28/空瀬神社

 早朝。ジョーは大きな木の影に避難しながら、アスミを待っている。地面が、石垣の石が、既に熱を持ち始めていて、本日も日中は気温が高くなりそうである。


 沿岸部に位置するY地区は、二年半前の震災における津波の到達地域である。二年半経った現在はかなりの程度片付けが進んでいるものの、場に立体的な建造物はまだ見られず、否応なしに全てが流されてしまったことが意識される。折れた流木、壊れて放置されたままの自動車。場所によって遭遇するそんな光景が、S市の中心部とはまた現在の状況が違うことを物語っている。


 空瀬からせ神社じんじゃは、都市化している平野の中心部よりは、そんな沿岸方面のY地区に近い場所にあった。


 中学生の時に市街に位置する現在のマンションに引っ越すまでは、ジョーもよく遊んだテリトリーである。自然、幼少時のアスミとの思い出も、この近辺に集中している。アスミの家はこの神社の宮司ぐうじの家系であり、神社の敷居内が二人の遊び場であった。記憶をたどれば、この御神木にも登ろうと試みてアスミの父親に怒られたこともあった。


 フレアのスカートに簡素なトップスという装いのアスミが、家からちょっと出てきましたという感じで歩いてくる。


 ジョーは片手をあげて合図する。


「じゃあ、オントロジカのこととか、説明するわね」


 そうアスミが切り出したので、ただ思い出の確認にこの場を再び訪れたわけではないのが、意識させられた。

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