第56話 甲冑虫をやっつけろ
やっぱりクエストはまだ終わってなかったんだ!
「はい」を選ぶと、文字が青くなってクエストの詳細が表示される。えーっと、どれどれ。
▽金の指輪クエストから続く、連続クエストを受けました。
▽グラハム村の外に甲冑虫が現れた。カールと一緒に退治しよう。
▽クエストクリア報酬 カールから???の鍵を譲り受ける
クエスト失敗 ???の鍵の取得不可
って。
えええええええええっ!
これってもしかして、もしかすると、クエストをクリアすると賢者の塔への鍵がもらえるってこと!?
一体、どういうこと?
賢者の塔への鍵は、土の迷宮とか炎の迷宮をクリアして集めるんじゃなかったの?
ゲームでは確かにそうなってたはずだけど……。
でも、もしかしたら、この世界ではもっと簡単に手に入るのかもしれない。
もしくは裏技みたいな感じで、特定の条件をクリアしたら現れるクエストだったり。
だとしたら……。
だとしたら、このクエストをクリアすれば元の世界に戻れるの!?
私は突然のことに混乱しながらも、アルにーさまの袖を引っ張って訴えかけた。
「アルにーさま。私も甲冑虫を退治するお手伝いをしたいです!」
確かにカールさんが持ってる『甲羅割り』のスキルを使えば甲冑虫を倒すことはできるけど、多分それだと『???の鍵』っていうのがもらえなくなっちゃうんだと思う。
それに例えクエストじゃなかったとしても、物理攻撃の効かない敵を倒すのは大変だから、魔法の使える私がお手伝いするのは当然だよね!
「そうだね。僕も行こう」
「私も行くわ」
アルにーさまとアマンダさんに続いて、フランクさんも一緒に行ってくれることになった。
「甲冑虫程度なら嬢ちゃんがいりゃぁ問題ないだろうが、念の為、俺も行っとくか」
「魔法剣は使えないが、同行しよう」
ヴィルナさんの使う剣は細めだから、甲冑虫にダメージを与えられるかなぁ。剣が折れたりしなければいいんだけど。
「スライム以外に興味はないな。私は先に部屋に行って休んでいるぞ」
ただ一人、カリンさんだけは全く興味がないのか、さっさと部屋へと上がっていこうとした。
「あ、じゃあプルンを預かってもらえませんか? 戦う時に一緒にいたら、危ないかもしれないですし」
村の中に入るのに、一見普通の子猫にしか見えないノアールと、フランクさんの頭の上から離れないルアンはともかく、どこからどう見てもスライムなプルンは、さすがにまずい。
そこでプルンには、カリンさんに譲ってもらった、マクシミリアン二世とお揃いの特製ポーチの中に隠れてもらっていた。
だからポーチごとカリンさんに預けておけば、安全だよね。
「いいだろう。……小娘」
「はい?」
「私と共にスライムの研究をするのだから、怪我などするなよ」
……はて?
いつの間に、一緒にスライムの研究をすることになったんだろう?
でも、カリンさんのこの言葉って、私のことを心配してくれてるってことだよね。
えへへ。嬉しいな。
「気をつけます」
ちょっとにへらっと笑ってカリンさんにそう言うと、カリンさんはプイッと顔をそらして二階へと上がっていってしまった。
「あら、珍しい。カリンが照れてるわ」
おおおおお。カリンさんがデレた!
わーい。
って、こんな風に喜んでる場合じゃない。
カールさんの所へ急がなくちゃ。
慌ててカールさんの後を追って、村の西にある畑へと向かう。
すると、そこにいたのは――
「ヘラクレスオオカブトだ……」
おかしいなぁ。ゲームでの甲冑虫は、どっちかっていうとコガネムシみたいな丸いフォルムで、あんなに大きなツノとかなかったんだけどなぁ。
確かに色は黒かったけど……。
でもこんなに大きくなかったよ。あの甲冑虫、象くらいの大きさがありそう。
しかも三本もツノがある。真ん中のツノなんて凄く大きくてとがってて、刺されたらもうダメって感じがする。
その巨大カブトムシが、畑で育てているキャベツを凄い勢いで食べていた。
「うわぁ」
とりあえず草食っぽいカブトムシは、追い払おうと攻撃している村人たちのことは完全に無視してモシャモシャとキャベツを貪り食べている。
なんていうか、村人たちの必死の攻撃も、巨大カブトムシにとってはちょっとうるさいなと思ってる程度なのかも。
なんといっても、物理攻撃が効かないから……。
でも甲冑虫にとってはうるさいハエを追い払ってる程度でも、あの大きなツノをぶんぶんと振り回してる状態っていうのはかなり危険だ。ちょっとぶつかっただけでも、飛ばされちゃいそうだもんね。
あ、あそこにカールさんがいる。
それでもって『甲羅割り』のスキルを使って、甲冑虫に攻撃を――
あ、あれ?
なんか全然気にしないでキャベツ食べてるけど……。
もしかして全然効いてない!?
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