080_1810 神々の詩Ⅱ ~戦争鳥~
(ヤベ……)
獣の金眼では感情は読み解けずとも、ぶれのない低いトーンの
なぜ、樹里がここに。それも変身し、明らかに交戦してまで。
二重の意味で更なる冷や汗が流れる。
【結たちはマンション、先輩が差し向けた皆は寝てもらいました】
考えを読んだような
足止めの本命は彼女の友人トリオ。部員たちに
それにしても、《ヘミテオス》との交戦経験がある《
更にその上で、リヒトとの戦闘を介入してくるとは。
『それで』
『この戦い、やっぱり私が先輩に心臓を移植しちゃったせい?』
「んー……それだけでもないかな。それが一番の理由だけど」
いつの間にか変形して停車する《コシュタバワー》に体重を預ける悠亜が答える。ツーリングの休憩中のような態度のまま、雲の上の思考回路を披露する。
「《
『《
「えぇ。そう思うわ。だけど文句はつばめにお願いね。私も渋々事後承諾してばかりだし」
人は生まれながらにして不平等なものだ。遺伝子レベルで運命が決められている《
政治家にとっての《魔法使い》とは、外交・内政の駆け引きの手札。
企業人にとっての《魔法使い》とは、新たな可能性を持つ金の成る木。
軍事家にとっての《魔法使い》とは、自然発生した生体兵器。
それが《
だから樹里が抱く純真さは、
「《
『《ヘミテオス》同士のいざこざは、なにも解決してない。だけどここで先輩を捨てるってこと?』
「ケジメ。私はどっちでもいいけど、リヒトくんにしてみれば、このままなし崩しに、ってわけにもいかないでしょ」
妻と交代し、夫が新たに《魔法》の光を宿しながら、言葉を引き継ぐ。
『つーことだ。ジュリ。そこをどけ』
『最後に……先輩を、殺すつもりなんだ?』
この戦い、樹里は関係ない。
それに彼女が選ぶべき道でもない。
十路はそう思っている。
『あぁ』
『じゃあ、殺すよ? 私が、
だが改めて、あっけなく彼女は違う選択を行った。これ以上ない明確な意思と共に、家族でも敵となることを――否、十路を選んだ。
さすがにここまでの強い選択は、誰にとっても予想外だった。しばらく風の音が支配し、遠くの海から船の汽笛が聞こえるくらいに。
「…………ぶっ」
吹き出した悠亜が沈黙を破った。
十路にも無意味な戯言にしか聞こえなかった。
そして樹里を鍛えたのは悠亜とも聞き、彼女の強さは垣間見ている。
戦闘生命体としての全能を解放しても、樹里が
「面白……」
大爆笑こそ堪えたものの、腹を抱えて体を折り曲げて、笑いの息をひとしきり吐き出して、一転。
「やれるものならやってみなさい」
悠亜は邪悪に
そして寄りかかっていたオートバイから立ち上がり、己に命じる。
「《
風が渦巻き、巻き上げられた砂塵が悠亜の身を隠す。
ハルファスとは、
砦を建造し、武器庫を満たし、軍勢をテレポートさせるなど、戦争に特化した能力を持つ。
ヒメモリバト・コウノトリといった鳥の姿で現れるとされ、人を驚かせるようなインパクトはない。
また召喚の代償を一切求めず、積極的な肩入れをすることから、人間に近しいと感じるかもしれない。
だが、やはり人間とは異質で、危険な存在だ。
代償を求めないのもある種当然。この悪魔の加護を欲するのは、戦争を起こす人間なのだから。悪魔は屍山血河を見るために、先払いで加護を与えるに過ぎない。
更には次席――
双方とも加護を得た陣営同士の戦争は、阿鼻叫喚の地獄絵図を作り、共倒れになる。さぞ邪悪な悪魔を歓喜させるに違いない。
『いいわ。そこまで言うなら、あなたも試してあげる――《
旋風が力を失う。低出力のジェット推進音を響かせ浮遊しているので、風は完全には収まらないが、その姿が
他の『管理者No.003』たちは、化け物とはいえ生き物だった。
だが戦闘生命体となった悠亜には、生物的要素は一切ない。非現実さの方向性が、流麗と評することもできる。
オートバイの部品を内包した、ガラス製の戦闘機とでも評そうか
戦闘機としては小型の、素材不明の透けた
『気まぐれで『
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