第三話「拠り所の守り人」
49/夏休みの学校
第三話「拠り所の守り人」
一年生に割り当てられた学校のロッカースペースは、風通しが良い昇降口の近くにあり、またこの時間の陽射しからは影になる位置にあるからだろうか。外界の熱から隔離されて、ひんやりとしている。自分のロッカーから日本史と世界史の教科書を取り出したところで、ジョーのスマートフォンの通知音が鳴った。リンクドゥの秘匿グループ「
リンクドゥでもアスミや
例えば、牛人との戦いから一週間ほど経った現在、校舎の三階が倒壊したため、ジョーの高校は、夏季講習を一時停止する旨が生徒及びその家庭に伝えられている。ただし倒壊の理由は、爆発事故及び、原因は調査中となっており、何らかの情報操作が行われているのが、当事者だったジョーには分かる。あの夜のことは、アスミが言っていたように「なかったこと」になっている。あの日、戦闘の後、
リンクドゥに届いたメッセージには、現在ジョー、アスミ、志麻で対応している収奪者側の敵、「
短く了解した旨の返事を返して、ジョーもロッカースペースを離れる。夏季講習が停止していたので、意欲のある家庭の生徒は地域の学習塾や予備校に流れ始めていたが、ジョーは少し、勉強は勉強でも自分として興味が湧いてきたことを調べてみようと思っていた。そのための最初の参考文献が、今日取りに来た二冊の歴史の教科書だ。特にジョーに一年次からの積極的な受験のための勉強を求めるでもない両親も、何とはなしに、好きにやればいいと言ったことを伝えてくれている。
立ち去り際、倒壊した三階に向かって続いて行く階段が、封鎖されている場所を通った。
せっかく一学期の中ごろに、二年半前の地震のダメージからの修繕が終わった所だったのに、また修復しなければならないな。
少し遠くには、街のいたる所で作業中の重機が発する重低音が聴こえている。
壊れては作り直しの、繰り返し、か。そんなことを想起しながら、ジョーは教科書を入れた通学鞄を片手に、校舎を後にするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます