第90話 クエスト・土の迷宮の最深部へ向かえ
これでアボット村の子供たちの誘拐事件は解決したんだね。
はあ。良かった~。
ほっと胸をなでおろしていると、目の前に半透明のウィンドウが開いた。
そういえばクエストを受けていたんだっけ。
▼クエストを完了しました。
▼誘拐された子供たちを救え
ゴーレムを倒して子供たちを助けよう!
▼クエストクリア!
報酬・・・土の迷宮最深部への入場資格の獲得
やったぁ!
これで土の迷宮の最深部に行けば、賢者の塔へ行く鍵がゲットできるんだよね。
そう思った私の目の前に、もう一度半透明のウィンドウが現れる。
これって、もしかして――
▽連続クエストが発生しました。
▽土の迷宮の最深部へ向かえ
土の迷宮の最深部にいるボスを倒そう
▽クエストクリア報酬・・・土の鍵の入手
クエスト失敗・・・賢者の塔への入場資格喪失
▽このクエストを受注しますか?
▽ ▽
はい いいえ
クエストウィンドウを見た私は、そこに『賢者の塔』という文字を見つけて、震える指で確かめる。
ウィンドウには触れることができないけど、でも、その指先の向かう場所には、確かに『賢者の塔』という文字が書かれている。
本当にあったんだ……!
確かにリヴァイアサンを倒した時、「賢者の塔でまた会おう」って言ってたけど、実は他のみんなはその言葉を聞いてなかったんだって。
だから、もしかしたらあれは、私の希望が空耳で聞こえただけなんじゃないかって考えて不安だった。
だってそれまで誰も賢者の塔の話なんてしてなかったわけだし。唐突にリヴァイアサンが賢者の塔のことを言うのは不自然かなって思って。
それに獣人で耳の良いヴィルナさんにも聞こえなかったのに、私にだけ聞こえたっていうのが、そもそも変だもん。
だけど、こうしてクエストに書かれてるってことは、やっぱりあれは私の空耳じゃなくて本当にリヴァイアサンが言ってたことなんだ……。
よーし。やる気が出てきたぞー!
がんばるぞー。おー!
クエストを受注して喜んでいると、山のふもとの方からカリンさんとまーくんがやって来た。
まーくんも無事だったんだね。安心したよぉ。
私は急いでクエストを受けると、まーくんの元へ走った。
「無事だったのか!」
「まーくんも!」
駆け寄ると、まーくんが抱きついてきた。
わわわっ。
急にびっくりしたよ~。
「お前だけ残しちゃって、もし何かあったらって気が気じゃなかった」
「こう見えても、私、結構強いんですよ?」
「確かにそう言ってたな。……なあ、俺もさ、お前のこと、ユーリって呼んでいいか?」
あれ? そういえば自己紹介ってしてなかったっけ?
う~ん。してなかったかも。
私はまーくんから離れて、スカートのすそをつまんでお辞儀した。
「ユーリ・クジョウ・オーウェンです。よろしくお願いします」
えへへ。
オーウェンです、って言うのは、まだ慣れてなくてちょっと照れちゃうね。
「家名があるのか……!」
あ、そういえば、家名があるのは貴族とか騎士だけなんだっけ。すっかり忘れてた。
「ええっと、最近増えたというか何というか。まあ細かいことは気にしないでください。だから、普通にユーリって呼んでくださいね」
ここは、必殺・笑ってごまかせ!
にこっと笑うと、まーくんは顔を真っ赤にした。
「お……おう」
「そういえば、町長さんたちは捕まったんですか?」
「あのムキムキの神官があっという間に捕まえて、縄でぐるぐる巻きにしちゃったよ。凄いな」
「戦う神官ですからね」
おかしいなぁ。アルにーさまたちの方が、戦闘職なんだけどなぁ。
それなのに、いっつも最初に突っ込んでいくのって、フランクさんだよね。
「俺、神官じゃなくて騎士になりたいと思ってたんだけど、神官を目指すのもいいかなって思った。そしたらずっと教会にいられるし、チビたちと一緒にいられるからさ」
親がいなくて教会で育てられた子供がなれる職業は決まっていて、神官か冒険者くらいだって前にフランクさんが言っていた。
でもなんとなくロウ神官だったら、本気でまーくんが騎士になりたいってがんばれば、その夢を後押ししてあげそうだなぁなんて思った。
だってあのフランクさんのお師匠さまだもんね。
「がんばってくださいね、応援してます!」
まーくんの夢が、いつか必ずかないますように!
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