070_1000 3rd strifeⅨ ~一念通天~
それで戦闘が終わったわけでない。
「全員報告……! こっちはひとまずピンチを脱出……ですけど完全に相手を倒したわけでもねーですわ……」
完膚なきまでに破壊した
戦闘機は撃墜したが、乗っていた『羽須美』は離脱したのを確認した。常人ならパラシュートなしに落下して無事で済む高度ではないが、《ヘミテオス》はその限りではない。
そしてコゼット自身も無傷ではない。短時間なので極低温の影響はまだ無視できても、その後に壁や家具に叩きつけられた打撲、その後に戦闘機に追いかけられた回避機動による内臓損傷は無視できない。
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「敵 《使い魔》、健在です! 現在牽制中!」
『尻尾』も『爪』も持続時間が切れた。樹里は拡張部品を外した長杖を構えて、《
紫電が一直線に伸びた先、神戸港の真上にだろう位置で、小さな点が動いた。人間には絶対に回避不可能な光速の攻撃を、《
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口を開くのも
『死んでるとは思えません。まだ戦わないとならないなら、ボコボコにされたので結構ピンチです』
校舎の狭間は大小さまざまなコンクリート片で埋め尽くされ、小山になっている。その下は『羽須美』はいるはずだが、既に抜け出ている可能性も否定できない。
近くの壁に寄りかかり、荒い息を吐きながらも、ナージャはできる限りの戦意をかき集めて、油断なく瓦礫の山を見つめた。
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『相手
だが双方共に生きている。
《ヘミテオス》の
南十星はそれを遮蔽物にした分マシだ。身じろぎすると、焼け焦げた皮膚や服がはがれて、中から再生されたばかりの新しい肌が覗いた。
動けるようになるまで、まだ時間がかかる。
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出血が止まらない。量は大したものではないとはいえ、原因を考えれば危機感を覚える。
それに嫌な寒気も止まらない。
『継続戦闘は可能であるものの、《ハベトロット》が中破……』
しかし体調には触れず、野依崎は戦況報告だけを簡潔に無線に載せる。装備の状況だけでも、継戦能力に問題あるのは充分伝わる。
『『
電磁流体カッターに叩き込み、一瞬で下半身が血煙と化したが、そこまで。破壊の勢いに引きずられるように、『羽須美』の上半身は飛んで、山のどこかへ落ちていった。
脳が無事なら不死に近い再生能力を持つ《ヘミテオス》は、あの程度では死んでいない。
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『羽須美』は、樹里以外の支援部員たちが戦った、四人だけではない。
構内には更に、裏山に出現してすぐに逃走した、もうひとりがいる。
さすがに学生たちは退避して無人となった屋外を、
彼女が向かう先は一号館の裏手――理事長室だ。
小ぶりな庭園は、昨日南十星と戦闘した際に乱れたが、立ち木が傷ついているわけではなく、コゼットが容易に修復できる範囲だった。
カーテンに隠れた窓ガラス越しでは、《マナ》からの情報収集は不完全だった。
肘でガラスを突き破って突入した途端、まだ宙にある体が、張られていたワイヤーに引っかかった。
そして飛びこむ先には、なぜか窓へ向けられたソファが置かれている。
レバー部分が外され、ただ底の深い容器となっている消火器が、何冊ものファイルで斜めに立てかけられて、口を向けていた。ワイヤーはその内部へと伸びていた。
「ぎゃ――!!」
ブービートラップと気付いた時には、もう遅い。
しかし金属容器に入れることで指向性を持たせ、窓からの侵入者のみに効果を限定させるようにしていた。
視覚と聴覚が潰された。破片手榴弾よりはマシとはいえ、破片が肉体に食いこんだ。併せて
「はい。お疲れ」
更に、怠惰な青年の声と共に飛び出した銃弾が、
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システムの入出力は、アタッチメントとして接続したグローブからできるので、収納してしまっても問題ない。
「来るならもっと早くに来いよ……」
普段は銃剣の鞘と棒手裏剣の入ったポーチくらいしかないが、今日は付属品の多い
倒れる『羽須美』の四肢は吹き飛ばされ、枯池に血を溜めていた。
頭部を一撃で吹き飛ばすことは叶わなかった。腕を犠牲にして命中弾を
《
諦めて地道に交戦するしかない。学生たちは屋内に避難しているとはいえ、誰に目撃されるかわからないので、白昼堂々小銃も銃剣を振り回すわけにはいかなくなり、楽ではないけれども。
「
「だって、授業サボってこの部屋に居座るってことは、そういうことでしょ?」
「意味わかんないですよ……」
閃光手榴弾の起爆や銃声を全く気にした様子なく、パソコンを使い続けるつばめにため息をついて、破壊された窓から屋外に飛び出る。
「とにかく、あとは俺が時間稼ぎますから、理事長は自分の仕事をしてくださいよ」
「あいよ~」
「とはいっても、あと一日稼げとか、お断りですけど」
「今日だけのことじゃなくて、もう三日目だよ? 自衛隊はそこまで無能じゃないと思うよ」
十路は裏山に潜伏して闇討ちを狙っていたが、リヒトが現れたことで予定を変えることにした。
十路個人への興味をほのめかしていたが、単独行動した上で相対するのは望むところなので、特に変える必要がない。
『麻美』としての自覚がない『管理者No.003』である樹里も、
しかし彼女自身も戦力として数えた上、義妹への愛情というか
支援部員の殲滅だとすれば、それは個々で対抗せざるをえないし、彼女たちもそのつもりで話し合いをしていたので、
飛び交う無線だけでも苦戦は伝わってきたので、結構ハラハラしていたが、なんとか切り抜けた様子を聞いてホッとしたところだ。
すれば残る狙いは、やはり《ヘミテオス》であり、
つばめ自身の戦闘能力は未知数なので、護衛が必要かは不明だったが、待ち伏せをするには彼女と共にいるのが一番いいと判断し、戦闘準備をしながら待ち受けていた。部員たちが戦っていても十路が援護しなかったのは、相手の油断を誘うため。
「支援部員に告ぐ。以降、民間人と自身の防衛を第一に行動せよ」
結果、今がある。
報告なく好き勝手動き、各員の動きを加味してタイミングを計るなど、秩序立った軍事組織には絶対できない。『出来損ない』たちの集まりである支援部だから可能なことだ。
「これより部活を開始する」
普段の武装とは違う、三段伸縮の警棒を構え、十路は宣言した。
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