第109話 ちょびっと休憩♪
「さて、これからの方針だけど上に向かう道を探すか、それともこのまま探索を続けるか」
アースドラゴンからかなり大きな魔石を回収してきたヴィルナさんも加わって、結界内でこれからどうするかの相談を始めた。
進行役はアルにーさまだ。
「大崩落で迷宮の中の生態系が変わってるだろうから、一度戻って態勢を立て直すっていうのも手だとは思うがなぁ」
「土の迷宮が何層になったのかも分からぬのでは、闇雲に進んでも食料不足になる可能性があるのではないか? 二・三日分の食料しか携帯しておらぬだろう」
フランクさんとカリンさんは、一度戻った方がいいっていう意見だった。
「でもそうするとまた土の迷宮に入れるのがいつになるか分からなくなるじゃない。冒険者ギルドが調査をして、ある程度現状の掌握をしてからとなると、かなり時間がかかるわ」
「この戦力なら、攻略は容易いと思うがな」
一方でアマンダさんとヴィルナさんはこのまま進む派だった。
フランクさんが慎重なのが意外です。
でも神官さんだから、やっぱり守ろうとする方に意識が行っちゃうのかもしれないなぁ。
アルにーさまはどっちの意見だろうと思って、ノアールを抱っこしながら視線を向けると、いつもの優しい笑顔でにこっと笑った。
「ユーリはどうしたい?」
「私、ですか?」
「うん。元々、僕らはユーリの為にここに来たわけだし、その意見を尊重するよ」
「それは……。やっぱり、先に進みたい、です」
だって冒険者ギルドの調査がどれくらいかかるか分からないんだもの。その分、賢者の塔へ行くのが遅くなっちゃうし……。
この世界の人たちは思ったよりも優しくて、正直に言って、前みたいに絶対に帰らなくちゃ、っていう焦燥感はない。
でも、行きたいの。
賢者の塔に行かなくちゃ、って思う。
「おそらく、冒険者ギルドの調査隊よりも僕らの方が攻略はスムーズだろうと思う。だからこのまま進んでみよう」
「それもそうだな」
納得したフランクさんを見て、アルにーさまはヴィルナさんの方へ向き直る。
「ヴィルナは、ついでにギルドの依頼を受けておくかい?」
「そうしよう」
大崩落の後ということで、必ず冒険者ギルドでは調査の為にダンジョン探索の依頼が発生するんだそうだ。それを受けておけば、調査の後で冒険者ギルドから報奨金をもらえるらしい。
ヴィルナさんがパフボールを飛ばすと、白い綿毛がふわふわと天井の穴に向かって飛んでいった。
「さて。後は食料の問題だけど、ユーリ、どれくらいの余裕があるか教えてくれるかな
?」
アルにーさまは私がアイテムボックスに食料を入れているのを知っているから、そう聞いてきた。
私はとりあえず休憩用の椅子とかテーブルを出しながら答えた。
「一週間は大丈夫です。ちゃんとしたご飯でなくても良ければ、十日はいけるかなぁ」
トレイにセットはしてないけど、単品でパンとかお肉はたくさん持っている。
エリュシアオンラインをやっていた時に、パンを集めろとかお肉を集めろっていうクエストがあったんだけど、それを使うと短時間だけどHPが増えたりMPが増える効果があったから、大量にストックしていたの。
もったいなくて捨てられなかったアイテムが、こんな所で役立つとは……。
水は魔法で出せるし、生肉は調理すればいいもんね。
香辛料はベテラン冒険者のヴィルナさんが持ってるから、味つけもちゃんとできるし。
「じゃあ一週間をめどに探索をしようか。それ以上かかりそうな時は、一度戻って準備をし直すということでいいかな」
「それでいいぜ」
アルにーさまとフランクさんが、細かい打ち合わせをしている間に、私はアマンダさんとお茶の用意をする。
「俺はヴィルナとちょっくらこの周りを見てくる」
フランクさんとヴィルナさんは、周囲を警戒してくれることになった。
今の所、結界の周りに魔物の姿はないけど、ここがダンジョンの中である以上、油断はできない。
フランクさんが立ち上がると、ノアールもその後ろをついていった。
「ノアールも行くの?」
「にゃあ」
確かに、フランクさんたちには察知できない異変でも、ノアールなら分かるかもしれない。
「気をつけて行ってきてね。フランクさんとヴィルナさんも気をつけて」
ノアールをなでてあげると、気持ちよさそうに喉を鳴らす。しっぽをユラユラさせながら結界を出るノアールは、ご機嫌みたいだった。
結界を補強して疲れたのかずっと壁際にいたプルンは、ぷるぷると揺れてノアールを見送る。
それからアマンダさんと協力して簡単なかまどを作ることにする。結界内には手ごろな石がなかったから、アマンダさんとアルにーさまに取りに行ってもらう。
持ってきてもらった大きめの石を三方に積んで、かまどを作る。上部は少し狭くして、鍋が置けるように作った。
アイテムボックスから薪を出してかまどに置けば、か~んせ~い!
「これからウォーターで鍋に水を入れますね~♪」
「待って、ユーリちゃん! それはアルゴに任せて!」
私も少しはお手伝いしなくちゃと意気ごんだのに、アマンダさんに止められちゃった。
「そうですか? 分かりました。じゃあファイアーで薪に火を――」
「それも私がするわ。ユーリちゃんはカップを出していてちょうだい」
「は~い」
アルにーさまが鍋にウォーターで水を入れて、アマンダさんがファイアーで薪に火をつける。
その間にカップの用意をしたけど……。手伝わなくて良かったのかなぁ。
前とは違って、ちゃんと威力の調整はできるようになったんだよ? そりゃあ鍋の中に入れる水とか薪につける火は的が小さくて大変だけど、できると思う。……多分……。
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