020_1410 手荒い歓迎Ⅴ~Multitasking -Devil & Stray Cat-~
『フォーちゃん元気してる~?』
「んぁ……?
修交館学院の
『学校職員の結婚式の二次会。幸せ絶頂な新郎新婦の姿にやさぐれて飲んでます』
「……パーティ押し付けてそんな場に行ってるの、
『大事だよ!? 部下の冠婚葬祭なんだから!?』
「二次会まで大事でありますか?」
『だって式は日中だったし、わたしは仕事で出てないから、せめてこっちくらいはツラ出さないと』
「本音は?」
『未婚のイイ男いないかと
「……まぁ、頑張るであります」
独身恋人なし二九歳の考えに理解を示せず、しかし否定するのもどうかと思ったのか、野依崎は投げやりに返す。
だが、つばめが電話をかけてきたのは、こんな話をするためではないと、ふざけた口調を改めた。
『フォーちゃんに頼んだ件、どうなってる?』
小学生で
眠そうな面持ちをわずかに引き締め、その報告を始める。
「
小さな肩で受話器を支えながら彼女がキーボードを叩くと、ディスプレイに複数のウィンドウがいくつも重ねて表示される。
それは独自に組み立てたOSを駆使し、ハッキングを慣行して不正に手に入れた情報――日本の法務省に管理されている、旅行者の出入国記録だった。
「
そしてその司令部は、ワールブルグ公国に置かれている。
「軍事行動なのに、まさか普通の旅行客と同じように入国してくるとは」
『休暇で旅行ってことはないね?』
「家族や恋人のような女の連れのない、男ばかりのグループが複数となれば、旅行と見なすのは無理過ぎるであります」
『日本での滞在場所は?』
「ビザで申告されているホテルには、そのような外国人が滞在している様子はないであります」
『となると、日本でも協力者がいて、兵力の受け入れ態勢が整ってるってことか……』
「となると、調べるのに時間がかかりそうであります」
多国籍軍が動くということは、一部の権力者の暴走や策略とは思えない。しかしながら表立っての派兵とは考えにくい。
単純明快ではない、政治絡みのややこしい『大人の事情』に違いない。
そもそも
「
『行き着けの飲み屋のタレコミ』
「あぁ……」
『飲み屋』が示す意味が伝わったので、野依崎の眠そうな無表情が、微妙な感じに歪む。
「襲撃が予想されたから、今日のパーティに
『ま、そんなところ。相手の意図をハッキリさせておきたかったし、変なタイミングで仕掛けられるよりマシだから、みんなには悪いけどエサになってもらった』
『このこと、みんなには秘密だよ?』という続きの言葉に、野依崎は幼い
これだから、彼女を信用できないのだと。
結局は部員のパーティ参加も、つばめの策略だった。
「
普段の態度から、万事無関心かと思いきや、野依崎はやや不安げに問う。
『大丈夫だいじょぶ。装備を持ってる《
「
『…………内緒でね?』
沈黙の長さから考えるに、やはり後が怖いらしい。
「部外者のミス・クニッペルも巻き込むでありますが?」
『それも心配むよ~』
野依崎の心配を真っ向から否定し、つばめは声を気楽げなものにして笑う。
『ナージャちゃん、めっちゃ強いし』
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