、1.4メガくらいしか入らないから。使い道はあんまりないかも」
そこで話題は次に移った。
「志麻も、アスミの誕生日に何かプレゼントとかするのか?」
「するわよ。私なりに、アスミが今一番欲しいものを準備してるつもり」
「へぇー」
それが何なのか。直接は聞かなかった。ジョーとしては、自分で考えてそこに辿り着かないといけないと思ったから。
「私。アスミの裸の写真いっぱい持ってるんだけど、隅々まで凝視して今考えてるの」
その言動には、ジョーはちょっと引いた。
「し、志麻は本当にアスミが好きなんだなぁ」
「好きよ。宮澤君が考えてるような意味とは違うかもしれないけれど」
穏やかな語り口だが、志麻の言葉には内に秘めた熱情のようなものがこもっている。その熱は、少しジョーにも伝播した。
「じゃ、ま、俺も考えてみるわ」
「宮澤君は」
そこで何故か、志麻は目を伏せた。
「お母さんに愛されてきた人だから、アスミが本当に欲しいものは分からないかもしれない」
ジョーも欧州に行っているというアスミの母・アリカ
志麻はジョーと視線を合わせないまま、こう告げて話を打ち切った。
「でももし、宮澤君がアスミの本当の願いに気づいたら。その時は、一人で叶えようとしないで、私にも連絡頂戴ね」
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