164/戦いの準備状況
自分が消えてしまう前に、お母さんにもう一度会いたい。自分の気持ちに確信を得たアスミは、S市の駅周辺に歩を向けていた。おそらくは自分のこの最後の願い。父の話の含意を読み解くなら、叶えるには、自分は間もなく襲来する真実大王に勝利しなくてはならないのだ。
仮に蝶女王・エルヘンカディアが予告した二週間という期限がぴったりだったとしたら、真実大王の襲来日は八月十四日ということになる。あと三日。
もちろん、これまでの猶予期間に前もって準備は終えている。こちら側に有利な結界の触媒の配置。アスミの能力・志麻の能力にとって有利な場の把握・シミュレーション。そういったものを、敵が空路・海路・陸路でやってくるのを想定して、終えている。S市に入る経路というのは、そんなに多くない。空港・港・大きい国道。一般人への被害を出さないことを念頭に置くなら、重点的に警戒すべきはそんな所だった。加えて。
(新幹線に乗ってやってくるとは、思えないけどね)
S市へのアクセスの要所である駅も、一応念頭に置いておく。一通りの配置や検討は終えていたが、まだ敵が駅から現れた場合に、いかに一般人のいない結界領域へ誘導するかのシミュレーションが甘いと思って、こうしてS市駅前のペデストリアンデッキに赴いている。
(大王だか何だか知らないけれど)
一般人の被害を出さず、こちらで準備済みの結界領域まで誘導できれば。蝶女王が呼称した敵の
アスミと志麻の能力で、近くの結界領域である公園まで移動させる。そこで勝負。そうした駅から大王が現れた場合のイメージを確認する頃には、時刻は夕刻になっていた。
(この街を守って。お母さんに会おう)
アスミは、今は自分の心に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます