56/アスミからの伝達事項(1)

 同時刻。再開発地域から北に徒歩十分の距離。ちょうど、新興の開発地域と昔ながらの商店街が結節する位置にある区の図書館前に、ジョーとアスミの姿があった。


 図書館は既に閉館時間を向え、周囲には夕闇が落ちてきている。その場にある頼れる光源は、少し離れた位置にあるコンビニエンスストアの光のみだった。


「この図書館、懐かしいわよね。ジョー君と来て一緒に本読んでたなって、ついさっき思い出しちゃった」


 それはそれで、ジョーにとっても大切な思い出であるが。


「どうして、こんな凝った真似をしたんだ?」


 志麻に陸奥とカレンをあてがって、ジョー一人をこうして呼び出したことについてである。


「確かにちょっと悪かったけど、でも、志麻には聞かれたくない話もあるのよ」


 索敵用の機械鳥や機械鼠の管理もままならないほど、ちょっと志麻には陸奥とカレンでいっぱいいっぱいになってもらってるのだとアスミは付け加えた。


「二つ、あるわ」


 そう言って、アスミはエントランスホール横の石のベンチに腰かけた。


「ジョー君には、志麻の存在変動律が、何色に見えてる?」


 存在変動律には、色が見える時がある。ジョーも例えばアスミが能力を使う時の色と、志麻が能力を使う時の色が違うことには気づいていたので、質問には簡単に答えられた。


「青だ」


 ちなみにアスミは赤色である。それぞれの色が何を意味しているのかは、ジョーにはまだ分からない。


「そう、まずは一つ目、明日から後、私たちが超女王と戦闘になったとして……」


 アスミは真剣な眼差しで告げた。


「志麻の存在変動律の色が『透明に近い青』に変わったら、できるだけ早くその場から逃げて」

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